民医連新聞

2004年1月19日

「じん肺法」改正知らせ 適用者ほりおこし 京都東山診療所

元清水焼(きよみずやき)の職人さんに労災補償

 二〇〇三年四月、じん肺法が改正されました(別項参照)。じん肺から肺ガンを併発した患者が労災補償の対 象となるなど、制度が前進しました。長年、じん肺の診療にとりくんできた京都・東山診療所では、制度改正であらたに補償の対象となる患者さんに知らせ、申 請。労災補償が決まった患者さんの家族から喜びの声がよせられています。(荒井正和記者)

 昨年一〇月、京都・東山診療所の元所長、来嶋安子医師(75)のもとをAさんの家族が訪れました。申請していた労災の遺族補償が認められたのです。
 「わざわざご家族が決定通知を持って来られてね。申請して良かったです」と、来嶋医師は自分のことのように喜びます。
 Aさんは五〇年にわたり、清水焼の職人として働いてきました。じん肺と診断されたのは、仕事を始めて三一年が過ぎた、四八歳の時です。その後も、職人と して働き、一一年前に一線から退きました。三年前の夏、歩行時の呼吸困難を訴えて、診療所を受診しました。検査の結果、肺ガンによる胸膜炎だと分かったの です。そして、その年の暮れに亡くなりました。

『民医連新聞』の記事をみて

 「じん肺法が改正されます」。二〇〇二年一二月の民医連新聞を見た健診担当者が、診療所を訪れた来嶋医師に知らせました。国がじん肺と肺ガンの因果関係を認めたとの記事です。来嶋医師は退職後も、じん肺患者さんなどの相談にのるため、週一回診療所に立ち寄っています。
 「じん肺法の改正で、あらたに労災補償を受けられる人がいるにちがいない。亡くなった人に対しても、五年さかのぼって遺族補償が認められるこの制度を有 効に活用するため、患者さん、家族、地域の人たちに知らせることがまず大事」と、澤田貢事務長も行動を開始。
 『診療所だより』でこのことを取り上げ、三〇〇〇枚を全戸配布し、制度改正を知らせました。労働基準監督署が発行したリーフも健診時に配布し、『友の会 だより』にも法改正を掲載、「対象となる人が身近にいませんか?」と呼びかけました。

じん肺対策とともに歩んで

 来島医師の胸には、これまで健診を受けに来た患者さんの中で、五人がすぐに思い浮かびました。
 そこで患者本人、本人が亡くなっている場合は家族に、じん肺法の改正であらたに労災補償の対象となることを説明しました。五人の申請に当たっては、患者 さんの職歴、じん肺管理区分の経過、肺ガン併発後の療養経過をまとめた資料も添えました。
 一九六四年に東山診療所に着任した来島医師。陶磁器労働組合から強い要望があり、その二年後に、じん肺健診を始めました。診療所での二五年は、まさにじ ん肺対策とともに歩んだようなもの。その中で、じん肺法の不備や矛盾を感じ、発言もしてきました。
 五人の中で、Aさんの労災補償がいち早く決定。来島医師はじん肺のたたかいの歴史に思いをはせます。いま四人が結果を待ってます。

陶磁器業者のまちの診療所

 診療所のある東山地域は、伝統陶磁器で有名な清水焼の産地です。今も一〇〇〇人くらいの人が陶磁器製造に従事しています。原料を混ぜたり焼き物を削り磨く製造行程で、粉塵がでるため、じん肺は、陶磁器製造に従事する人の職業病ともいわれてきました。

 五〇年前、戦後不況のまっただ中、地域の陶磁器業を営む人びとから「自分たちの医療機関を」との要望が高まりま した。そこで、陶磁器労働組合、東山企業組合、生活と健康を守る会などが中心となって、一九五二年に東山診療所が生まれたのです。その後、半世紀にわた り、高齢者医療やじん肺対策などの診療に力をつくしてきました。

 いま、東山診療所では、他にも労災の対象者となる人がいないか、健診担当者を中心に患者さんの掘り起こしをすすめています。


 

「じん肺法施行規則」および「労働安全衛生規則」の一部改正の政令の要点(2003.4.1)
1.じん肺法施行規則の一部改正
 (1)じん肺の合併症に原発性肺ガンを追加した
 (2)以前に、常時の粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現在は粉じん以外の作業に従事しているもののうち、じん肺管理区分が「管理2」である 労働者で、肺ガンにかかっている疑いがない人に、1年以内毎に1回、肺ガンに関する検査(胸部らせんCTおよび喀痰細胞診)を行わせる
2.労働安全衛生規則の一部改正
 健康管理手帳の交付対象に、じん肺管理区分が「管理2」である人を追加
※これによって、じん肺管理区分が「管理2」に相当し、原発性の肺ガンにかかった人も労災補償の対象となった

(民医連新聞 第1324号 2004年1月19日)

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