いつでも元気

2023年4月28日

青の森 緑の海

2020年4月 沖縄県うるま市

 沖縄では、古代のアニミズム ※1 的な信仰を各所で見ることができる。表現はさまざまだが、神には形がなく、自然+先祖の霊を敬うことはほぼ共通している。
 沖縄の聖地「御嶽」には本来建物がない。空間そのものが意味を持ち、樹や水(や海)を通じて自然界の神とつながる。大学の恩師、仲松弥秀先生は「御嶽は神社の先輩だよ」と言っていた。そして御嶽の多くは元は葬所だったともいわれている。
 写真はうるま市にあるナームイの御嶽。15~16世紀に地域の有力者によって造られたとされる具志川グスク内にある。非常に聖性が高い場所だが、必要最小限の祠があるだけで中には貝殻と石が置かれていた。
 この御嶽の真下には自然洞窟があり、沖縄戦で看護や警護のために動員された若者たち13人がその中で強制集団死した。看護要員だった比嘉千代さんの証言 ※2 がある。
 「日本軍から手りゅう弾をそれぞれ2個渡されて、みんなで集落を守れって。軍に協力してもらった物だから褒美だと思っていました」。
 親に「自分で死ぬな」と言われていた比嘉さんは、米軍に投降するよう壕内の仲間を説得したが、“非国民”と呼ばれることを恐れた13人の若者は壕に残り、翌日手りゅう弾を使った。
 島の魂を宿す、緑豊かな御嶽の杜。手りゅう弾を褒美だと思う時代は遠い昔話だろうか。

※1 万物に神が宿るという考え
※2 比嘉さんの証言は旧具志川市調査による


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/

いつでも元気 2023.5 No.378

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