いつでも元気

2022年11月30日

まちのチカラ 
お米のまちで山城めぐり

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

多古米を刈り取る山口農場の山口清さん

多古米を刈り取る山口農場の山口清さん

 千葉県北東部の多古町。
 肥沃な土壌は多古米などの農産物を育み、豪族・千葉氏ゆかりの地や山城など歴史が息づきます。
 成田空港に近く、都心へのアクセスもいい緑豊かな田園都市の魅力を訪ねました。

感染対策をしたうえで取材しています

 東京駅から高速バスで約90分、成田国際空港のすぐ東に位置する多古町に到着しました。町中央部を南北に流れる栗山川の流域は、低地で田園地帯が広がっています。
 町はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも登場した豪族・千葉氏ゆかりの地。平安時代末から中世は千葉氏の荘園「千田荘」の中心地でした。
 室町時代中期の享徳の乱で、千葉家当主の胤直は一族間の争いに敗れ、逃れてきた千田荘で亡くなります。町には土橋山東禅寺にある胤直の墓や竹林山妙光寺の板碑(板石塔婆)など、数多くの千葉氏の遺跡が残っています。町内各地を巡れば、現在の千葉市の礎を築いた千葉一族の面影を感じることができます。

ロマン感じる山城

 町内には30以上の山城があります。お城といえば天守閣を思い浮かべるかもしれませんが、天守閣は織田信長が築いた安土城以降のもの。古くからの城の多くは、山の地形を活かして周囲に堀を巡らせて盛り土などを行い、敵に攻められた時に立てこもって戦う山城でした。
 町の山城の多くは薮の中にあったため、2019年に多古城郭保存活用会が結成され整備を始めました。「薮を刈ると、次第にお城の外郭や曲輪が見えてきて感動しました。山城を観光の一つにして、子どもたちにも歴史を伝えていきたい」と語るのは保存活用会代表の髙朝子さん。
 お城を訪ねた記念になる「御城印」を発行し、城の整備や標柱(目印のための柱)を立てるなど活動資金として役立てています。熱心に訪ねて来る人も多いという並木城跡に足を踏み入れると、激しい攻防戦の様子が思い浮かびます。山城をめぐりながら、歴史ロマンを感じてみてはいかがでしょうか。

おかずいらず幻の米

 町の特産品といえば、コシヒカリの多古米です。“幻の米”とも呼ばれるほど希少で昔はほとんど市場に出回りませんでしたが、全国の米のおいしさを評価する「米の食味ランキング」日本一など数々の栄誉に輝いています。おいしさの秘密を探るため、多古米生産者の山口農場を訪ねました。
 先代から引き継いだ農業を一代で大きくした山口清さんは「多古米は粒が大きく冷めてもおいしい。お米の診断Aランクの品質を目指しています」と、大きなコンバインで稲刈りをしていました。田んぼはアミノ酸やミネラルなどが豊富で、稲作に適した肥沃な粘土質の土壌と栗山川の豊かな水が、おいしい米を作ります。
 多古米を味わうなら道の駅 多古あじさい館にあるレストランで、おにぎりセットが食べられます。甘みが強く粘り気のある味わいから、“おかずいらず”のおいしさです。土地の恵みと作り手の愛情が込められた多古米を、ぜひご賞味ください。

縁起の良い花文字

 縁起の良い開運文字で人々を喜ばせている方が町にいると聞き、花文字作家まりもさんのご自宅を訪ねました。
 書道と絵画が融合したかのような花文字は、中国発祥の縁起の良い絵柄を組み合わせて描く文字のことです。「守護・上昇・成功」の意味を持つ龍や、幸運を招く鳥などの吉祥絵をちりばめ、見る人の未来を明るく照らします。
 「施設に入所している母にプレゼントしたいなど、想いを持って注文にいらっしゃる方が多いです。よくお話を伺って、その方の想いを大切に描かせていただいています」と、まりもさんは一筆に命を吹き込みます。
 日本花文字の会公認講師としてカルチャー教室を開催するほか、イベントなどで実演も。まりもさんの花文字はすっきりとした原色がカラフルで、眺めていると前向きな一歩を後押ししてくれるかのようです。
 春は桜、夏はあじさい、秋は稲穂の黄金と、四季旬彩の多古町。心のキャンバスに色を描きに、訪れてみてはいかがでしょうか。

■次回は長野県木島平村です。

まちのデータ

人口
1万3875人(10月1日現在)
おすすめの特産品
多古米、やまといも、元気豚(豚肉)
さつまいも、ほうれんそう
アクセス
東京駅から多古町役場まで高速バスで約90分。東関東自動車道・成田インターチェンジから車で約20分
問い合わせ先
多古町観光まちづくり機構
0479-85-8066

いつでも元気 2022.12 No.373

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