いつでも元気

2008年2月1日

元気スペシャル 「居場所」づくりでまちを元気に 京都・乙訓医療生協

  「生協や友の会の活動をしたいけど、集まる場所がなくて」といった悩みは少なくありませんね。そんな中「空き家や空き部屋はあ りませんか? できたら無料で貸してください」不動産屋さんが聞いたらびっくりするような呼びかけをし、気軽に集まれる拠点を五カ所に増やし、活動を活性 化させている乙訓医療生協。取材しました。

空き部屋 無料で貸してください

genki196_01_01  さいしょの呼びかけは二〇〇四年五月の総代会でした。支部活動をさらに発展させるために、新たな組合員活動の拠点が必要、という方針を「長期計画検討委員 会」が出したのです。それまでは医誠会診療所内に「ほっこりサロン」という拠点が一カ所ありました。組合員からも「診療所から遠い支部にも気軽に集まれる 場所がほしい」「班会を続けるには場所が要る」などの声が出ていました。
 〇四年七月「ほっこりサロン・樫原」が、つづいて「絆」がオープンしました。
 「拠点ができると、活動が大きく前進する」が実感でした。翌〇五年は「どんな形でもいいから集まれる場所を作ろう」と全組合員に呼びかけが。これに応え「月一回くらいならうちを使って」「私の事務所の空いた時間を貸します」とさらに二カ所にできました。

棚ぶどう おしゃべりで見つけた!

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空き家をお借りした「棚ぶどう」一周年のお祝いにはなんと一〇〇人が!

 大山崎町の庭つき一戸建ては「棚ぶどう」。ここは“ひょうたんから駒”のように生まれました。 医療生協理事の米重恭子さんがヘアサロンでおしゃべりしたのがきっかけです。髪をセットしてもらいながら、「気軽に話したり、好きなことができる空き家か 空き部屋がないやろか」と話すと、「ここの前の家が空き家だよ」というではありませんか。
  聞けば、住人は夫に先立たれ、特別養護老人ホームに入っていました。家の管理は、孫が遠くから来てときどきしているとのこと。「ちょうど明日がお孫さんの来やはる日やわ」
米重さんは小野留美子専務理事と、翌日早速そのお孫さんに会いに行きました。「空き家にしておくのは心配、祖母の元気な間は管理をお任せします」と、OK が出ました。大喜びで部屋を片付け、スペースづくりに汗を流した米重さんたち。庭に古いぶどう棚があったので、呼び名を「棚ぶどう」にしました。
〇六年一一月三日のオープンには誕生したばかりの民主町政の真鍋宗平・大山崎町長もかけつけました。何をしたらいいかとまどっていた運営委員たちも、「集 まって話したい」「楽しいこといっぱいしたい」の声の強さにびっくり。食事会に始まった活動は一年で多彩になり、利用者は七〇〇人を超えました。
毎週火曜日、第一週は字手紙、第二週はいけばな、第三週は食事会、第四週は着物のリフォームと小物づくり、第五週は健康チェックと健康学習会。二階はいつ でも囲碁、将棋ができます。一月から健康マージャンも開始。布ぞうりづくりを教える人も現れました。

 一周年の〇七年一一月二五日には一〇〇人を超す人がやってきました。前日からの準備スタッフは三五人にも。食事、バザー、手作り小物、ケーキ販売。健康チェック、骨密度測定、血液サラサラ君、アロママッサージコーナーも作りました。
 「一年でこんなに大きくなるとは」と米重さんは驚きます。「家主さん、スタッフ、参加してくれるみなさんに感謝です。一度来た人が、『おもしろい所があ る』と新しい人をつぎつぎ誘ってくるんです。また、自分の得意技をみんなに教える喜びも味わい、新しいコーナーができます。楽しいことが『回りだしたら止 まらない』の連鎖反応が起きています」

