民医連新聞

2022年8月16日

相談室日誌 連載524 負のスパイラル止めるために 利用制限調査からみえたもの(山形)

 ソーシャルワーカーは、先輩の背中を見て育ちます。すでに退職したソーシャルワーカーが、2007年に法人関連のケアマネジャーに向けて行った「経済的制約による介護サービス利用制限調査」。それを参考に「同じ調査をコロナ禍の今行ったらどんな結果だろう」と、県連ソーシャルワーカー部会で話題にしたのは2021年3月でした。県連に相談をしたところ、ケアマネ委員会の協力を得られることとなり、同年9月、単月に限った調査を実施しました。
 その結果、「経済的理由、またはそれ以外の理由(感染症など)でサービス利用を制限している」割合は全体の1・4%で、制限をしていないケースと比べると、この1年で状態悪化率は2倍でした。前回の調査とは、対象も期間も異なるため単純比較はできないものの、制限の割合は思ったより少なかったというのが率直な感想です。しかし、県連の後押しを受けて、予想を超える1404人もの回答が集まったことは成果だったと思います。
 本調査をして気づいたことが二つあります。
 一つ目は、「ケアマネ個人、もしくは事業所の経験値や価値観によって制限の捉え方が変わる」ということです。現行制度を「当たり前」と見るか、制度の改悪によって制限が引き起こされていると見るか、事業所によって差があると感じました。
 二つ目は、ソーシャルワーカーは、割合が多い少ないではなく、必要な介護サービスを受ける権利が侵害されているのなら、たとえ1%のマイノリティーだとしても、ともに悩み、伴走し、行政に対して解決を訴えていく仕事だということです。
 私たちが働く鶴岡市では、介護保険料の滞納のために、ペナルティーが科せられるケースが散見されます。当法人では、毎年「介護保険ペナルティ事例共有会」をケアマネとソーシャルワーカーで行っています。互いにサービスの制限に対する視点が深まり、人権のアンテナの感度を高める機会になっていると感じます。税金の滞納はいいことではありませんが、「貧困は社会の責任」と考えれば見方が変わります。
 お金がないので受診できない、サービスが使えない、その結果、体調が悪化するという社会にある「負のスパイラル」を、少しでも止めることができればと思っています。

(民医連新聞 第1766号 2022年8月15日)

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