民医連新聞

2023年12月5日

私がここにいるワケ 地域に出る歯科震災支援で学んだスピリッツ 宮城・古川民主病院歯科 歯科衛生士 小玉 奈緒美さん

 民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ第9回目は、歯科衛生士。宮城・古川民主病院歯科の小玉奈緒美さんです。(長野典右記者)

 「もともと虫歯がなく、歯科受診の経験はありませんでした」と語る小玉さんですが、医療関係に興味があった高校生の時、歯科衛生士をめざし、宮城県内の専門学校に入学しました。訪問診療をしている同事業所が近所にあったことがきっかけで、民医連に出会いました。

■署名活動でつながる

 入職7年目に夫の転勤で東京に引っ越しましたが、やはりここでも民医連で働きたいと、東京・相互歯科、けんせい歯科に移籍しました。「民医連とは…を学ぶ機会になった」と言います。「保険で良い歯科治療を求める請願署名」提出の国会内集会や、厚労省との交渉、立川駅前でのネットカフェ調査など「すべてが初めての経験。歯科衛生士にこんなことができるなんて」と驚いたそうです。
 地域訪問で、ある団地に署名をお願いに行った時のこと。訪問から数日後、「障害のある子どもがいるが、診てもらえる歯科が見つからない。診てもらえますか」と、いっしょにポストに配布した歯科のパンフレットを見て、母親から電話がありました。その後、娘さんは母親といっしょに来院し、治療をすすめ、父親や妹の受診にもつながりました。「署名活動がきっかけで歯科医療にアクセスできなかった人とつながることができた。アウトリーチの大切さを実感した」といいます。

■民医連はひとつ

 夫の転勤で再び宮城に戻る準備をしていた時、東日本大震災が発生。相互歯科のメンバーと宮城・松島海岸診療所に震災支援に入りました。水と歯ブラシを持って、介護施設での口腔(こうくう)ケアや避難所をまわり、入れ歯の洗浄も。すごく喜んでもらえた経験をしました。
 宮城に戻ってからは炊き出しなどにも参加し、全国からの支援者にも会いました。全国からの支援物資や励ましは、長期にわたる被災者支援の原動力となり、民医連はひとつであることを実感しました。「今できることをやりたい、やらなきゃ」と思いました。民医連青年ジャンボリーや原水爆禁止世界大会にも参加し、民医連運動にかかわることができました。

■多職種との協働で

 診療では、チーム医療をすすめるなかで、多職種と患者情報を共有し、より良い歯科医療の提供をめざしています。
 新人のころ、車いすから歯科ユニットへの移乗が不安だった時、同期の介護福祉士が安全な移乗方法を教えてくれました。経済的な理由で継続的な受診が困難な患者に遭遇した時は、SWに相談することができます。また入院病棟もあるので、入院患者への口腔健康管理は、病棟の看護師などとの連携をめざしています。
 歯科衛生士の確保と育成も課題です。「チーム医療や民医連運動を通して、民医連で働く楽しさを次の世代につなげていきたい」と話します。

■『基本となるもの(案)』

 全日本民医連歯科部では、『民医連歯科衛生士の基本となるもの(案)』を提案し、10月から全国討議が始まっています。
 民医連の歯科衛生士を知ってもらい、医科・歯科・介護事業所での討議、歯科衛生士への期待や連携のとりくみなどの意見集約中(締め切り‥2024年1月12日)。来年4月の歯科衛生士全国交流集会での完成をめざしています。
 全日本民医連の歯科部部員でもある小玉さんは「民医連歯科衛生士の魅力や可能性を発信し、多職種とともに発展させたい」と語りました。

(民医連新聞 第1796号 2023年12月4日・18日合併号)

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