いつでも元気

2023年1月31日

青の森 緑の海

1998年8月 沖縄県恩納村

1998年8月 沖縄県恩納村

 昨年は2016年以来の大規模な「サンゴ白化現象」があった。なかでも石垣島と西表島の間に広がる日本最大のサンゴ礁、石西礁湖では9割以上のサンゴが白化を起こした。写真は1998年の白化の時のもの。この時点ではまだ生きているサンゴも多かったが、その後全滅した。その悲しみは忘れられない。
 サンゴはイソギンチャクに似た「動物」で、光合成ができない。体内に住む褐虫藻という単細胞藻類から光合成由来の栄養をもらい、代わりに住みかと栄養を褐虫藻に提供する共生関係を築いている。
 海水温が25℃から28℃ほどの間は両者の関係は良好だ。ところが高水温が続くと褐虫藻はサンゴから出ていき、栄養をとれなくなったサンゴはやがて死ぬ。そしてあたりは荒れた岩だらけの景色へと変わる。サンゴの白化は温暖化による海水温上昇や陸土の流出、プラスチック汚染などが主な原因と考えられている。
 では白化現象によって何が変わるのか。
 サンゴは粘液を分泌し、海中のバクテリアや小生物の食糧となっている。そしてこれらの小さな生物は魚類の餌になっている。
 また地球上のサンゴ礁の総面積は約60万k㎡あり、陸上の森林とともに大気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を供給している。森林より数倍~十数倍高い酸素放出力を誇るサンゴ礁が死滅すると、酸素の供給が止まる。さらに二酸化炭素の吸収も途絶えて海水は酸化するため、海中の生物が健康を保つことは難しい。
 サンゴのなくなった海は荒涼として魚も少ない。すべてがつながっている。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。

いつでも元気 2023.2 No.375

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