民医連新聞

2023年5月2日

ともに生きる仲間として―非正規滞在の移民・難民たち 第3回 収容となんら変わらない!「収容に代わる監理措置」 文:大川 昭博

 4月13日、入管法改悪案が審議入りしました。今回は、「収容に代わる監理措置」について触れます。
 本法案では、退去強制手続中に、条件を付し、監理人による監理の下、収容せずに社会内での生活を認める「監理措置」が新たに創設されています。かねてより日本の入管収容は、①収容の要件が不明確、②司法の関与がない、③収容期間の上限がない、の3点について、何度も国連から勧告を受けてきました。しかし、監理措置にするかどうかの判断が入管に委ねられている、という点は現在の仮放免と同じです。監理措置が認められなければ無期限収容が続くのも変わりありません。
 法案では、無許可就労や逃亡は刑事罰の対象となります。刑罰による威嚇で入管の言いなりにさせ、その監視を民間人に肩代わりさせるものです。
 世界各国で実績が積み上げられてきた「収容代替措置」とは、不要な収容を回避し、人権を保障すること、そして国内での定着を支援するためのさまざまなとりくみを指すものです。日本においても、これまで数多くの支援者や弁護士が仮放免者の保証人や弁護を引き受け、物心両面から生活をささえてきました。しかし法案では、監理人となる者に監理対象となる外国人の生活状況などの報告義務を課し、怠ったときの罰則も定めています。過料の制裁におびえながら、依頼者の動静について、入管当局に届出をしなくてはならなくなったら、お互いの信頼関係は一気に崩れてしまいます。
 斎藤法務大臣は、「長期収容を回避し、保護すべき方は保護するという意味で大いに前進している法案だ」としていますが、内容は2年前に廃案になった案とほぼ同じであり、人権を無視したものであることに変わりはありません。長期収容問題は、収容期間の上限を定めるとともに、収容の目的・要件を送還の準備のために必要不可欠な場合に限ることを法律に明記し、かつ司法審査を導入することによって解決すべきことなのです。


おおかわ あきひろ 移住者と連帯する全国ネットワーク理事。『外国人の医療・福祉・社会保障ハンドブック』(2019年、支援者との共著)

(民医連新聞 第1782号 2023年5月1日)

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