民医連新聞

2022年8月2日

どう育ち合う? 民医連のセラピスト 宮崎生協病院リハビリテーション科

 この10余年で職員数が増え、若い世代がささえている民医連のリハビリテーション(以下、リハ)部門。地域の要求に応え、他県連に学び民医連セラピストの育成と後継者対策にとりくむ、宮崎生協病院リハ科を訪ねました。(丸山いぶき記者)

 同院のリハ室は、地域包括ケア病棟がある5階にあります。東と南にある大きな窓からの眺めと、職員の明るい声かけが、入院患者の笑顔を誘います。1階には県内有数の外来心臓リハ室もあります(『民医連医療』2022年8月号参照)。

「やってみよう」で旺盛に

 1県連1法人の宮崎民医連のリハ部門は理学療法士(PT)14人、作業療法士(OT)と言語聴覚士(ST)各1人、助手1人の計17人(6月末現在)。同院のほか、法人内の通所介護と訪問看護事業所にもPTを配置しています。平均年齢は34・2歳です。
 主任の野田藍さん(PT、16年目)は、「中小規模(124床)の当院でも、病棟改編や専門領域の拡大にともない、私の入職当時に比べて10人以上セラピストが増えた。職員育成は課題」と話します。これまで、福岡・千鳥橋病院などに学び、新人だけでなく中堅以降の教育プログラムも充実してきました。県連リハ部会の定期開催化や、フレイル予防、心臓病教室の開催、宮崎市の委託事業の地域活動(サロンで運動プログラム指導)、トリアージナース資格の取得も促進しています。
 「野田さんのバイタリティーに引っ張られ、まずやってみよう!と求められたことに応える気風がある」と話すのは大田原直美さん(PT、18年目)。2人の子どもの産休・育休を経て職場復帰。高校生医療体験で、やりがいと情熱を持って働ける宮崎民医連リハの魅力を語っています。

チーム医療をささえる

 同院には整形外科がありません。しかし、内科疾患で入院した高齢患者の整形外科疾患管理を求められる例は少なくありません。
 そこで4年前、法人の日高明義理事長の声かけから、整形外科医師の冨田伸次郎さん(長崎・愛野記念病院)の協力で、多職種参加型学習会と病棟回診を開始。2年前からは病棟回診を月2回行っています。地域包括ケア病棟の看護師長・飯干真代さんは、「リハ科が事務局を担い、慣れない整形の疾患別の対応を学べる大事な機会になっている」と話します。
 特に転倒・転落防止など医療安全の学習会はニーズが高く、冨田さんは夜間帯の対応などに不安を覚える当直医師や夜勤看護師もサポートしています。リハ科へは「疾患管理能力を向上し、学術的にも切磋琢磨(せっさたくま)してほしい。職域を超えて後継者の育成や民医連の将来の仲間をつくってほしい。そして、ともに新たな整形外科医師養成へも協力してほしい」と期待を寄せます。
 甲斐駿一さん(PT、10年目)は、専門学校時代の同院での実習で患者や他職種と距離が近い職場環境に惹かれ、入職を決意。リハ部門の教育過程で「通所や訪問リハを経験できたのは、専門職としても強み」と話します。在宅で担当した患者が入院し、病棟カンファレンスで自宅の様子を伝えたり、リハを通じてがん患者の本音を聞き、本人の希望で、病院で看取った例もありました。「患者の背景や声をチーム医療につなぐのも大事な役割」と甲斐さん。
 飯干さんも「より長く濃い時間を患者と過ごすリハ職員は、私たち看護師が聞けない情報も引き出せる。カンファレンスも充実していてすごい」と語ります。

宮崎の「リハ政策」へ

 「青年職員が自ら動けるように、若手といっしょに職員育成を考えたい」と大田原さん。野田さんは、「私は民医連セラピストとして、情勢や平和学習など幅ひろく経験できて良かった。若い仲間も、やりがいを感じながら長く勤めてほしい」と話します。
 リハ部門は今年度、「宮崎民医連リハビリ政策(案)」の作成を目標に掲げています。全日本民医連の『職員育成指針2021年版』やリハ技術者委員会が出している文書、京都民医連など他県連の「政策」にも学ぶ予定です。
 法人の新たな中長期経営計画策定も迫るなか、野田さんは「民医連らしいセラピストとして地域でどういうビジョンを描くか、それをどのくらいの熱量でやるかが問われている。10年後かならず何かにつながると考え、とりくみたい」と力を込めます。

(民医連新聞 第1765号 2022年8月1日)

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