いつでも元気
2024年8月30日
青の森 緑の海
植物はすごい生きものだ。人間の常識を超えた生き方は、さまざまな発見と教えに満ちている。
例えば、南の島のジャングルでよく見られるカズラ(ツタ)が巨木に絡みついている光景。〝絞め殺しの木〟と恐ろしげなネーミングもある。だが、これは鳥のフンによって種が樹上に撒かれ、根がそこから地表に降りてきた結果であり、森の生態系の一部として見ればごく自然な風景でもある。
写真は西表島(いりおもてじま)で撮影したマヤプシキという植物の〝根〟。左端に写っている樹の根で、「根というものは下向きに生える」という僕たちの常識を覆す姿をしている。亜熱帯から熱帯にかけてマングローブ林などに生え、環境の変化に弱いため「準絶滅危惧種」に指定されている。
地表に根が露出しているため、どこまで地下根のネットワークが広がっているのか、一目瞭然なのも面白い。川の河口域に広がるので、塩分に対する耐性も必要。よくもまあ、こんなところで生きているなと感動する。もちろん台風時の荒波と暴風にも耐えているのだ。
現代社会において、植物は僕たちの食を支えてくれるだけでなく、「癒やし」の役割を果たすこともある。しかし、根本的に植物は人間とは異なる存在ではないだろうか。
人間の価値観に合わせようとするのではなく、その〝違い〟を意識して、そこから何かを学ぶことが大切ではないかといつも思っている
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/
いつでも元気 2024.9 No.394
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