いつでも元気

2007年12月1日

元気スペシャル 多彩な報告に“元気もらった” かがやけ平和憲法! 守ろう命と人権 第9回共同組織活動交流集会・松本

 「かがやけ平和憲法! 守ろう命と人権」をスローガンに、九月三〇日~一〇月一日、第九回全日本民医連共同組織活動交流集会が長野県松本市で開かれました。あいにくの雨でしたが、地元長野の民医連職員があたたかく誘導、四四県連から二〇〇〇人が一堂に会しました。

活動の広がり示す259演題

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海老名さんの話に会場は大笑い

 一日目は分科会。平和活動、健康づくり、社会保障活動、共同組織拡大などの八つのテーマごとに活動交流。
 自治体を巻き込んだ医師確保のとりくみ(熊本、奈良など)、子育て中のお母さんを対象にした「保育つき健診」で全員が医療生協に加入(神奈川)、老人ク ラブや町内会などとともに運動し、水道料金値下げを実現(北海道)、サークル活動を通じて友の会員も拡大(奈良)など、過去最高の二五九の演題が報告さ れ、活動の広がりを感じさせました。
 夜のナイトセッションでは、松本で起きた百姓一揆をいまに伝える「義民太鼓」や、「うたごえ広場」などがおこなわれ、名残惜しいほど楽しい時を過ごしました。

「いのちの平等、普遍性」に感動

 二日目は、長野民医連・束原進会長、長野現地実行委員会・礒野博康実行委員長につづき、菅谷昭 松本市長があいさつ。八六年に起きたチェルノブイリ原発事故の被災者支援で「外科医として五年間つくしてきた」という菅谷市長は、「いのちの平等、普遍性 を痛感した」と話し、松本市の福祉充実、市民の健康増進に向けた決意を語り、感動を与えました。
 特別講演はエッセイストの海老名香葉子さん。苦しいはずの生活も、海老名さんにかかると笑い話に早変わり。一転、東京大空襲に話が及ぶと、わがことのように目頭をおさえる参加者の姿が。
 「参考になった」「元気もらった」と好評のリレートークは、北海道から沖縄までの多彩なとりくみが語られました。

長崎チャンポンを用意して

 最後、次回の交流集会開催地を代表して、長崎県健康友の会連絡会の植田恒一さんが「二年後にはみなさんの行動の宝の袋をナガサキにいっぱい持ってきてください。長崎チャンポン五〇〇〇杯を用意して待っています」とにこやかに宣言。
 共同組織三三〇万人、『いつでも元気』六万部をめざすこと、仲間をふやし、平和と憲法を守り、社会保障改悪を許さない決意を固め合う集会となりました。

列島

リレートーク

 リレートークでは、全国の活動を千葉健生友の会・松永悦子さんが紹介した後、4つのとりくみが報告されました。

障害者控除認定で税金を軽減

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左から石澤さん、間仁田さん、矢沢さん、屋良さん

北海道・十勝勤医協友の会連絡協議会
石澤英子さん

 「十勝管内すべての自治体で障害者控除対象者の認定書を発行させることができた」と石澤さん。
 障害者控除は「普通障害者」二七万円、「特別障害者」四〇万円と税制で定められています。「特別障害者の同居加算」(三五万円)などを加えれば、より多 額の控除を受けられます。しかし障害者控除を受けるには、市町村長が発行する「障害者控除対象者認定書」が必要です。
 〇二年の報道で、障害者手帳を持っていない人にも「認定書」を発行させた新潟県の経験を知り、「これは大きな負担軽減になるのではと目にとまった」といいます。
 ところが認定書を発行しない自治体が多いのが現実。帯広市は「税務署の都合で障害者控除は不可能」と。しかし帯広税務署に問い合わせると「認定書があれ ば控除できますよ」。このことを再度市に伝え、市議会議員とも協力するなかで、「対象者がいれば発行します」と市の態度が変化。いまでは「十勝管内で障害 者控除を受けた人は、〇二年度の八七人から、〇六年度には七四九人にまで広がっています」と石澤さんは話しました。
 「自治体に一方的に実施を迫るのではなく、担当者とよく話し合い、一緒になって考え、まわりの自治体の情報も伝え、喜ばれました。老人会や社保協、友の会などの各団体、地方議員のねばりづよい連携が力になりました」

懇談通じて自治体の健康づくりに参加

埼玉・医療生協さいたま
間仁田一恵さん

 間仁田さんは「健康づくり自治体訪問」について報告。開始した〇四年は、埼玉県内九二自治体中、三四自治体と懇談が実現したことを紹介しました。
 なかには懇談を通じ、健康づくりに向けて協力する関係ができた自治体も。「所沢市では医療生協で開催している保健教室に大変興味を示してくれました」。 健康チェックに使う「日本縦断歩け歩けマップ」を紹介したところ健康日本21にあたり、市が歩け歩けマップを作成したほど。「医療生協の出前講座にも市役 所の職員が来て、講師をしてくれるなどの関係もできました」と間仁田さん。
 また〇八年四月実施予定の後期高齢者医療制度にともない、健康診断が健康保険組合に義務づけられるなか、健診はどうなるのかを確認するため、〇六年は事 業所のある自治体と懇談。ことしは七五歳以上の高齢者の健康診断を、住民負担を増やさずに実施するよう要求すること、これまでの保健予防事業を後退させな いようはたらきかけることを課題にしています。「事業所が自治体健診でかかわっている自治体すべてにはたらきかけていくことが大切です」と間仁田さん。
 「要求するだけではなく、市民としてできることを示し、協力する姿勢を見せることで実りある交渉になり、新しい可能性が広がることがこの自治体訪問を進める中でわかりました」

