民医連新聞

2023年6月6日

ともに生きる仲間として―非正規滞在の移民・難民たち 第5回 末期がん、自殺未遂…「生きていけない」仮放免者たち 文:大澤 優真

 日本には「生きていけない」状態に追い込まれている人たちがいます。「仮放免者」といわれている人たちです。「仮放免者」は働くことが禁止され、その一方で、医療保険や生活保護を利用することも認められていません。これを文字通り解釈すれば「生きていけない」ということになります。その一方で、私はよく「そんな大げさなことはないでしょ」とか、「結局どうにかなるんでしょ」という声を聞きます。しかし、本当にどうにもなっていないのです。
 カメルーン人のAさん。彼女はカメルーン内での紛争やパートナーからのDVによって本国に帰ることはできず、入管に収容され、体調不良を理由に仮放免になりました。その後、病院でがんと診断されました。病院や支援者のサポートもありましたが、治療法もなくなり余命宣告を受けました。家に戻りますが、家賃滞納を理由にアパートに入れず、ホームレス生活を余儀なくされました。3カ月後、Aさんは亡くなりました。42歳でした。
 アフリカ出身のBさん。彼はテロ組織にねらわれ、いのちからがら日本に逃れてきました。難民認定申請をするも認められない日々が続きました。最初は友人にお金を借りて生活をしていました。しかし、仮放免の生活が長くなるにつれてその支援を受けられなくなりました。その後、次第に困窮化。家賃滞納を理由にすぐにアパートから出ていかなくてはいけない状況に。電気ガス水道も止まり、食べ物はほぼ底を突いていました。Bさんは絶望して「頭が真っ黒」になり、自ら両手首と首の後ろを切りました。出血で気を失い倒れ、血がドアの下から流れていたところを発見され、緊急搬送。しかし、医療費が払えず自主退院しました。帰る場所もなく傷が全く癒えないまま路上生活をしていました。
 生活費の見返りに性的関係を要求され続けている女性もいました。彼女は「自分のことが恥ずかしい」と話していました。「仮放免者」は文字通り「生きていない」状況に置かれています。


おおさわ ゆうま 北関東医療相談会・理事。『生活保護と外国人「準用措置」「本国主義」の歴史とその限界』(2023年)。

(民医連新聞 第1784号 2023年6月5日)

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