いつでも元気

2022年11月30日

点字版『いつでも元気』

文・新井健治(編集部)

絵本や名刺は今まで通り点字器で1文字ずつ点字を打つ

絵本や名刺は今まで通り点字器で1文字ずつ点字を打つ

 健康友の会あいかわ(大阪府吹田市)が、点字版『いつでも元気』の発行を7月号から始めました。
 会長の岸田宗春さんは「点字版が全国に広がれば、読者も増えるのでは」と提案します。

 取材のきっかけは『いつでも元気』10月号の注文書。健康友の会あいかわ(以下、友の会)から、『元気』を発行する保健医療研究所に届いた注文書の通信欄に「点字版『元気』を届けたら、皆さん大喜びでした」との記載が。知らせてくれたのは友の会事務局の市川健一さんで、販売所長も兼ねています。
 友の会は、機関紙「みんなの健康」の点字版を3月号から発行しています。役員の村住和子さんが地域のボランティア団体「点訳の会 円」に依頼。村住さんは「会員には視覚障害者の方もいらっしゃる。『元気』も点訳して読んでもらえたら」と考え、7月号から点訳が始まり5部を配達しています。

誌面がぐっと身近に

 取材した日、「円」の点訳作業を見学して驚きました。点字器を使い文字を一つ一つ打つと想像していましたが、今はパソコンで入力。専用の点字プリンターで印刷すれば、一度に何冊もできます。
 「ボランティアのメリットは、誰よりも早く情報を入手できること。1文字、1文字、深く読むので勉強になります。『元気』を点訳して、医療制度のことも学べました」と話すのは円の北嶋玉枝会長。友の会会員でもあります。
 誌面から「けんこう教室」「ハーフタイム」「食と健康」など、読者が興味を持ちそうな7コーナーを選び点訳。以前より時間が短縮されたとはいえ、校正作業も含め1冊の点訳に3日間はかかります。
 友の会会員で視覚障害者の黒葛原富士子さんは、これまでヘルパーさんに『元気』の見出しなどを読んでもらっていました。初めて点字版を手にした黒葛原さん。「自分で読むと誌面がぐっと身近になる。遠くに感じていた医師の存在にも親近感がわきました」と話します。

人と人をつなぐ

 点字版発行の背景には、友の会を巡る環境の変化があります。友の会の診療所「相川診療所」の運営母体「共愛会」が、2020年7月に「淀川勤労者厚生協会」と合同。友の会も財政的に自立する必要に迫られました。
 その一環として、昨年度の総会で機関紙の手配り率100%を目指すことを決定。機関紙は4000部のうち半数を郵送しており費用がかさんでいました。友の会は機関紙配布者(手配りさん)を増やそうと働きかけ、昨年1年間で新たに36人の手配りさんが生まれ、手配りの部数も1980部から2412部に増えました。
 「単に費用を抑えるだけではありません。機関紙は会員と会員を結ぶツール。コロナ禍でこそ内容を充実し、顔の見える手配りさんを増やす必要があります」と友の会の岸田会長。
 手配りさん探しのキーワードは“つながり”。友の会員同士、診療所の患者やバザーに来た人などさまざまなつながりを活かした働きかけのなかで、円の北嶋会長も手配りさんになり、点訳の話が進みました。
 相川診療所は築58年で、2024年4月の完成を目指して新築工事が始まる予定です。円には機関紙と『元気』のほか、診療所建設委員会のニュースも点訳してもらっています。
 岸田会長は「手配りさんを探すなかで、地域には宝のような人がたくさんいらっしゃることを実感しました」と振り返ります。「活動をしていて楽しいのは人と人がつながった瞬間。点字版も、こうしたつながりから生まれました」と友の会事務局の市川さん。
 『元気』点字版はパソコンにデータを入力するため、点字プリンターさえあれば全国どこでも発行できます。岸田会長は「うちでも点字版を配ってみようという共同組織があれば、『元気』がもっと読まれるようになるのでは」と話しました。

いつでも元気 2022.12 No.373

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