民医連新聞

2023年5月23日

診察室から 元気になれる健診の診察

 「また来年も元気に健診を受けに来てくださいね」。これは私が、高齢の健診受診者が診察室を出る時にかける言葉です。
 私が大切にしている業務の一つに、健康診断の診察があります。経験したことがない人から見ると、同じことのくり返しで面白みがないように思えるかもしれませんが、これが意外に多彩です。
 例えば、特定健診に来た40歳男性のγGTPが高かった時と、77歳の女性がHbA1c6・0%だった場合では、ただ単に「食事に気をつけてください」と、同じことを言うのではありません。気をつけなければならないことが違うのです。40歳の男性へは、アルコールや食事量が多すぎないかという視点で話を聞いてみますし、77歳の女性へは食事に気をつけるあまり、食べることを控えて栄養不足から筋肉減少にならないようにと配慮しながら話します。また、糖尿病治療中の人へは、眼科で糖尿病網膜症のチェックを受けているか確認しつつ、定期的な眼科受診を勧めています。家族の介護を始めたという人へは、相談先や介護保険サービスについて簡単に説明することもあります。若くて病院に行く機会のない人へは、日頃気になっているちょっとした症状の相談を受けています。
 基本的には、受診者が自身の健康のために心がけていることや努力していることを話題にして、肯定的な言葉を返すことを心がけています。その人が、またがんばってみようという気持ちになれるような、「元気になれる健診の診察」をめざしています。そして、実は受診者から前向きのエネルギーをもらって元気になっているのが、私なのです。
 思いもよらないことが起こり、生きているだけで大変と言いたくなるような世の中です。若い人もお年寄りも、1年を無事に過ごすことは楽ではありません。年に一度、受診者が元気に健診を受けに来られるように願いながら「また来年も来てください」と伝えています。(池田美佳、千葉・船橋二和病院)

(民医連新聞 第1783号 2023年5月22日)

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