いつでも元気

2008年3月1日

元気スペシャル 横須賀 米軍基地工事で大量発生「お化けハゼ」たちの警告 森住卓(写真家)

genki197_01_01  米軍基地再編・強化への反対運動が活発になっています。昨年末には1万人を超す規模の集会が、山口県岩国市(1万1000人)、神奈川県座間市(1万 3000人)、と続いて成功しました。「わたしのまちに基地はいらない」が各地で共通する声です。その中のひとつ、米海軍基地のある横須賀で、基地がひき おこす環境汚染を、長年調査している医師がいます。8月からの原子力空母の配備で新たな汚染の恐れは?
 森住卓さんのレポートです。

わたしのまちに米軍基地はいらない

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大型クレーン船が港内の浚渫作業を続けていた

 神奈川県横須賀市の米海軍横須賀基地を見下ろす丘から横須賀港を見ると、手前に海上自衛隊のイージス艦、護衛艦などがずらりと並び、その対岸に星条旗をはためかせた揚陸指揮艦ブルーリッジや巡洋艦、駆逐艦、そして右手には潜水艦などが停泊している。
 ここは地球規模で展開するアメリカの空母機動部隊の本拠地。太平洋、インド洋をカバーし、いつでもどこでも殴り込みが掛けられる。港内中央部では二つの大型クレーン船が海底の真っ黒い泥をさらっている。

釣りあげた3匹すべてが奇形魚

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07年12月横須賀基地の港でつり上げたハゼのX線写真。極端に背骨が曲がったハゼは汚染の激しさをあらわしている
(神奈川県保険医協会提供)

 「これが米軍横須賀基地の港で釣れたお化けハゼですよ」と、藤沢診療所(医療生協かながわ)の野本哲夫所長がX線写真を見せてくれた。極端に背骨が曲がったX線写真だ。「昨年一二月に調査したときには三匹しか釣れなかったのですが、三匹全部に異常が発見されました。外見上もハッキリ異常が認められます。私もびっくりしました」と。
 今年八月に予定されている原子力空母の配備を前に、海底をさらに深くする必要があり、浚渫工事がおこなわれているのだ。この浚渫でかき混ぜられた汚泥か ら出る汚染物質が、「お化けハゼ」の大発生の原因だ、と野本医師は指摘する。  

調査10年、工事後に大発生の傾向

genki197_01_04  野本医師らは神奈川県保険医協会公害環境部会で米軍横須賀港の汚染調査を一〇年前から毎年おこない、二〇〇〇年六〇%、二〇〇五年七九%の大量の奇形ハゼ の発生を確認した。それらのハゼは背骨の湾曲、尾ひれの欠け、皮膚の病変、釣り上げてからの生存時間が極端に短く、試食すると刺激性の油臭があった。
 魚体中からはPCB、鉛、ヒ素、六価クロム、トリプチルスズなど有害な物質が高濃度で検出された。
 「ハゼは海底に棲むゴカイなどを餌にし、回遊せず狭い範囲を移動するため、汚染の影響をうけやすい。ハゼを調べることで汚染の状態を知ることができる」と野本医師はいう。
 二〇〇〇年と二〇〇五年は異常値がなぜ出たのか。一九九九年にバース(岸壁)工事があり二〇〇〇年五月にバースの崩落があった。そして〇三年から〇四年 にかけては、バースに三〇八本の杭が打ち込まれた。そのため「海底のヘドロがかき回され、土壌に含まれていた汚染物質が出てきた。ハゼはその影響をもろに うけた」という。

環境規制を受けない米軍基地

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米軍横須賀基地と手前に海上自衛隊の基地がある
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横須賀港から4キロメートルほど離れた「海辺つり公園」でも奇形の魚が釣れた。影響が心配

 これらの汚染物質はどこから来たのだろうか?「米軍基地は環境規制を受けず、有機洗浄溶剤や重金属をどんどん垂れ流してきた。さらに戦前の日本海軍時代からの汚染も残っているだろう」というのは神奈川原水協の永沢丈夫さん。
 東京湾の汚染も心配され、「東京湾の海流による汚染物質の拡散がどの程度なのかを調査する必要がある」と野本医師は警告する。
 防衛省が環境省に提出した「廃棄物海洋投入処分許可申請書」(平成19年2月21日)によれば、投棄場所は太平洋。千葉県房総半島野島崎沖南東の一〇〇 キロメートル、三宅島から東北東一〇〇キロメートルに位置する。この海域に、浚渫工事で出た汚泥を、なんと六〇万立方メートル投棄する計画だ。
 海洋投棄を知った三宅島漁民からは「心配だ。小さな魚が汚染され、それを食べる大きな魚が濃縮して蓄積する。あの海域は日本でも有数の漁場だ。あんな所に捨てるのは非常識だ」と怒りの声が上がっている。

原子力空母は原子炉2基分
「事故で首都圏百数十万人ががん死」の試算も

東京湾入り口が核汚染の危険に

 空母「キティーホーク」に替わって配備予定のニミッツ級原子力空母は熱出力六〇万キロワットの原子炉を二基備えている。これは福井県美浜原発一号炉二基ぶんに相当する規模だ。東京湾の入り口に、原子炉が存在することになる。
 商業用原子炉は日本の法律でさまざまな安全基準がある。まして、首都の入り口に原発を作ることは禁止されている。しかし、米軍では厚い軍事機密の前に何も公開されずすべて秘密のベールに包まれてしまう。空母内には日本の法律がまったく及ばないのだ。
 いったん核事故が起これば、一〇年間で首都圏人口三〇〇〇万人のうち「百数十万人が晩発性ガンで死亡」という恐ろしい試算もある(北向きの風│年間最多 の風向き│という条件で、ジャクソン・デービス カリフォルニア大学教授「日本の港に停泊した軍艦における核事故」のデータを元に試算)。
 原子力空母の配備は八月に予定されている。配備を前にその準備段階で、重金属や有機化合物汚染を引き起こしている。お化けハゼは、原子力空母配備によってもたらされる危険を、魚たちが無言で警告しているようだ。

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座間市「戦争司令部ノー 爆音も原子力空母もゴメンだ!12・2首都圏大集会in座間」には、1万3000人が参加した。横須賀では原子力空母の配備の是非を住民投票で決めよう、と運動が起きている。米軍基地再編強化をストップさせるたたかいは全国で

いつでも元気 2008.3 No.197

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