声明・見解

2006年8月18日

【声明2006.08.18】「医師の需給に関する検討会」報告書に抗議する

2006年8月18日
全日本民主医療機関連合会
会 長 肥田 泰

 7月28日、厚生労働省の「医師の需給に関する検討会」は最終報告をまとめた。

 今回は、統計的手法も駆使して16年後には必要な医師が供給される見込みであるとし、現在の医師偏在に よる困難については、行政、大学、学会、医師会などが協力して努力するべきこととした。そして、さすがに現場に近い委員の発言を無視できず、病院勤務医の 負担や地域格差、小児科、産婦人科等の問題に言及したものの、今後とも医学部定員増という施策はとらないし、有効でもないと結論付けた。これまでの検討会 報告に見られたような「医師の過剰問題」に対する執拗なまでの危機感の表明は影を潜めたものの、結論は従前のものと同じであった。

 前回の検討会報告(平成10年10月)は、新規参入医師を削減するために、入学定員のさらなる10%削 減にはじまり、国家試験受験回数制限、卒前教育での不適格者の進路変更、保険医の定年制の検討まで提案していた。そして8年後の今日、医師不足によって全 国各地で地域医療の崩壊と言われるような事態が多発している。今回これらに対して踏み込んだ提起をしたというものの、前回報告書の提起した新規参入医師削 減の方針への反省が一言もないのはなぜなのか。わずか8年まえの過去に責任をもたないような「検討会」の提案をまともに受け止める関係者がいるのであろう か、あらためて厚生労働省に問い質したい。

 また、医師の勤務状況を調査して医師の需要と必要数を導いたとしているが、現場の実態や実感からは大き くかけ離れている。病院に滞在している時間がすべて勤務時間でないとしたり、病院勤務医の大きな負担となっている当直を勤務時間から除外するなど、必要医 師数の算定根拠に疑問を持たざるを得ない。そして、必要医師数の算出を客観的にしたといいながら、簡単にできる人口当たりの医師数の国際比較にはまったく 見向きもしないのはなぜか。人口あたりの医師数で見ると、日本はOECD加盟国平均の70%に満たず、平均に追いつくためにはあと12万人が必要で、今の ペースなら40年以上かかる計算になる。

 安全で、質の高い医療を求める国民の声、身をすり減らしながら現場を守る医師や看護師の悲鳴を無視する のか。厚生労働省の本音は、中小病院つぶしによる病床の大幅削減によって、医師を増やさず医療給付費も削減できるということではないのか。全日本民医連 は、地域医療を守る立場からこの最終報告に抗議するとともに、病院勤務医が将来に希望を持って働き続けられるよう医師の絶対数増加をふくめた施策を要求す る。

 公的医療給付費削減の流れの中での医師需給計画ではなく、せめて国際社会並に医療費を増やし、医師、看護師増員はじめ安全安心の医療が実現できるよう厚生労働省は全力を尽くすよう強く要請する。

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