民医連新聞
2024年8月20日
診察室から 歯科の訪問診療を通じて
みどり病院が今春新築したばかりですが、来年年明けにはその隣に歯科クリニックがオープン予定です。歯科クリニックのオープンに先立って、今、歯科の訪問診療に積極的にとりくんでいます。今日は日本の歯科訪問診療の実情と、みどり病院歯科往診の実際について話してみたいと思います。
わが国は、止まらない高齢化に伴って誰かの介護を必要とする、いわゆる要介護者も急増しています。そして要介護状態になってしまった人の歯科受診率は、非常に低いことをご存じですか。
一般に年をとればとるほど歯が悪くなり、歯科受診率は上がっていきます。しかし70歳前後に受診率のピークを迎えた後、80歳以降になると受診率は急速に低下していきます。これは、その年齢になると要介護状態となってしまう人が増え、自力で歯科受診ができなくなるためです。厚生労働省の資料によると、要介護者の約9割は歯科治療または専門的口腔(こうくう)ケアが必要であるのにもかかわらず、実際に治療を受けたのはわずか3割弱というのが実情です。
この背景には、コンビニよりも多いと言われている歯科ですが、過去に訪問診療の実績がある医院は2~3割と非常に少ないことがあります。「実績がある」なかで日常的に訪問診療を行っている歯科医院はもっと少ないでしょう。
実際にみどり病院で歯科訪問診療を始めて、まわりに歯科はたくさんあるのに来てくれる先生がおらず、非常に困っているという声をたくさんもらいます。歯科の訪問診療はそんな人にとって、最後の砦(とりで)です。その思いから日々、歯科往診に向かっていますが、最近診た患者のなかに、新しく入れ歯をつくってもらったことで食べられるようになり、生きる希望がわいてきたと言ってくれる人がいました。そんなに喜んでもらえるなんて歯医者冥利(みょうり)につきるなと、自分もとてもうれしく思います。やはり患者に喜んでもらえることが、歯医者の仕事の原動力です。
足取り軽く、今日も歯科往診に向かいます。(大竹祥一郎、岐阜・みどり病院)
(民医連新聞 第1812号 2024年8月19日号)
この記事を見た人はこんな記事も見ています。