生活困難者を対象に診療代、薬代を無料化

石川・奥能登健康友の会
矢沢幸恵さん

 矢沢さんはまず、輪島市の現状について報告。「過疎が進み、六五歳以上の高齢者が三五%を超え ている。地場産業の輪島塗も不況で、最盛期一八〇億円あった売り上げはその四〇%以下。国保加入世帯の所得は三三万円以下が四二%、一〇〇万円以下が五 〇%を超える」と。しかし輪島市の生活保護世帯はわずか一%です(ことし七月一日現在)。
 そこで輪島診療所は「無料・低額診療制度」を活用。社会福祉法に基づき、生計困難な人が必要な医療や福祉サービスを受けられるよう、自己負担を無料、ま たは低額にできる制度です。輪島診療所では現在一八人が利用し、医療費の自己負担が無料に。矢沢さんは「『診療所は心の支え』と利用者の方から喜ばれてい ます」と語りました。
 一方、診療所で医療費が無料になっても院外処方のため、薬代は自己負担に。友の会で話し合い、患者送迎用の車購入のため積み立てていたお金と『元気』の 還元金で「たすけあい基金」を設立。無料・低額診療制度の利用者を対象に、薬代を全額補助しているとも話しました。
 ことし三月に起きた能登半島地震で、全国の支援を受けながら、奥能登健康友の会は職員とともに患者さん、友の会会員、一人暮らしの高齢者宅などを訪問。
 矢沢さんは「震災は不幸なできごとだったが、友の会にとって、大きな財産ができた。地域の会員との信頼関係が大きくなったと思う。住民の生活のなかに友 の会と民医連が根付く地域になるよう『安心して住み続けられるまちづくり』へと前進したい」と決意を語りました。

たたかいのなかで前進 名護市に診療所建設を検討

沖縄医療生協
屋良博一さん

 沖縄戦「集団自決」の記述から軍の強制を削除した教科書検定に抗議する沖縄県民集会(九月二九日)に一一万人が集まったと屋良さん。人がひしめきあう集会当日のようすがスライドで映し出されると、会場からどよめきと拍手が。
 屋良さんは戦後も米軍の占領下におかれ、県民はたたかい続けなければならなかったこと、医師確保も沖縄に医科大学がなかったため、日本政府の「国費留学 制度」に頼らなければならなかったこと、祖国復帰運動、沖縄医療生協や「ワッター(私たちの)病院」沖縄協同病院が誕生した歴史についても語りました。
 辺野古の基地建設阻止のたたかいでは、民医連や沖縄医療生協が支援するなかで「名護にも民主診療所を」の機運が高まり、九九年、沖縄医療生協の名護支部 が誕生、診療所建設を検討中です。名護市にある県立北部病院に産婦人科医がおらず、市民が経済的困難を抱えている地域であり、「一日も早い民主的医療機関 の実現が強く求められています」と語りました。
 米軍嘉手納基地の騒音公害に周辺の市町村長が抗議しても、「抗議するのは沖縄だけ」と基地司令官。屋良さんは「全国のみなさん、一一月の日本平和大会 inOKINAWAを成功させ、アメリカの植民地的感覚に痛打を」と訴えました。

いのちほど大事なものはない

海老名香葉子さんの講演から

 名前を紹介された海老名さんは、舞台の袖からチョコチョコと小走りに登場。「かよちゃーん」との声援に、手を振ってこたえ、一段とにこやかに。
 東京の下町で生まれたという海老名さん。「子どもの頃は、近所の人たちと『おはよう』と大きな声であいさつしたものです。おつかいにいけば『親孝行だ ね、えらいね』といわれ、子ども心にもうれしかった。最近は『ありがとう』といい合える、温かい関係が減ってきたように思うからあの頃が懐かしく感じるの です」
 思い出話、家族や弟子の世話に追われる苦労話がおもしろおかしく語られ、会場はたびたび笑いの渦。

一夜で一転、戦災孤児に

 ところが戦中、静岡に疎開したこと、東京大空襲で家族の大半を亡くしたことに話が及ぶと、会場は静まりかえりました。楽しかった少女時代が、一夜で一転、戦災孤児になったのです。
 「それからが私にとっては生きるたたかいでした」。海老名さんは東京に戻り、親戚中を転々。「おまえみたいな娘が生き残って」といわれ続けたといいます。たった一人生き残った兄とも離ればなれに。
 そんななか、幸運にも父の知り合いだった三遊亭金馬師匠にめぐり会い、「うちにおいでと手を差し伸べてくれた。初めて生きていたことを喜んでくれる人に出会えた」と海老名さん。
 「いのちほど大事なものはない。二度とあんな戦争は起こしてはならない」との話に、大きな拍手が送られました。

集会参加者の感想

ひとつのことに信念をもってやりとげることのすばらしさ、地域で困っている人のためにどう向き合うかを勉強させていただきました(岡山)。
昨年支部をつくり、支部長をしていますが、行き詰まっていました。いろいろな発表を聞き、たいへん参考になりました。勇気をもらい、たたかうことの大切さ、会員間の話し合いの大切さを痛感しました(山形)。
貴重な活動、生き生きとした活動が全国で繰り広げられていて、とても元気をもらいました(大阪)。
各地域での活躍ぶりがよくわかりました。たくさんの報告、すばらしいですね(長野)。
海老名さんの講演は、とても楽しく、そして考えさせられました。戦争とは人の生命も幸せもすべてこわしてしまうものなのですね。いま、九条を守ることの大切さをあらためて強く感じました。子や孫のためにも(千葉)。
分科会「夢を実現する事業活動」に参加して、職員と共同組織がともにということがどれほど大きな力になっているか、各地の経験から学びました(東京)。

いつでも元気 2007.12 No.194

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