民医連新聞

2024年3月19日

1日目 運動方針案説明 岸本啓介事務局長 いのちと自由と尊厳を奪う戦争の対極に私たちは立っている

 初めに能登半島地震について。本総会には石川民医連の代議員団9人全員が参加しています(同代議員団が起立。会場から拍手)。
 石川民医連は自ら被災するなか1月1日の発災直後から、会長、事務局長を先頭に対策本部を設置。今も被災者と職員を守りながら奮闘しています。石川民医連と全日本民医連のとりくみの一端を、映像で紹介します(映像)。
 昨日の理事会で、3月以降の全国支援を確認しました。力を寄せ合い、石川からの要請に応え抜くことの確認をお願いします。

 1号議案、運動方針案を説明します。運動方針は「平和でいのちが大切にされる社会へ向かう転換」を基調にしました。これを練り上げる総会です。沖縄での開催が大きな財産となり、エネルギーとなると確信します。
 運動方針案を出して1カ月、昨日の理事会までに全県で論議し、方針案を深める提案が多く寄せられています。昨日の理事会でも共有し、議論しました。理事会報告の眼目は、方針案発表後の情勢の必要な補強、県連討議の特徴点、それを踏まえた内容です。
 46回総会の任務は、第1に前総会からの総括、46期運動方針の決定です。今日の時代認識と民医連の役割、私たちの到達点を深め、2020年代中盤へ向けた私たちの運動方針を確立します。運動方針案は、この第1の目的に沿った構成です。第1章で「全日本民医連結成70年、今後へ何を引き継ぐか」という形でまとめ、第2節で「引き継ぐべき、発展させるべき5点」を整理しました。
 もうひとつの基調は、44回総会で確認した「2020年代の4つの課題」を踏まえ、どう発展させるかです。46期の2年間、直面する課題に向かう上でこの点を据え、具体的な方針としては第3章に各分野を記載しました。

 総会スローガン案に、補強・修正を求める意見が寄せられました。スローガン案と全体にかかわる問題意識は冒頭の会長あいさつで触れました。その上で、理事会から第1のスローガンについて修正提案をします。
 「国連憲章」の後に「・国際法に反する」という言葉を入れます。すべての戦争や紛争がそれで止まる、というような理解にならないように、「一切の暴力・戦争」の前の「一切」を取ります。
 国際社会と大きな連帯をつくり、ウクライナ、ガザでの一刻も早い停戦を実現するために、46期に奮闘しましょう。分散会でも討論し、意見を寄せてください。

 第1章に触れます。県連討議で、民医連結成70年に向かう10年について、多くの共感が寄せられました。「綱領の改定からまとめた方がいいのではないか」との意見も出ましたが、すでにまとめた課題、重要な教訓を前提に、今回は2013年の結成60年以降の10年をまとめました。
 この10年は安倍政治という形で、日本社会が大きく歪められてきました。アメリカと財界の要求を背景に、急速に軍事大国化がすすみました。国民生活の苦難の拡大、社会保障の縮小、そして憲法を変えることまでが現実のテーマとなるなど、それ以前と違う、質的にも激変、激突の情勢でした。
 そのなかで民医連は、「医療・介護活動の2つの柱」をはじめ、医療や介護の理念を発展させ、幅ひろい団体や個人との連携・連帯・共同をひろげてきました。
 2015年には、戦争法に反対する新しい市民運動が展開されました。そのなかから市民と野党の共同、野党は共闘せよと、運動がひろがり、民医連はその共同の一員として、地域で奮闘しました。その土台に、2010年の新しい民医連綱領がありました。
 第1章第1節は、この10年の軍事大国化と新自由主義政治、憲法を守り生かす国民運動、新型コロナウイルスのパンデミック、「ケアの倫理」などの切り口でまとめました。県連の討議で「ケアの倫理」について、多くの共感が寄せられました。今後の学習、民医連の方針に具体的に生かしていくために、さらに深める議論を、総会でもお願いします。

 第1章に関連して1点補強します。2020年2月に「旧優生保護法下における強制不妊手術問題に対する見解」を発表し、第2節でその意義を書きました。旧優生保護法にもとづく強制不妊手術に対して、国に損害賠償を求める裁判が全国でたたかわれています。札幌・仙台・東京・大阪・神戸の5訴訟の上告審は、最高裁での一本化が決まり、5月29日に弁論期日が設定されました。各事業所に、判決を応援する署名を届けています。10万筆目標で署名を原告に届け、最高裁をかならず動かそうではありませんか。全県のいっそうの協力をお願いします。

