いつでも元気

2008年2月1日

民医連の原点から考えた 病院支える地域の声大切に 差額ベッド料どう思う?

 国の医療費抑制政策による経営困難で「差額をとらずにやっていけるのか」との意見が。改めて民医連が差額を徴収しない意味について考えてみました。

“医療にお金まわせ”の声大きく

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1967年に東京民医連が一斉老人健診をして運動の中心となり、東京都で医療費負担の無料化が実現(1969年)。国の老人医療費無料化につながった(1973年)

共子 いま民医連で差額徴収が議論されているんだって? 民医連は昔から差額ベッド料もとってこなかったんだよね?
民雄 うん。第二次大戦後に民主診療所が生まれただろう? その背景には「どんな困難な社会的条件にある人でも医療は保障されるべきだ」という理念でがんばった医療従事者と地域住民の協力があった。この民主診療所が合流して一九五三年、全日本民医連が結成されたんだ。
 「無差別・平等」というスローガンが民医連の文献に登場するのは一九五七年が初めてのようだけど、これは民医連誕生の理念だといってよいと思うよ。
 だから差額ベッドもなかった。
  民医連総会で「原則的に差額徴収はするべきではない」と決めたのは一九六四年だ。この頃は国民皆保険制度が実現して「保険ですべての必要な医療ができるよ うに! 差額徴収反対!」というのが国民の要求だった。民医連もその要求を掲げてたたかった。だから当然差額をとるべきではないと決めたんだ。もっとも民 医連はそれ以前から差額をとっているところはほとんどなかったんだけど。

「小泉改革」が病院締めつけ

 じゃあなぜまた議論になるの?
  二〇〇六年に小泉元首相がやった「医療改革」が関係している。二〇一二年までに療養型ベッド(三八万床)を二三万も削るなど、これまでにない大規模な医療 費削減計画を決めたんだよ。公的医療保険から医療機関へ支払われる「診療報酬」を大幅に減らした。後期高齢者医療制度も実はこの医療費削減計画の一環なん だ。そしてこれまでの「特定療養費制度」という制度の名称を「保険外併用療養費」に変えて差額医療を増やしたんだ。
 え~っ! 後期高齢者医療制度も「小泉改革」だったの? その「保険外併用療養費」って混合診療のこと?
  混合診療は「保険で認められたほかによい医療を受けたければ、その部分は自費で払え」ということだよ。でも今度の制度では「自由料金で保険と併用してもよ いのは政府が指定したものだけ」という点は変わらなかった。つまり食事や部屋代、一部の新しい診療技術などに限られているんだ。それを混合診療が全部認め られたように受け止めて「差額ベッドを持たないと経営が成り立たない」という議論が出てきたようだよ。
 たしかに病院が閉鎖されたり、お産できるところが減ったりしてるわね。
 医師不足も病院の経営困難も根っこはひとつ。八〇年代からつづいてきた政府の医療費抑制政策だ。その極めつけがいまの「医療改革」なんだ。
 なるほどね。でも「混合診療」は「自費を払ってでも最新の医療を受けたい」っていう患者の要求に応えるには必要なんじゃないの?
  必要な医療技術や薬は、すべて保険で給付するというのが国民皆保険の原則なんだ。そうであれば、すみやかに安全性や効果を審査して公的保険を適用すればい いんだよ。「自費なら最新の医療が受けられる」というのは、逆にいえばお金のない人は最新の医療が受けられないってことだし、安全性が確立されていない技 術や薬が横行するかもしれないよ。

介護施設の自費とは別物

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患者のための医療は、たたかってこそ実現する。「医師・看護師ふやせ!ストップ医療崩壊! 10・18中央集会」のパレード

 でも政府の計画通りにすすんでいるわけじゃないんだ。
 というと?
  昨年の参議院選挙で自公政権が負けただろ? それで流れが変わり始めたんだ。自民党は「後期高齢者医療制度の一部凍結」をいいはじめた。「これ以上医療費 を引き下げる状況にない」と中医協(厚労省の諮問機関)までがいいだした。国民の世論と運動を政府も無視できなくなっているんだよ。療養病床の削減もほと んど進んでいないそうだよ。
 だけど介護や健診などでは民医連も自費をもらっているんじゃないの?
  老人保健施設の食事代や部屋代などは、必要な経費まで保険からはずされて自由料金にされたから、最低限のお金をもらっているものなんだ。民医連は「あくま で介護保険を適用すべき」と運動している。健診のようにもともと自由料金になっているところは「良心的な事業」として、できる限り安い料金で多くの人が利 用できるよう努力しているんだ。
 そうか。で、個室に入るには、差額は絶対払わなくちゃいけないものなの?
 いまでも医療上必要で、病院が患者さんを個室に入れた場合は、差額を取ってはいけないんだ。介護施設ではヨーロッパでは個室が当たり前。生活保護者でも個室が保障されている。日本では生活保護者が個室に入るのはダメなんだよ。
 ウーン、ひどい! でも差額をとらないと経営がたいへんなのでは?
  きみは一日一万円の差額を払える? そのくらいはとらないと病院の経営はあまり改善しない。「あの病院はお金のあるなしで差別せずがんばっている」と思う からこそ民医連の法人に出資してくれる地域の人も少なくないはずだ。差額をとらないことは職員の誇りでもある。差額ベッド料をとったら得るものより失うも のの方が大きいんじゃないかな。
 やっぱ「政治を変えて、医療にお金をもっと回せ!」ということよね。

いつでも元気 2008.2 No.196

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