声明・見解

2022年10月20日

【声明2022.10.19】感染症法改正案は徹底審議し、国民の安全・安心を保障する余力ある医療・介護提供体制の構築を求めます

2022年10月19日
全日本民主医療機関連合会
会 長 増田 剛

 2年半に及ぶ新型コロナウイルス感染症により累計2178万人以上が感染し、死亡者数は45,890人に達しました(2022年10月17日現在)。第5波から第7波に至る感染拡大の中では、感染者が自宅やクラスターの起きた介護施設等に留め置かれ、医療を受けられないまま死亡する事態が生じました。
 こうした事態を繰り返さないために、今、圧倒的な国民が望むのは、今後起こり得る新興感染症のパンデミックに備え、国民のいのちと健康を守れる余力ある医療・介護提供体制を再構築することです。そのためには、国の責任による医療機関や介護施設、事業所等への十分な財政支援が不可欠です。

 第210回臨時国会に上程が予定されている感染症法改正法案は、2年半に及ぶ新型コロナウイルス感染症に対する総括、教訓が活かされたものとはなっていません。
 改正法案が示す危機管理の対応の柱は、感染症病床確保の責任を都道府県に押し付け、医療機関に対しては法的強制によって統制強化を図ることです。具体的には、都道府県と医療機関は、病床確保や発熱外来の設置について事前に都道府県との「協定」締結を求められます。公立・公的病院、特定機能病院、地域医療支援病院には、感染症医療の提供を義務化し、勧告・指示に従わなければ指定取り消しなどの罰則が与えられます。また、民間医療機関は、都道府県と「協定」を結ぶための話し合いには必ず応じなければならず、協定履行状況は公にされ、協定に沿った対応をしない場合は指示や病院名の公表等が行われます。
 第5波から第7波で崩壊状況に陥った公衆衛生体制や保健所機能の再構築については、根本的な解決策は示されず、保健所数の増加や職員体制の整備拡充への言及はありません。

 そもそも公立・公的病院、特定機能病院、地域医療支援病院は、地域の中でがん治療や高度医療、難度の高い手術などを担う病院です。パンデミック時においても、そうした医療の制限や手術の延期はできるだけ避けなければなりません。
 また、急性期病床が不足する地域では、感染症対応の病床が確保できないことが懸念されます。
 この2年半、もともと経営が厳しい一般医療機関も、財政支援策が不十分な中でもコロナ禍の地域医療を支える役割を担いました。改正法案には、こうした地域の一般医療や後方支援の医療を維持する対策がないため、地域の通常の医療も崩壊しかねません。
 地域で医療から介護まで一体的に提供する視点も欠けています。感染症対応の急性期の医療機関と、高齢者や認知症の方、施設入所者などの医療を支える医療機関を分断、医療資源が乏しい介護施設等の感染者を施設に留め置くなど、介護施設等に対する医療支援体制の強化も不十分で、感染対策の基本から逸脱した対応を継続することになりかねません。

 今、行うべきことは、これまでの新型コロナウイルス感染症対策や施策について、専門家の意見を踏まえて十分な検証と総括を行ない、余力ある医療・介護提供体制を構築することです。全日本民医連は、感染症法改正法案を徹底審議することを強く要望し、拙速な感染症法改正は行わないよう求めます。

以上

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