民医連新聞

2004年3月15日

「歴史をつくるのは、私たち」 総会方針を県連、事業所、職場に引き寄せ、具体化、前進を

 総会三日目の本会議で、長瀬文雄事務局長が行った質問・意見に対する理事会からの報告および総括報告を紹介します。

理事会報告

 三日間の熱心な討議に敬意を表します。一日目三一人、二日目五〇四人、三日目五人、のべ五四〇人が議案について発言し、参加代議員の約九割になります。
 出された意見には一号議案への反対意見はなく、積極的な立場で議案を「深める」あるいは「補強」する発言でした。総会方針はこうした全国的な討議と代議 員の「参画」でつくられていくものと実感します。
 補強意見は可能な限り取り入れる立場で修正作業を行いたい。総会後の三月の四役会議および理事会に一任していただきたいと思います。
 中でも、重要と思われる点について、理事会の考えをのべます。
 スローガンは、以下のように修正します。第二項の「安心・安全・信頼…」を「安全・安心・信頼…」と統一したい。これは安全があって、安心があるという 視点からの修正です。第三項の「医療・福祉の質」は第二項ともかかわるので、削除し、「事業所の管理力量を高め、すべての職員が誇りと生きがいをもって働 ける組織めざし前進しよう」とします。
 患者の権利、医療安全を高めるとりくみを病院だけのものとせず、すべての事業所の課題としてとりくむこと、また権利と安全、質の総合的な発展をめざすこ とを第四章第三節で補強したいと思います。
 医学対の問題で補強を行います。入職してから、育てることは言うまでもありません。しかし、医学生時代の六年間を通じて「どんな医師になるのか」を働き かけ、民医連運動への主体的参加を促すことはいささかも軽視できるものではありません。これまで以上に医学生対策を強化するということを強調したいと思い ます。
 新統一会計基準に関わって、税効果会計の見直しについて触れます。先の法人幹部会議で廃止を提起しましたが、慎重論も多く出されました。その後、経営委 員会、理事会で協議し、性急な対応ではなく、引き続き慎重に議論していくことを確認しています。

