民医連新聞

2023年9月19日

診察室から 大型「歯科往診車」 20年の軌跡②

 (前号の続き)さて、さまざまな出来事を経験しつつ「歯科往診」を続けていましたが、その後診療報酬が改定されるたびに、歯科往診に関する診療報酬は減額されていきました。また、1施設で診療できる対象者の制限も加わり、それまでは1日1施設で診療が可能であったものができなくなったことで、午前と午後で2施設を回ることを余儀なくされました。それに伴って、施設間を回るのに要する時間も徐々に増していきました。
 当時診療に関して悩まされたこととして、毎年流行する「季節性インフルエンザ」がありました。例年10月ごろから単発の感染が出始め、厳冬期の12月から2月いっぱいまでは、施設での集団感染が不定期で起こるということが頻発しました。施設内の入居者の区分けがしっかりしているところでは、施設内での診療が許可されることもありました。しかし、「往診車」での診療ができなくなると、治療内容の制限を受けます。施設の許可を得て施設内に診療スペースを可及的に設けるのですが、しっかりとした区分けができないこともあり、売店だと思ってのぞきに来る人、自分の歯があるにもかかわらず、他の人の入れ歯を口に入れて治療を受けようとする人、待っている間にそばにあったものを口に入れてしまう人など、診療室では経験することのないことに遭遇しました。
 ない知恵を絞り、施設の理解と職員の協力もあり何とか診療を継続していましたが、徐々に肝心の「往診車」の老朽化がすすみ、修繕する機会が増えていくと同時に、修繕に要する期間も長くなっていきました。特に、冬期間に路面に散布される「凍結防止剤」にさらされる車両下面の腐食は何ともしようがなく、車体下部に改造で敷設した廃液回収タンク周りから、エアサスペンションの配管の腐食により走行そのものが困難となり、2017年、ほぼ20年にわたった大型車両の歯科往診車による歯科診療に終止符を打つことになりました。(東海林克、秋田・大曲中通歯科診療所、歯科医師)

(民医連新聞 第1791号 2023年9月18日)

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