民医連新聞

2023年5月23日

私がここにいるワケ 情報を利活用し多職種協働をささえる 宮城・坂総合病院 診療情報管理士 粕谷遼太さん

 民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ7回目は、情報管理の専門家、宮城・坂総合病院の診療情報管理士の粕谷遼太さんです。(稲原真一記者)

 粕谷さんが宮城民医連に入職したのは、東日本大震災のあった2011年です。前年に医療事務の専門学校を卒業後、坂総合病院と同じ法人の泉病院で、契約職員として勤務。同年に正職員として採用され、2013年から坂総合病院に異動して、いまに至ります。

■多様な情報を管理

 粕谷さんに診療情報管理士の仕事について尋ねると、「診療情報の管理を通じ、医療の質や安全性の向上、経営改善につなげる仕事」との答えが。日々の基本的な業務は電子カルテなどを管理し、必要な情報を集めて退院患者統計の作成やがん登録をしています。また外科の手術記録からの統計作成や、DPC(急性期入院医療の診療報酬の包括評価法)とICD10(国際疾患分類)の病名チェック、近年では個人情報の管理や、経営にもかかわるようになりました。診療情報のデータベース化も行っていますが、最近は活用する機会が少なくなっています。「代わりに電子カルテ上のデータから直接統計を取れるシステムを利用して、臨床研究や経営に必要な病名や薬剤の使用状況などを調べる機会が増えている」と粕谷さん。

■協働のなかにやりがい

 「元々コミュニケーションが苦手で、事務職を選んだところがあった」と言いますが、実際の職場ではコミュニケーションを求められることが多く、大切なことだと気づきました。「働くなかで鍛えられ、医師や看護師などの他職種が、患者のために何を考えているのか知ることができるようになった」と成長を実感。今では、そうした経験を生かして実際の診療や経営にかかわることが、やりがいや楽しみになっています。
 一方で、「貧困や困難を抱えている患者への対応で、現場職員が矛盾を感じ悩んでいることが、カルテを通してわかる」と粕谷さん。またコロナ禍で医療がひっ迫したにもかかわらず、地域医療構想の急性期ベッド削減の方針が変わっていないことには、疑問を感じています。がん登録の件数は大きく減少し、入院や救急搬入の数などの減少も肌で感じていて、今後の経営にも不安が募ります。
 オンライン資格確認、マイナ保険証、個人情報の保護など、これまでになかった業務も増えていて、国の方針や法律の変更に振り回されています。現在はICD11への移行準備などもすすめていますが、日々変わることを勉強して、現場にも伝えることが必要です。「学ぶほど奥が深く面白くもあるが、大変な部分でもある」と、試行錯誤しています。

■無差別・平等に誇り

 全国青年JBや県連の「民医連学校」で、民医連を意識するようになった粕谷さん。東日本大震災の時、全国からの大きな支援があったことなど、何かあれば全国でささえあうことができるのは民医連の強みだと言います。さらに「入職時、差額ベッド代を取らないことには驚きと同時にすごいと思った」とふり返ります。「無差別・平等の医療の実践で、誇りにも感じているところ。この地域で困難を抱えた患者のために、民医連を掲げた病院があり、それを頼りにしている人たちがたくさんいる。その歴史を大切にしなくては」と決意します。
 業務では「今後はDPCの統計なども利用し、他職種に提案しながら、経営改善につなげていきたい。単なるデスクワークにならず、他職種とのコミュニケーションを大切に、現場の改善に貢献したい」と語ります。

(民医連新聞 第1783号 2023年5月22日)

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