「おもしろいところがある」とつぎつぎ人が集まって─

ほっこり山ノ下 故人の居室が提供され

genki196_01_03 自宅で母親を看取った井上敏子さんが「医誠会診療所のお陰で母を看取ることができた。医療生協のためになるなら」と、一室を提供してくれました。5向支部のたまり場です。
 バリアフリーで床暖房、日当たり抜群の素敵な部屋です。〇七年四月のオープンにはきれいな看板をつくり、ビラを配り、声かけをしました。つぎつぎ人が来て一二人に。部屋は満員になりました。多目に用意した一〇個のケーキも足りなくなりました。
 以後毎月第三水曜日に開いています。診療所から看護師さんや栄養士さんに来てもらい、健康チェックや、味噌汁の味比べをして減塩のはなし。「後期高齢者医療制度」の勉強会もし、お茶を飲みにぎやかに話に花を咲かせます。
 取材に寄った一一月は八人が参加、「川柳をつくろう」という日でした。常連で、長年川柳をしている松本とし子さんが先生役。「川柳とは」のお話をきいたあと、各自で作ってみました。
 認知証のお母さんを介護中のひろこさんは“いま聞いたその場で忘れるお母さん”。最近夫が定年になったとしえさんは“定年後 夫の態度に頭キレ”と作り、“遂にきた ヒザの痛みに老い感じ”と詠んだかよこさんには、全員から実感、拍手が起きました。
 松本先生は「初めてにしてはみんなうまい」と褒めました。
 家主の井上さんは「最初は来てもらえるかが心配だったのが、このごろは『家に入れるだろうか』と心配しています。わたしもみなさんも一緒にうれしくなるようなことがしたい」と笑顔です。

 小野留美子専務理事と中尾史香組織部員というコンビの大車輪の活躍が、五つの拠点と九つの支部を上手に回転させています。「小野ちゃんや史香ちゃんに頼まれたら断われへん」みんなそういいます。頼み上手が人を乗せ、またひとまわり和と輪を大きくさせていきます。

高齢者が生気取り戻す

 家に閉じこもっていた一人ぐらしの高齢者が「ほっこり」の拠点にやってきて生き生きした姿を取り戻したり、「ここに来て悪かった体調がすっかり良くなっ た。こんな楽しいこと初めて」とはしゃぐ姿や、お化粧し、おしゃれする人も出て、「がんばってやってきて本当によかった」と、二人は話しています。
文・清原巳治編集委員
写真・豆塚猛

活動拠点を紹介します

ほっこり竹の径は、 6向支部が運営。月1回開き、昼食会、絵てがみ、健康チェック、健康体操、布ぞうりづくり、はし袋づくりなどに挑戦しています。05年12月のオープンに は30人が集まりました。1周年記念のフラダンスは運営委員も驚くほどのにぎわいに。市議の丹野直次さんの事務所が空き時間を開放しています。高齢者に絵 手紙案内状を送るなど、細かい心遣いが喜ばれています。

ほっこりサロン・樫原は、 呼びかけ後第1号になった拠点(04年7月)。診療所から離れ、組合員も少ない地域でした。マンションオーナーの稲葉都さんが高齢者に1室を開放したいと 提供。賛同者で運営委員会を作りました。「何が始まった?」と遠巻きにみていた近所の人も、夏まつりや収穫まつりのにぎやかさに、水・金の開催日は仕事の 途中一服に来ます。今は憩いの場です。

は、 長岡京・大山崎支部のすみれ班の運営。家主のKさんがお家を使わせてくれています。班会、健康チェック、囲碁や将棋、集まってのゴキブリ団子づくり、親子 で物づくりを楽しんだりと組合員が近所の人といっしょに集まれる場として喜ばれています。オープンは04年7月でした。

 医誠会診療所内で01年から開いた「ほっこりサロン」は、 元祖です。全国高齢者大会の参加者たちがほかの地域の経験に学び、「うちでもやろう」と始めました。食事会や歌、おしゃべり、お正月飾り作りなど楽しく過 ごします。月2回、ボランティア5、6人がお世話役。人気は食事会、そして歌の時間です。「サロンの美人ママ」を自称する門野陽子理事の陽気なリードに笑 いが絶えません。

いつでも元気 2008.2 No.196

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