 第2章は国際情勢を第1節に、国内情勢を第2節に書きました。
 運動方針案の発表後も、核兵器禁止条約の締約国はひろがり、核兵器をなくす運動も大きな高揚を見せています。
 46期の2年間、来年2025年は日本の被爆80年。被爆者は83~85歳が一番多くなっています。
 今年はビキニの水爆実験から70年。高知民医連が44回総会で呼びかけたビキニ船員訴訟支援は、全国で粘り強く行われています。5月には、東京でも弁論が開かれる見通しです。ひきつづき、全国で支援をお願いします。
 運動方針案にASEAN(東南アジア諸国連合)の前進について、初めて書きました。韓国のみなさんとも、無差別・平等の医療実践を何十年来と交流してきました。北東アジアの平和と核兵器禁止条約への参加は、日本政府、そして韓国政府の課題でもあります。共通問題としていっそうの協力・共同、交流をすすめます。

 政治資金パーティーをめぐる一連の巨額裏金事件、自民党ぐるみの違法行為で強く指摘したいのは、この企業団体献金によって、いのちにかかわる政策が歪められてきたことです。
 困窮がひろがり、社会保障の拡充が必要なときに、大軍拡にお金を使う。こんなバカげたことあってはなりません。大軍拡の予算確保のもと社会保障の削減をすすめる政策が、「全世代型社会保障改革」です。給付は高齢者中心で負担は現役世代中心と世代間の分断をあおり、高齢者の給付削減と負担増がすすめられています。
 少子化対策の「子ども未来戦略」の一番の問題は財源です。医療保険からの拠出は法的にも認められず、私たちの負担をさらに引き上げるものです。社会保障の歳出削減では、大規模な医療機関の受診抑制、介護サービスのあきらめが、目の前の患者・利用者にひろがることは明らかです。
 2023年の「経済的事由による手遅れ死亡事例調査」は、全国から50事例が寄せられました。非正規雇用の事例、後期高齢者の医療費2割負担化が影響したであろう事例、低年金の影響で高齢者が手遅れになり、死亡した事例も報告されています。
 必要な医療や介護にアクセスできない社会を、決してよしとしないことは、ケアが大切にされる社会の基本です。国会に提出される「全世代型社会保障改革」関連法案、介護保険制度改悪法案に対し、私たちは一つひとつ現場から声をあげていきます。
 一方、県連討議では「負担増はやむを得ないのではないか」との声も。第1章の10年の推移で、自己責任と共助がひろげられてきたことの弊害を書きました。学ぶことで私たちは変われます。地域、共同組織といっしょに学びましょう。「民医連の提案」の発表を新しい理事会で具体化します。
 介護報酬改定での訪問介護の基本報酬引き下げは、耳を疑った人もいるのでは。このままでは訪問介護事業を崩壊させ、介護保険そのものも大きな困難を迎えます。総会として強く撤回を求めます。

 能登半島地震では、志賀原発で過酷事故の一歩手前だったことが認識されました。避難計画に実効性はなく、この地震大国日本で、原発は絶対に動かしてはいけないことが最大の教訓です。
 3・11以降、福島の現実に寄り添いながら連帯して、「原発ゼロ」をすすめてきました。原発があるがために、過酷事故がくり返される可能性があります。その可能性を一刻も早くなくすために、私たちは運動を強めていきます。

 第3章はリードで基本方向を示し、2020年代の4つの課題の前進、2年間のコロナ禍の実践から私たちが得たもの、第2章で提起した直近の情勢を踏まえて、求められる課題について、各分野で具体的な方針を出しています。
 理事会で、深刻な経営問題があらためて議論になりました。大切なのは、たたかって民医連の医療と介護をやり抜くこと、全職員の経営に徹すること。運動方針案は県連機能を発揮して打開する提起と理解し、議論してください。

 「いのちと自由と尊厳を奪っていく戦争の対極に、私たち医療・介護従事者は立っています」。「はじめに」の「この文はさまざまな場面で取り上げていかなければならない。なぜ政治に目を向けるのか? 職員だけでなく患者や利用者、そして民医連外にわかりやすく説明していくことが大切」。ある職員の感想です。
 同じ趣旨で、「おわりに」で看護学者の川嶋みどりさんの言葉を引用しました。多くの職員に通じ合う言葉ではないでしょうか。
 直面する多くの課題があります。私たちは、一番困ったときこそ、共同組織といっしょに集団で議論し、集団に頼り、全国に頼り学び合うことで、これまで困難を乗り越えてきました。
 3日間、全体会と分散会で活発に討議し、運動方針を練り上げていくことをお願いします。

(民医連新聞 第1802号 2024年3月18日号)

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