民医連新聞

2023年3月7日

相談室日誌 連載535 進学は生活保護対象外の理不尽 無低診でつないだ経験から(京都)

 Aさんは今年3月に高校卒業を控える女性です。母と二人暮らしで生活保護を利用しています。以前より偏頭痛を抱えており、他院でこれまで薬価の高い注射薬の治療を定期的に受けていました。Aさんは高校卒業後、大学への進学を希望しています。しかし、大学進学を選択すると、Aさん自身は生活保護の対象から外れてしまいます。これまで母と娘二人世帯で利用していた生活保護が、Aさんのみ受けられなくなってしまうのです。さらにこれまでの治療を続けるには医療費の負担が重くのしかかり、通院が難しくなってしまいます。そんな現実を目の当たりにし、Aさんも母も大学進学についてとても悩みました。しかし、Aさんは夢をかなえるためにも大学進学を決意しました。
 そんななか、Aさんの世帯を担当している生活保護のケースワーカーから当院へ連絡があり、この間の経過と合わせ偏頭痛の治療を続ける必要からも、当院で無料低額診療事業を利用して定期通院ができないかと相談が入りました。Aさんに処方されていたのは薬価が高いだけでなく、取り扱えるのは特定の資格を持つ医師のみ、などの条件がある特殊な注射でした。院内で相談し、無料低額診療事業の適用および薬剤の取り扱いができる医師の了承を得ることができ、当院で偏頭痛の治療を継続できることになりました。無料低額診療事業に必要な面談を行い、Aさん自身も大学に進学しても治療を継続できることに喜んでいた姿が印象的でした。
 大学進学と同時に生活保護利用の対象から外れてしまうということは、大学で学ぶための費用を奨学金やアルバイトでまかなう必要があるだけでなく、今回のように医療費の自己負担も必要になります。
 なぜ高校卒業後に進学をすると生活保護が適用されないのか、制度のおかしさや理不尽さを実感しました。大学で学びたいという青年の夢や希望をかなえるために、公的な支援を行っている自治体もあります。しかし、各自治体の裁量で、支援を「受けられる」「受けられない」を決めるのではなく、国として責任を持って、若い人の夢を実現できるような生活保護制度にしてほしいと思います。

(民医連新聞 第1778号 2023年3月6日)

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