民医連新聞

2024年1月5日

診察室から 在宅緩和ケアの課題

 診療所に異動して4年がたちました。それまでの28年間は病院勤務でした。病院では週に3~4回の外来業務でしたが、診療所では、毎日外来なのでつらくないかと心配しましたが、そんなことはなく楽しいものでした。当院は強化型在宅支援診療所であり、ほぼ毎日、午後から訪問診療をしています。医師は所長一人なので、外来が終わって昼食を食べてすぐに往診に出るというスタイル。おそらく、民医連の多くの診療所ではそうしていることでしょう。
 この4年間で27人の在宅看取りを行いました。がんなどの悪性腫瘍の患者は15人でした。がんの看取りに力を入れているということはなく、紹介されたり、もともと通院していた人が自宅での最期を希望した結果です。
 1990年『病院で死ぬということ』を出版した山崎章郎医師が、自らがステージ4のがん患者になって書いた本のなかで、自分の診療所にがんの緩和ケアを目的に紹介される患者の、4分の1は2週間以内に、約半数は1カ月以内に最期を迎えている、と書いていました。調べてみると、当院でも同じような割合でした。また、最近、地元の大学で、がん治療と緩和ケアの両方を行っている医師の話を聞きました。どちらの医師も、2010年、『ニューイングランド医学雑誌』に載ったテメル医師の「緩和ケアに延命効果が認められた」という主旨の論文を紹介していました。データが示す延命効果は、緩和ケアによるものというより、抗がん剤による治療を早めにやめたからではないかという。しかし、がん治療医が抗がん剤をやめる提案を患者にすることが難しい、と話していました。
 多くの患者は、奇跡が起こるのではないかと思い、最後まで治療を続けて、死ぬために在宅に紹介されます。最近、別の選択をした患者がいました。詳細は紹介できませんが、その人の最期にかかわることができて良かったと思っています。私もいつその時が来るかわかりません。それまでの間、しっかり生きたいと思っています。(岩城光造、富山・水橋診療所)

(民医連新聞 第1797号 2024年1月1日)

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