いつでも元気

2008年4月1日

カムカム健康法(28) 入れ歯(義歯)のはなし(4)

江原 雅博(愛知・みなと歯科診療所)

 歯科医院で義歯のかたどりやかみ合わせをみたり、できあがったものを口の中で調整して使えるようにするのは歯科医師ですが、義歯をつくっているのは歯科技工士です。最終回は、義歯には欠かせない「歯科技工士」のお話です。

義歯づくりの裏方、歯科技工士

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ひとつひとつ丁寧につくります

 「歯科技工士」になるには、厚生労働大臣の免許が必要です。歯科技工士の人数は、二〇〇六年度で三万五一四七人となっています(厚生労働省資料より)。
 うち五六%は歯科技工所に勤務し、歯科医院から注文を受けて技工物を製作しています。三二%は歯科医院や診療所に勤務し、歯科材料のメーカーなどに勤める人が二%です。
 歯科技工士には、細かい仕事をコツコツできる責任感のある人が向いています。与えられた仕事を約束の期限までに必ず仕上げ、患者の役に立てることで、喜びを見いだせる人であることが重要です。
 民医連の歯科は、全国に一一三施設ありますが、うち八〇施設に約一六〇人の技工士がいます。差し歯や義歯をつくるばかりではなく、健康まつりや班会など地域活動でも活躍しています。

機能的かつ美しく
 義歯をつくるときは、まず歯科医師が診療室で義歯の型取りをします。そしてその型から技工士が石膏模型を作り、さらにその模型から、残った歯に義歯を固定するための金具を作ります。
 患者さんのお口の状態や顔立ちを考えて、義歯に使う人工の歯を美しく機能的に並べます。歯茎がやせてしまっている場合には、その部分をワックス(ろう)で回復します。
 歯科医師が患者さんのお口の中で試した後、技工士がワックスの部分をプラスチックで置き換えます。もう一度、お口の中でかみ合わせなどを調整し、研磨をして完成です。

いま日本の歯科技工が危機に
 この高度な技術が必要な歯科技工が、いま危機にひんしています。
 長年、歯科の診療報酬が低く抑えられているため、歯科技工士の労働も長時間・低賃金。厳しい労働でなり手がなく、養成する専門学校は定員割れ、廃校も続 出しています。若手が少ない中、技工士の年齢は五〇歳代以上が全体の三割を占め、この年代が退職すると、確実に需要と供給のバランスが崩れます。
 「単価の安い保険の義歯は作らない」とか、「できるまでに時間がかかる」などの状況が目前に迫っています。
 海外発注に頼ろうとする動きもありますが、どんな材料を使っているかわからない粗悪なものが日本人の口腔内に入ることになりかねません。材料の安全性も日本で作る基準だから守れるのです。

最後に
 日本の歯科医療が存続し続けるには、保険の制度がよくなり、それを受ける患者・国民がもっと受診しやすい環境を作り出さないといけません。それとともに 歯科医療従事者が存在しなくてはいけません。国民すべての願いである「保険でよい歯科医療を」の実現にむけがんばりましょう。

いつでも元気 2008.4 No.198

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