経営困難組織支援規定案について

 昨日の分科会での圧倒的な意見は「賛成」でした。しかし、いくつかの分科会で異なる意見や質問が出されていますので、あらためて補足説明を行います。
 「しつこく設立に漕ぎつけたいのは、すぐに融資したいところがあるのでは」という意見が出されました。決して現時点で、そうした対象があるわけではありません。
 方針案にあるように、これまでの経験を踏まえて、全日本民医連として平時から経営分野における危機管理のあり方を規定化したものであるということです。
 第三四期に提案し、二年前の二〇〇二年一月二五日に開催した説明会では、規定をつくることについて総論賛成ながら、様ざまな意見も出された中、第三五期 あらためてプロジェクトをつくり作業をすすめてきました。出された主な意見は議案の二〇ページの注記に示した四点です。(1)基金制度を設ける前に「予防 措置をとること」「経営危機の兆候を早期に発見するしくみづくり」「経営幹部や医師など人的派遣制度の整備」、(2)事業所を加盟単位としている全日本民 医連が法人からの資金拠出を求めるのは、おかしい。拠出しない法人が出た場合、救済する法人、しない法人が出るのは不団結となる。拠出のあり方を検討すべ き。(3)戻る保証のない資金の拠出は理事者の善管注意義務違反、背任行為となる。また巨額の拠出を求められても対応できない。(4)ペイオフなど考え資 金管理が不安である、等々でした。
 全日本民医連理事会およびプロジェクトチームは、これらの意見に対し誠実に議論し、見直した内容として、連帯基金制度だけでなく、総合対策としての「経 営困難組織支援規定案」としてまとめ、昨年の第三回評議員会にもかけ、了解の上に、全国的な討議を呼びかけました。また、必要な場合には各県連の理事会な どにも直接説明に出かけることを約束し、六県連の討議に参加し、三県連からの文書問い合わせに答えてきました。これらの協議を通じて、おおむね提案につい てご理解いただけたと考えています。今回の提案は出された意見を踏まえ、さらに補強したものとなっています。
 (1)について、この間、第三の指標としてキャッシュフロー計算書で資金の流れを把握できるようにしたこと、また要対策項目の見直しや地協単位での相互 経営診断のとりくみをすすめてきました。今回の提案では人的派遣を含む経営困難組織支援規定として総合的な対策としました。(2)について、法人拠出とし た場合の基金拠出の有無により、支援対象から外れる法人が生まれることを防ぐために、基金拠出の主体を全日本民医連基礎構成単位である県連とし、支援対象 はすべての県連加盟組織としたこと。(3)について、基金貸付法人が仮に返済不能の事態となっても、拠出県連に損失を発生させないために、これまで積み上 げてきた繰り越し剰余金のうちから二億円を保証基金として全日本民医連会計の中に設けたこと。(4)さらに、基金総額を二億円とし、基金規模の変更が生じ たときには評議員会および総会の議決が必要なことを規定の中に明記したこと、さらに、ペイオフ対策として、通常は各県連に緊急時出動可能な基金の設定をお 願いすることとし、全日本民医連への現金の集中は行わないこと、としました。
 「二億円で大丈夫か」という意見があります。この連帯基金ですべてまかなうというのではなく、緊急時の「一手」として有効と考えます。実際、これまでの 例では緊急を要する資金は、山梨の場合一・四億円、大阪・同仁会二億円、川崎数千万円でした。その間に、さらなる対策を打つ上でも有効な資金として活用で きればと考えます。県連単位での資金の集め方については、すでに事業協同組合などを通じて、制度として持っている県連、県連の繰り越し金を新たにあてる予 定の県連、県連で新たに個人からの基金を集める予定のところなど様ざまです。実情に即して工夫をお願いしているところです。要請している目安も一〇〇億円 の年収規模で約三三〇万円程度となっています。
 山梨、福岡・健和会、大阪・同仁会、さらには川崎、京都も全国的な連帯の力と現地の奮闘の結果、今日があります。まさに「連帯し助け合う」非営利の組織 として、役割を強めたいと思います。
 本総会では、以上の提案を踏まえてご判断をお願いするものです。

総括報告

 二月二七日、地元紙・埼玉新聞は全日本民医連総会の模様を「平和憲法を守り、患者の受療権を守るとりくみ の発展、医療・福祉の質と事業所の管理力量を高めることがテーマ」「地域住民のニーズを踏まえ、医療機関の役割強化を」「医療倫理問題は日常の現場で」活 発な議論が始まった、と伝えました。同日、保団連から劣化ウラン弾の被害を伝える『いつでも元気』一〇〇部の注文がありました。
 このように激動の情勢の中、内外の注目を集めて開催された全日本民医連第三六回総会は代議員の積極的な発言により大成功をおさめたと思います。各地か ら、粘り強い、リアルなとりくみが報告されました。早く持ち帰り、仲間に伝え実践したい、と考えている代議員も少なくないでしょう。一例をあげれば、深刻 化する国保問題で、旭川市では長年の運動の結果、一二項目からなる免除規定を勝ちとっています。親族に病気の人がいるとか、義務教育の子どもは免除される などです。また長野県では民医連がまとめた在宅酸素療法の患者さんの実態をふまえ、国に対し更正医療の対象とするよう働きかけています。全国的な普及が望 まれますし、可能です。医療安全、管理運営、人づくりなども様ざまな経験や教訓が伝えられました。持ち帰り具体化しましょう。
 これまですすめてきた医療・経営構造の転換の課題はハード中心からソフト面での転換が求められてきています。それは、医療安全、医療の質、管理運営、医 師問題、職員育成、共同組織強化などです。総会方針を身につけ、自分の県連、事業所、職場に引き寄せ、具体化し、前進をはかりましょう。その成果を二〇〇 六年三月に開催予定の仙台総会に持ち寄りましょう。
 歴史をつくるのは、私たちです。
 以上、まとめとします。

(民医連新聞 第1328号 2004年3月15日)

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