くすりの話
2008年1月1日
くすりの話 103 解決をめざす「薬害肝炎」とは?
Q:肝炎がなぜ薬害なの?
A:感染者を特定できる「命のリスト」418人分が厚生労働省の地下倉庫から見つかり、責任を否定してきた国と製薬企業も和解のテーブルにつくことが決まりました。
C型肝炎をなぜ薬害というのでしょうか。止血剤として製造された「フィブリノゲン」や、血液凝固第9因子製剤「クリスマシン」を製造するとき、肝炎ウイ ルスに汚染された原料血を用いたことから、多数のC型肝炎患者が発生したためです。
1977年にアメリカでは、有効性と比較して危険性が高いという理由で販売を取りやめました。ところが日本では、医療機関へ安全性情報を伝えたのは 1987年に青森県で集団感染がおきてから。国がきちんと販売制限をしたのは1998年でした。企業と厚生官僚が共犯で被害を隠し広げたのです。
2001年にメーカーが国に報告した資料では、1980年代以降で1万人余りの感染者が発生しています。
Q:どんな被害がおきているのでしょうか?
A:肝炎は、長い時間をかけて肝硬変から肝臓がんを引き起こす、重い病気です。また、肝臓の炎症により疲れやすく、仕事や家事に影響が出ています。しかし、外見から病気の重さがわからず、職場で差別を受けたり、家族関係がこわれたりしています。
このため、被害者の多くは身をひそめて生活してきました。感染から時間がたっているため、カルテが入手できず原告になれない方も多くいます。多くの原告は、差別をおそれて匿名で裁判を続けています。
肝炎の治療には、インターフェロンが効果をあげますが、すべての人に効くわけではありません。また副作用が強いこと、薬品代が高価なことから治療できない人もいます。
早く治療をすすめれば肝臓がんの発生を予防できるのですが、血液製剤で感染させられたことを告げられていない方も多く残されているのです。
Q:これからの見通しは?
A:肝炎訴訟は、高裁での和解交渉に進んでいます。被害者は国と企業に対し、被害発生に対する責任を認めた謝罪とともに、原告全員への補償、原告だけでなくすべてのB型・C型ウイルス肝炎患者に対する治療体制の整備を要求しています。
和解交渉は始まりましたが、国・与党側は投与時期による原告切り捨て、医療費補助はインターフェロン治療に限るなど、被害者の願いとかけ離れた案を出してきています。
裁判支援では、法廷傍聴・街頭宣伝・学習会の開催など、各地の支援会で民医連職員ががんばってきました。現在、全面解決署名と被告企業製品の不買運動に 取り組んでいます。民医連の病院では運動の先頭に立ち、田辺三菱製薬・日本製薬の製品を購入制限し、企業に抗議声明を届けています。
読者のみなさんも、薬害肝炎問題が早期に解決するように、いっしょにご支援ください。
いつでも元気 2008.1 No.195
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