民医連新聞

2004年2月2日

長瀬事務局長に聞く総会・運動方針(案)のポイント 全国の経験から導かれた教訓学ぼう

 まもなく第三六回定期総会が開かれます。運動方針(案)を掲載した本紙号外も職員の手元に届きました。その押さえどころ、ポイントなどを聞きました。(編集部)

読んで学び、職場で討議を

 平和と医療・社会保障を守るたたかい、川崎、京都問題など、学ぶべきことの多い二年間でした。運動方針(案)には、全国の多くの経験から導かれた貴重な教訓を盛り込んでいます。
 民医連は日本の医療の二%になりました。職員数は五万六〇〇〇人、共同組織も三〇〇万を超え、民医連が社会にあたえる影響力も大きくなっています。患者の権利を守りぬくために奮闘することは、民医連の社会的使命ともいえます。
 また「医療の安全と質」の確保でひきつづき前進することも、国民の要求に応える重要な課題です。
 我流ではやっていけない時代です。運動方針(案)はやや長いですが、ぜひ読んで学び、職場などで討議をすすめてほしいと思います。

「平和」と「憲法」守る運動の先頭に

 今後、「平和と人権」が大きな焦点になります。初めて「憲法の改定」が政治日程に上りました。憲法の戦争放棄 をうたった九条と、生存権を定めた二五条は表裏一体のものです。平和が脅かされる時には、人権もないがしろにされます。日本国民の宝である憲法を守り抜く ために奮闘しましょう。
 これからの活動で、私たちが重視していく内容を「総会のスローガン」として三本掲げました。合い言葉にしたいキーワードも織り込んであります。
 第一に、「平和と憲法を守る運動」は、あらゆる活動の土台として大事です。草の根から、共同の運動をまきおこし、その先頭に立ちましょう。

人権感覚を研ぎすまそう

 第二は、「患者の権利」を守ることです。これには二つの内容があります。一つは、等しく医療・福祉を受ける権 利、社会保障についての権利です。もう一つは、医療従事者との関係で生じる(1)知る権利、(2)自己決定権、(3)プライバシー権、(4)自己情報コン トロール権、(5)学習権などです。
 民医連は、前者のとりくみは従来から強調し経験も積んでいますが、後者は、どちらかと言えば不十分でした。
 このたび「患者の権利」としての「カルテ開示の法制化」を求めることにしたのは、民医連の決意を示すものです。これは医療機関として初めての表明です。
 この二年間で、「患者の権利」をどのように守っていくのか、現場で具体的に検討を深め、実質的な内容をつくり出していきましょう。この課題では、私たち の人権感覚が問われます。問題を見過ごさないよう、感覚を「研ぎすます」ことを提起しました。また医療従事者の発想だけですすめるのでなく、共同組織や患 者さんの協力を得ることも大事です。

科学的管理と民主主義を貫く

 第三に、管理の力量を高めることです。これは、すべての職員が誇りをもって働ける組織をめざすことに通じます。
 川崎・京都の問題では、管理の水準が問われました。私たちは従来「民主的管理運営」という言葉を使ってきました。しかし本当に、科学的管理と民主主義を 貫く運営になっていたのか? よその経験から学ぼうとしなかったり、トップがなすべき管理を、医師の多忙を理由に事務が代行したり、あいまいにしていな かったか?
 外部調査委員とのやり取りの一例をあげます。「その決定は誰がしたのですか?」「管理会議で決めました」「院長ではないのですか? 管理会議は院長のスタッフ機能ではないのですか?」。
 方針(案)では、院長など管理者の権限と責任、組織整備、評価基準、任用基準をきちんとすることを提起しました。中間管理者も同様です。四章の中で問題 提起として書き込んでいますので、「自分の法人や事業所ではどうか?」と論議し、深めてください。

誇りをもって働ける組織へ

 管理の問題は、医師問題にも職員の働きがいにも関連します。医師はじめ職員がさまざまな課題にどう参画するか、そのしくみをつくることも管理の大切な仕事です。
 もう一つ、「経営でも習熟して前進しよう」と提起しています。一年間に二七〇万人の患者が減り、診療報酬の減少もあって事業収入が前年を大きく割り込む現状は深刻です。こういう時代はしばらく続くと考えられます。
 これに対して、差額ベッド料をとるとか、採算の合わない部門やお金のない患者を切り捨てるなど経営主義的に乗り切ろうとするようでは、民医連の存在意義 が問われます。五〇年来堅持してきた「無差別・平等の医療」を守りながら、経営を守ることは、それ自体がたたかいです。
 このたたかいは、深いところで職員の心に落ちなければ勝てません。地域が期待する事業所の役割や、経営の現状について、管理者と職員集団、共同組織が認 識を一致させなければなりません。方針(案)では、そのためにどうするかも提起しています。職員が「やらされ感」に陥っては創造性が生まれません。
 キーワードは「誇りをもって働ける組織」です。

民医連の優位性に確信をもとう

 厳しいことばかりでなく、この間に生まれた民医連の優位性も確信にしましょう。
 第一に、川崎・京都での真剣なとりくみです。患者を第一に考える民医連綱領の立場で、自主的に公表し解決に向け努力する姿に、多くの識者、市民に共感がひろがりました。
 第二は、「受療権を守ろう」の提起が受け止められ、全国にとりくみがひろがったことです。「最も困難な人のよりどころとして」活動したことが、職員の確 信になり、地域で事業所の存在意義を高めています。これは他の医療機関にはない、民医連の先駆性を示すものです。
 第三は共同組織が、福祉・健康づくりの担い手、地域のかけがえのない財産として大きくなってきたことです。
 これらの内容は方針(案)に詳しく記しています。

未来を切り開く青年の成長

 第四は、青年の成長です。民医連や事業所の歴史を学び、「ハンセン病回復者・被爆者の支援」「平和の活動」「受療権を守る運動」と、鋭い感性をもって行動に立ち上がっています。
 第三〇回全国青年ジャンボリーには一〇〇〇人を超える青年が集まりました。参加した青年が県連ニュースなどに寄せた感想を読むと、平和の重みや連帯をつ かんだ感動が伝わってきます。こうしておよそ三万人いる青年職員がたくましく育っている様子は、民医連の未来を予感させます。
 もっと言えば、民医連のような「連帯と協同の組織」で青年が伸びていくことは、社会に対する明るいメッセージだと思います。

民医連の教訓を全国の病院へ

 さて、学運交で講演した識者に指摘されたことの一つが「日本では医療事故を教訓とし伝えていく力が弱い」とい うことでした。そこで、民医連が作成した四つのパンフ、『みんなでとりくむ注射事故防止』『転倒・転落事故を予防するために』『みんなではじめる感染予防 (改訂版)』『医療・介護の報酬制度のあり方』を全国九二〇〇の病院に贈り、私たちの教訓を伝えることにしました。三月中に運動としてとりくもうと計画し ています。ご協力ください。


 36回総会スローガン

○草の根から共同の力で、平和と憲法を守る運動をまきおこそう

○人権感覚を研ぎすまし、国民の医療と福祉を受ける権利、患者の権利を守るとりくみを発展させ、安心・安全・信頼の医療・福祉の実践をすすめよう

○医療・福祉の質と事業所の管理力量を高め、すべての職員が誇りをもって働ける組織めざし前進しよう

(民医連新聞 第1325号 2004年2月2日)

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