民医連新聞

2022年8月16日

にじのかけはし 第10回 私たちにできること 文:吉田絵理子

 今回はこれまで紹介してきた内容をもとに、さまざまな性自認・性的指向の患者が受診しやすく、職員にとっても働きやすい医療機関にするため、私たちが工夫できることについてまとめてみます。

医療機関としてのとりくみ

(0)性自認・性的指向で差別しない方針を明文化し、内外に公表する。
(1)職員教育を行う(この連載も使ってもらえるとうれしいです)。
(2)受診しやすい診療環境を整える。(例:待合にあるパンフレットや書籍、掲示物にLGBT関連のものも置く)
(3)性自認・性的指向を推測せず、ジェンダー中立な言葉をつかう。
(4)セクシュアリティーに関しても守秘義務を守る。
(5)患者が希望すれば法律上の親族でなくても面会、病状説明の同席や手術などの同意書にサインできるようなルールを定め、公表する。
(6)問診票に性別欄が必要な場合には、自由記載にする。
(7)性交渉歴を聞く必要がある場合には、相手が異性であることを前提としない聞き方をする。
(8)通称名を使えるようにし、番号での呼び出しも選択可能にする。
(9)トイレ、入浴施設、院内着、検査着などは、ジェンダーに関係なく使えるものを用意する。
(10)患者からフィードバックができるシステムを整える。
(11)地域の多様なリソースと繋がり、必要に応じて患者に紹介する。

職員・事業所内のとりくみ

(1)就職時のエントリーシートから性別欄を削除する。
(2)ジェンダーにかかわらず使用できるトイレ、更衣室を用意する。
(3)通称名の使用を認める。
(4)同性パートナーでも福利厚生を利用できるようにし、申請には当事者であることを周囲に知られない方法を用意する。
(5)トランスジェンダーの職員が、ホルモン療法や性別適合手術を要する際には、費用補助、休暇の保障を行う。

 これですべてを網羅しているわけではありません。みなさんの職場でなにができるか、ぜひ話しあってみてください。実践にあたっては、1人でとりくむのではなく、職場内でチームをつくると継続しやすいです。関心のある地域住民とのチームづくりができれば、より良いでしょう。私は全日本民医連に、各事業所でのとりくみを共有し、相談しあえるような委員会の設置を切望しています。


よしだえりこ:神奈川・川崎協同病院の医師。1979年生まれ。LGBTの当事者として、医療・福祉の現場で啓発活動をしている。

(民医連新聞 第1766号 2022年8月15日)

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