いつでも元気

2007年11月1日

全日本民医連評議員会から 医師を増やして医療崩壊にストップを 国の医療費抑制策を転換させよう 医師不足で患者も勤務医も開業医も悲鳴

 各地で病院の閉鎖が相次ぎ、医療崩壊が大問題になっています。全日本民医連は、医療崩壊の最大の原因は絶対的医師不足にあり、国の医療費削減策が危機を招いたとして、各地で医療を守るとりくみとともに、さまざまな団体と協力し「医師を増やせ」の運動を進めてきました。
 八月一八~一九日に開かれた「全日本民医連第三七期第三回評議員会」では、各地の実状が報告されました。評議員会後、さらに深刻さが増したところも…。

開業医も過労死寸前

「鹿屋方式」の破たん 鹿児島

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根室市立病院も存続の危機。ねむろ
医院の田辺利男院長も日直支援に入
っている

 厚労省は、病院の医療体制崩壊を前に「開業医の役割強化と総合医」構想を打ち出した。とくに救急など時間外診療を開業医が受け持つ方式を、来年度から始めるとしている。しかし、そのモデルケースといわれた鹿屋市で、早くも破たんが明らかになった。
 大隅半島の中央・鹿屋市ではセンター病院である「鹿屋医療センター」が医師不足のため、二〇〇一年度からセンターは紹介患者と救急車中心の診療に限定。 患者が最初にかかる一次医療は、日常診療も時間外も、すべて開業医が診るよう、任務分担した。救急車も、時間外は開業医が診る方式になった。
 この結果、センターの外来患者は四八五人から一七八人と三分の一に。しかし、開業医の方は、小児の時間外受診数が増え、周囲の市町村からの受診も増え た。小児患者だけで年間九〇〇〇人を超えているという。開業医は、時間外救急の徹夜に続けて通常勤務という状態になり、「過労死」寸前に追い込まれてい る。
 多くの開業医から「もう限界だ」との声があがり、この制度への参加を医師会に入会する際の条件としたところ、入会を拒絶する医師も出た。鹿屋市医師会は来年三月でこの制度からの撤退を決めた。
 現在二市五町の対策協議会が設けられ、「夜間・休日急病センター」設置の署名運動も始まったが、問題は、時間外に勤務につく医師がいるのか、だ。

国保病院が診療所に

岐阜でも千葉でも

 岐阜県では、一九八五年に一五一あった病院が、現在一〇八に減っている。二つの国保病院と、透析施設を持っていた民間病院も診療所になってしまった。
 千葉県市原市は人口二七万人。三~四の大きな病院があるが、その一つ「県立循環器医療センター」では糖尿病担当の医師がいなくなり、通院していた患者に 他の医療機関に通院するようにという紹介状つきのダイレクトメールが送られた。医者は自分で探せというもので、民医連に相談にきた患者も困惑していた。
 また「国保市民病院」は、大学病院からの派遣医師が引きあげ、今年四月から常勤医は一人になった。病棟は閉鎖し、開業医が支援に入っていたが、医師の確保ができず、九月市議会で診療所に「格下げ」が決まった。

安心して産めない

またも繰り返された悲劇 奈良

 奈良では、七割の自治体で産科の医療機関がなくなり、県南部ではゼロになっている。約一年前、分娩中の産婦が意識不明になり、一九カ所の病院に救急受け入れを断られて二〇番目の病院で帝王切開、その後死亡という、不幸な事態が発生した。
 奈良県立医科大学は、全国に一〇ある公立医大でただ一つ、医学部の入学定員を減らしていた。奈良民医連も参加している「奈良県に小児・母子保健センター の設立を求める会」は、「県の周産期医療体制の不備」と「医師・看護師不足」に大きな要因があることを指摘。県との交渉や、各地で開いたシンポジウムなど で訴えてきた。
 八月二九日、異常を訴えた妊婦の受け入れ先が決まらず、救急搬送中に流産(死産)という悲劇が再び起きてしまった。

2年間で急速に縮小

地域医療構想つくろう 京都

 七月の京都民医連の医師集会で、二年前に京都市内から北部に異動した医師が、「転勤して一番衝撃的だったのは、市内では救えるいのちが北部では救えないという事実に直面したことだ」と発言した。
 京都府北部では、この二年で医師・看護師不足により急速に診療機能が縮小。京丹後市は大きな病院が二つあったが、救急・産科が一病院に集約された。舞鶴 市では行政が「地域医療を考える検討会」を開き、七月末、市内の四病院を一~三の病院に集約するという方針を出した。残念ながら、綾部市にある民医連の京 都協立病院も、外科医師の退職により手術ができなくなった。
 京都民医連では、県連の次期長計策定で、京都府北部地域における医療崩壊に立ち向かう構想を作ろうと論議に入った。こうしたなか、民医連の丹後診療所は ことし四月、京丹後市からの個別の要請で休日の救急患者を受けることになった。また、近くにある公立の診療所と民医連の訪問看護ステーションが連携して、 八月から在宅療養支援診療所を開始。二四時間の診療体制をとっている。

医師が主体となって

地域住民とともに運動すすめよう
全日本民医連・藤末衛副会長の話

 この一年間で情勢は大きく変わりました。医療崩壊の原因に日本の絶対的医師不足があり、それは政府による医療費と医師養成の抑制政策がもたらしたものという主張が広く受け入れられ、世論となってきました。
 民医連は、「医師増やせ」のドクターウエーブを医師が主体になるべき運動であり、地域住民とともに医療崩壊を阻止する運動として位置づけ、さまざまな取り組みをすすめてきました。
 これまでかたくなに医師数抑制をすすめてきた政府も世論に押され、ついに医学部の定員増を実質的に認めました。今後この変化を小手先の世論対策に終わら せず、本格的な医師数増と、患者負担に頼らない公的医療費増をめざす運動へと発展させたいと思います。

いつでも元気 2007.11 No.193

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