いつでも元気

2023年11月30日

まちのチカラ 新潟県弥彦村 神々と暮らす村でパワーチャージ

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

もみじ谷の紅葉と観月橋(弥彦観光協会提供)

もみじ谷の紅葉と観月橋(弥彦観光協会提供)

 新潟県中央部の日本海寄りに位置する弥彦村。
 越後平野にそびえる霊峰・弥彦山の麓には、信仰を集める彌彦神社が鎮座します。
 鎚起銅器やわっぱ飯など魅力がつまったパワースポットを巡りました。

 東京から車で約5時間。米どころ越後平野の田園風景と荒々しい日本海を横目に、弥彦村へ到着しました。
 まずは、「おやひこさま」の愛称で多くの人々が信仰する越後一宮彌彦神社で参拝を。御祭神は天照大神のひ孫にあたる「天香山命」で、越後に文化を広めた開祖として崇拝されています。
 足を踏み入れるだけで不思議なパワーを感じるこの地には、神様だけが渡れるという「玉の橋」や石を使った占い「津軽火の玉石」、摂社・末社と呼ばれる小社がたたずんでいます。玉の橋は一の鳥居を入ってすぐの小川にかかる赤い橋で、横から見ると半円形をしており屋根付きのちょっと変わった橋。
 また津軽火の玉石は、心の中で願い事を思いつつ持ち上げて、軽いと感じれば祈願は成就、重いと感じればかなわないと言われています。
 樹齢400年を超えるスギやケヤキに囲まれた拝殿は、まさに神々しい雰囲気。朝7時、大神様にお食事をお供えする「御日供祭」が執り行われると聞き、近くの温泉旅館に宿泊して参列しました。
 毎朝、米や酒、塩などを捧げ、国の繁栄や人々の幸せが祈願されます。終了後には献上米を小袋に詰めた「福米」を受け取りました。

紅葉スポット 弥彦公園

 神社から徒歩15分圏内には、弥彦山ロープウエーや温泉郷、おもてなし広場、弥彦駅舎など、観光スポットがぎゅっとつまっています。
 まずは、東京スカイツリーと同じ高さ 634mの弥彦山山頂へ。神社の拝殿わきにある万葉の道を無料バスで上り、ロープウエーに乗り継ぎます。約5分間の空中散歩を楽しみつつ山頂に到着すると、日本海に浮かぶ佐渡島や越後平野の大パノラマを一望できます。
 続いて神社から徒歩10分、全国屈指の紅葉スポットとして知られる弥彦公園を歩きました。昔の木橋を再現した朱色が美しい観月橋を中心に、錦秋の世界に染まるもみじ谷が見頃を迎えるのは10月下旬から11月中旬。その美しい光景をひと目見ようと多くの観光客が足を運びます。
 「弥彦の観光は歩いて回れるのが一番の魅力。ぜひ浴衣でまち歩きなどを楽しんでください」と話すのは、弥彦観光協会の三富克是さん。季節ごとに見どころが変わるので、ゆっくりと歩いてみてください。ガイドブックでは得られない良さを知るには、「彌彦観光ぼらんてぃあガイド」を予約するのもお勧めです。

伝統の技 鎚起

 200年以上続く伝統技法「鎚起」の職人が弥彦山の麓に工房を構えていると聞き、鎚起工房清雅堂を訪ねました。
 鎚起とは、一枚の金属素材をさまざまな鎚と当て金を使って打ち延べたり打ち縮めて、製品を作りあげる金属工芸の技法のひとつです。
 明和年間(1764~1771年)、弥彦山に間瀬銅山があり、産出された銅の精錬が隣の燕市で行われました。その頃に鎚起銅器の技術が仙台の職人によって伝えられ、鍋や薬缶、煙管などの製造が始まったとされています。
 「カンカンカン」と小気味良い音が響く清雅堂では、二代目の西片正さんと息子の亮太さん、浩さんが迎えてくれました。酒器などの日常使いのものから、海外から注文があった一点物の湯沸かしまでさまざまな品物を制作しています。
 「童心で素直にものを作ります。技術は受け継いでいるけれど、常に新しいものを目指していますよ」と語るのは西片正さん。数々の美術工芸展での受賞など、美術品としても高い評価を得ています。一点一点、職人の手によって打ち出された姿形は、洗練され、温かみにあふれています。ぜひ手に取ってみてください。

名物 わっぱ飯

 最後に、村に来たらぜひ味わってほしい名物わっぱ飯をご紹介します。今回おじゃましたのは彌彦神社から徒歩5分に店を構える割烹吉田屋。
 「難儀した(=稲刈りなどで大変だった)ご褒美に食べに来たよ」と地元客も求めるのは、特製わっぱ飯膳。「わっぱ」とは、薄い木の板を丸く曲げて作った箱で、もともとは弁当箱として使われていました。これにご飯を入れて地元の旬の食材を乗せ、ホカホカに蒸した料理がわっぱ飯です。
 吉田屋では、昔から正月料理に使われている保存食の塩引き鮭や縁起物のイクラ、超極細の錦糸卵を贅沢に乗せて、香りづけに青のりや三つ葉、すだち、柚子を散らせます。
 蒸すことによって地元産のお米がふっくらと、具材のうまみが凝縮され一口食べればたちまちパワーがみなぎります。「特製わっぱ飯を食べて、みなさんに元気を出していただきたいです」と、お店の方の愛情がたっぷり。
 おやひこさまを中心に暮らす弥彦村。あなたもエネルギーチャージの旅に出かけてみませんか。

■次回は福島県下郷町です。

まちのデータ

人口
7597人(9月末現在)
おすすめの特産品
伊彌彦米(コシヒカリ)、えだまめ、デラウェア(ブドウ)、シャインマスカット、しいたけ
アクセス
東京駅から弥彦駅まで電車(燕三条経由)で約2時間半。車で約5時間
問い合わせ先
弥彦観光協会 0256-94-3154

いつでも元気 2023.12 No.385

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