民医連新聞

2023年3月7日

気候危機のリアル ~迫り来るいのち、人権の危機~ ⑦気候変動対策の国際的議論#1 文:気候ネットワーク

 人びとの健康で平和な暮らしを脅かす気候変動は、1990年代から人類共通の課題として、国際政治の場で対策が議論されてきました。1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」(1994年発効)は、「大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を究極の目的に、すべての締約国がとりくむことをまとめた条約で、現在の締約国は198カ国・地域です。この条約は、「気候変動には全世界でとりくむべきだが、温室効果ガスの大部分は先進国が排出してきたので、先進国が率先してとりくむべき」とする「共通だが差異ある責任」という考えを基礎にしています。条約にもとづいて、1995年からCOP(締約国会議)が開催され、2022年には27回目となるCOP27が開催されました。
 そして条約の具体的なとりくみを定めたのが「京都議定書」です。1997年に京都で開催されたCOP3で採択され、先進国と市場経済移行国に、2008~2012年の温室効果ガス排出削減義務を課す内容です。「京都議定書」には課題もありますが、各国に具体的な義務を課したことで、世界が本格的に温室効果ガスを排出削減する方向に向かう、きっかけになった約束と言えます。続く2012年には、2013~2020年の削減目標が定められました。しかし、気候変動の深刻化や、途上国を含む国際関係の変化を踏まえて、2020年以降の気候変動対策については、より強力で新たな枠組みの検討が必要になりました。それが「パリ協定」です。
 「パリ協定」は2015年にパリで開催されたCOP21で採択され、世界共通の長期目標として「気温上昇を産業革命前と比べて2℃を十分下回り、1.5℃に抑える努力を追求すること」が掲げられました。京都議定書との大きな違いは、「パリ協定」のすべての締約国に、より具体的な削減目標を求め、5年ごとの進捗(しんちょく)評価をもとに対策を強化し続ける仕組みをつくった点です。長期目標達成のため、温室効果ガスの排出を実質的にゼロにすることが求められており、この目標の達成は化石燃料の時代が終わることを意味します。「パリ協定」採択後は実施のための方針づくりが行われ、2021年のCOP26で方針が完成しました。さらにCOP26では、より深刻化する気候危機の現状から、「気温上昇を1.5℃未満に抑えること」が努力目標ではなく、実質的な目標に変わりました。(田中十紀恵)


気候ネットワーク

 1998年に設立された環境NGO・NPO。
 ホームページ(https://www.kikonet.org

(民医連新聞 第1778号 2023年3月6日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