いつでも元気

2007年8月1日

カムカム健康法(21)インプラント(人工歯根)って?(下)

遠藤高弘  (北海道・札幌ふしこ歯科診療所)

Q 永久に持ちますか? 長持ちさせるにはどうしたらよいのですか?

 人工物を体に入れて、永久に持つものなどあり得ません。無機物なので虫歯という状態にはなりませんが、歯周病で周囲の骨が溶け、インプラントがぐらぐらするようになったら、撤去しなくてはなりません。
 それぞれの条件によって異なりますが一般に、一〇年後に九〇%以上のインプラントが健康な状態を保っていることが、世界的にも報告されています。
 天然の歯と同じように、細菌の集合であるプラーク(歯垢)を付着させないための口腔ケアや、異常な力が加わらないように噛み合わせをチェックするなど、十分なメンテナンスが必要です。

Q 料金はどれくらいでしょうか?

 インプラントは自費診療のため、医療機関によって料金が違います。ケースによってかなり幅がありますが、一本につき二〇万円前後が平均的です。

Q 他の治療法と比べるとどうですか?

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イラスト・いわまみどり

 歯を失った場合、ブリッジと入れ歯の大きく二通りの方法で対処してきました(図)。
 歯と歯をつなぐブリッジでは、噛む力が残された歯牙に集中します。また歯を多数失った場合にはこの方法は使えません。
 入れ歯は、歯肉で力を受けるために噛む力が落ち、自分の器官として順応するまで相当な努力を要します。それでも、保険外治療となる金属床義歯はかなり使 い心地がよく、私たちは、「保険でよい入れ歯を」と患者さんとともに運動してきました。ところが昨年、保険外治療の分類がおこなわれ、金属床義歯は保険適 用の可能性がほとんどなくなってしまいました。

Q インプラントは保険適用の可能性がありますか?

 インプラントは、保険導入の検討をおこなう対象にはなっていますが、まだ見通しが立っていません。
 政府は保険適用となる医療の範囲を狭め、差額徴収できる範囲の拡大をはかっています。この流れのなかでは、保険適用はなかなか困難と思われます。
 お口の健康はすぐ命に直結するわけではないため、差額徴収が増えたり国民所得が減ったりすると、ひどい状態のままガマンする方が増えるのでは、と心配されます。
 しかし噛み合わせが崩壊することによる全身に対する悪影響ははかり知れず、生活の質を著しく低下させます。お口の健康を守る歯科医療は、「生活の医療」 であり、すこやかで豊かな人生を送るために不可欠なものなのです。
 ここ三〇年間、歯科領域では新しい技術が保険に導入されていません。インプラントのように広く普及し、安全性の確立した技術を国民が享受できるような運動が、今こそ必要となっています。

いつでも元気 2007.8 No.190

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