民医連新聞

2024年5月7日

さよなら!原発 能登半島地震から学ぶ原発の安全性 地震に脆弱、機能しない避難計画 福島事故後の規制基準で再検証を

 1月に発生した能登半島地震から4カ月。震源地に近い、運転休止中の北陸電力志賀原発は変圧器が壊れ、外部から電気を受ける系統が一部使えなくなるトラブルや、道路の寸断で孤立があい次ぎました。能登半島地震から学ぶ原発の安全性について新潟大学名誉教授の立石雅昭さんの寄稿です。

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 マグニチュード(M)7・6の能登半島地震では、家屋全半壊が2万3000軒におよび、圧死や低体温症などで240人を超える人びとが亡くなりました。3万4000軒で断水し、4月2日現在も6700軒で断水しています。陥没・土砂崩れ、道路の寸断で、24カ所、3400人が孤立を余儀なくされ、救援・支援がままならない状況が生まれました。4月2日現在、7400人を超す人びとが、372カ所の避難所で厳しい避難生活を強いられています。

■震源断層と地震動の推定

 2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で発生した巨大な津波を受けて、大きな津波は発生しないと考えられていた日本海も、津波波源の断層の調査・解析がすすめられてきました。2014年『日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書』として公表され、報告のなかで、能登半島北岸沖の断層も佐渡側に延びて連動し、M7・6の地震が起こり得ると評価されていました。日本海では北海道の沖合から南西部の九州沖合にかけて、数多くの長大な活断層の存在が指摘されています。しかし、この調査・解析では断層の活動による地震動が、沿岸地域にどのように影響するかという評価はなされていませんでした。
 1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)を受けて発足した「地震調査研究推進本部」では、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を「確率論的地震動予測地図」として公表し、最新版は2020年版です。しかし、この最新版でも能登半島をはじめ、日本海沿岸を襲い得る地震動は低く評価されていました。海域の断層の活動履歴が未解明で、次の地震が起こる時期を予測できず、海域での断層調査の困難さを示しています。原発の耐震安全性も、電力事業者や原子力規制委の審査で、断層の連動や地震動の評価が不十分な状況が続いています。

■地震に伴う隆起・地殻変動

 能登半島地震で、半島の北岸一帯が隆起しました。もっとも隆起が大きかった輪島市鹿磯(かいそ)では4mに達し、周辺沿岸部では新しく4段目の段丘が生じました。能登北岸でこれほどの隆起が起こるとは誰も予想していませんでした。しかし、地球史的に見れば、半島北部沿岸では、およそ12~13万年前の海成中位段丘が100~120mに達し、1万年で10mの隆起をくり返してきたことが読み取れます。
 ただし、地震に伴う地殻の運動は多様であり、それぞれの地域の地殻の運動像を明らかにしていくことが求められます。

■地震は原発の最大のリスク

 原発の最大のリスクは地震です(もっかい事故調、岩波『科学』2016年6月号)。原発の安全性を高める上で、兵庫県南部地震以降、活動期にあると言われる日本では、地震と原発の安全性の再検証が求められます。特に、2006年の耐震設計審査指針策定以前に設計・建造された原発は直ちに廃炉にするべきです。しかし、2013年に福島原発事故を受けて改訂された規制基準の後も格納容器・原子炉建屋本体の補強がなされず放置されています。

■志賀原発の避難計画

 原子力発電所の避難計画は、30km圏内について策定されます。志賀原発では30km圏内人口は約15万人(内閣府2020年)。石川県作成の避難計画では、志賀原発での放射能拡散事故時には、輪島市の6277人は同じ輪島市内の30km圏外へ、志賀町の8211人と七尾市6415人は能登町へ、穴水町の8169人は珠洲市へ、避難することとされています(図)。南部や南東部の市町村住民は金沢市をはじめ、南部・南西部の圏外市町村へ避難することとされています。しかし、そもそも原発の避難計画では、原発から5km以遠、30km圏内の住民は、事故発生時、まずは自宅で待機するとされています。周辺に設置されたモニターで放射線量を確認し一定の量に達すれば、この指定避難所に、自家用車やバスで避難するとされます。能登半島地震でモニターの一部が欠測状態に陥ったことや、道路の寸断でこの避難計画はまったく機能しないことは、誰の目にも明らかになりました。
 稼働している原発も含めて、日本のすべての原発の避難計画をあらためて検証するべきです。

(民医連新聞 第1805号 2024年5月6日号)

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