民医連新聞

2024年1月23日

相談室日誌 連載554 母国に戻れないイラン人の事例 世界から遅れる日本の難民認定(東京)

 当法人内のクリニックや歯科には、毎年数人の外国籍の人の無料低額診療事業(以下、無低診)の相談があります。イラン人の50代男性Aさんは、2020年に無低診希望でクリニックを受診。関節三角靱帯(じんたい)損傷と診断されました。難民申請中で無保険でした。Aさんはイランでプロスポーツ選手の経歴を持ち、通訳の仕事をして、日本人の妻とイランで生活していました。
 19年の反政府デモに参加し逮捕され、むち打ちの刑で拷問されました。デモに参加した人が多数殺されたそうです。20年1月に来日し、難民申請を行いました。入国後まもなく入管施設に収容され、収容中に足を受傷。2~3カ月後に施設内で撮ったレントゲンで異常なしと診断。痛みが続くため何度も再診を訴え、病院で骨折と判明。患足をかばっていたところ健足が痛み腫れ、6月に仮放免となりました。
 後から渡日する予定だった妻はパスポートの期限が切れ、イスラム教の教えで夫がイランで手続きする必要があり、出国できません。Aさんは同郷の友人宅に居候しています。母国では預金がありましたが、イランとアメリカの関係が悪化し、イランから日本への送金が停止され、友人などの支援のみで生活が困窮しています。難民支援団体の給付金は却下されました。
 靭帯損傷は専門科の受診を勧められ、前任SWが無低診を実施している病院を中心に探しましたが、支払い困難なため受け入れ先が見つかりませんでした。難民申請中の人は無保険のため、無低診実施事業所も医療費が全額病院持ち出しになります。Aさんはその後足の痛みが悪化。現在は発作性心房細動もあり度々受診。難民認定は却下。弁護士の調べで十分な審査がされていないことが判明し、2回目の申請中です。
 現在日本の難民認定率は2%。難民申請中の仮放免者は就労禁止、国保の加入不可、生活保護も不可です。日本は仮放免者に対する扱いが国際的にみても非人道的だと批判されています。Aさんは妻が帰国できれば、配偶者ビザでスポーツジムをしながら事業を起こしたいと希望していました。世界各地では紛争が起きており、難民は増える一方です。日本も変わらなければいけない時代に入っていると思います。

(民医連新聞 第1798号 2024年1月22日号)

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