いつでも元気

2008年5月1日

地球温暖化を止めよう(2) 打開の道はどこにある? ~温暖化のいま(下)

■2050年までにCO2排出を半分に

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和田武(わだ・たけし)
 1941年和歌山生まれ。立命館大学産業社会学部元教授。専門は環境保全論、再生可能エネルギー論。「自然エネルギー市民の会」代表、自治体の環境アド バイザーなど。著書に『新・地球環境論』『地球環境問題入門』『市民・地域が進める地球温暖化防止』(共著)など多数。
 写真は、青森の市民風車前。ポール部分に出資者の名前が入っています。

 前回は人間の活動によって引き起こされた地球温暖化の現状と、対策が待ったなしの時期だとお話 ししました。いますぐ気温上昇をストップできる方策は、残念ながらありません。温暖化を止めるには、地球を温室のようにしている大気中のCO2(二酸化炭 素)などの温室効果ガスの排出を減らすことが必要です。
 いま、世界で排出されているCO2は年間約260億トン、森林や海洋などの自然界が吸収できるCO2の量はその40%ほどです。吸収できなかったCO2が大気中に残り、それでCO2の濃度が増え続けているのです()。ちなみに、大気中のCO2濃度は、現在380ppmを超えて急上昇中です。産業革命前は過去60万年以上にわたってCO2濃度は300ppmを大きく越えたことはありません。
 科学者たちの警鐘を受け、世界では「2050年までに、温暖化ガスの排出量を現在の半分に減らすことを目標に、各国が行動しよう」という行動計画がたて られました。世界人口にすれば、1人あたりのCO2排出量を1~2にするという目標です。(2050年人口を90億人と推定)

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■やらねばならない「京都議定書」

  しかし、インドやアフリカなど、年間の排出量が現在でも1人あたり1トン程度の国があります。一方で、日本は国民1人あたり年間10トンもCO2を出している国です。アメリカに至っては20トンといった具合です。
 排出量が世界平均以上の国には、「温室効果ガスをいつまでに、どれだけ減らす」という目標が「京都議定書」(温暖化防止京都会議1997年)で課せられ ました。そして今年から2012年まで、削減が義務づけられた「約束期間」がはじまりました。各国は5年間で、CO2排出量を減らさなければなりません。 現状は、下のの通りです。
 世界が法的義務のある具体的な削減目標に初めて合意した、という点で京都議定書には大きな意味がありました。しかし、CO2濃度は、いまの排出量を 60%以上削減しなくては増え続けます。大気の温室効果ガスの濃度を安定化させ、温暖化を止めるにはもっと多くの温室効果ガスを減らす必要があるのです。

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全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より引用
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■省エネと自然エネルギーへの転換を

 「これから15年以内に世界のCO2排出量を増加から減少に転じ、2050年には現在の半分以下にする」「先進国はいまのCO2排出量の70~80%減らす」
…さあ、たいへんな目標です。部屋の電気を消してまわるなどの省エネや節約だけでクリアできる規模ではありません。
 排出されるCO2の90%以上は、エネルギーを作り出すことを目的に、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が燃やされて出たものです。火力発電所や工場 からは大量のCO2が出ていますし、自動車などの輸送機関や家庭からも出ています。物やエネルギーを大量生産し、大量消費するいまの生産活動や生活スタイ ルが、地球温暖化を引き起こす原因です。
 温暖化防止のためには、エネルギー消費を減らす(省エネ)とともに、CO2を排出しないエネルギー源への転換を進めることがカギになります。化石燃料に 依存した社会から、CO2を出さない新しい社会を作っていくことが求められているわけです。
 すでにCO2削減策で成果をあげつつあるEUでは、自然エネルギーへの積極的な転換のほか、CO2の排出枠を売買する「排出量取引」や、排出に税金をか ける「炭素税」などの経済誘導策を積極的に導入するなど、活発に動いています。

■よりよい社会をつくるチャンス

 これらの政府を動かしたのは、市民の力でした。
これまで、儲け優先で動いてきた政治家も、温暖化防止には真っ向から反対できない世論がつくられてきました。地球温暖化の解決にむけたとりくみは、いまの社会の構造を、よりよくしてゆくチャンスでもあると思います。
 各国で市民が勝ちとってきている経験をみれば、皆さんもワクワクしますよ。

次回は「先進」になったデンマーク

ミニ解説

温暖化対策への圧力…温暖化の事実を否定したり、人の活動が問題を引き起こして いることへの異議は少なくない。背景には政治的圧力や誘導があったことも知られている。アメリカの科学者団体の調査では、政府機関に勤める気象学者150 人が報告書から「気候変動」や「温暖化」の言葉を削除するよう求められたり、研究の結論が変えられてしまうほどの圧力を受けていた。その回数も435回に わたる。

エネルギーの有効消費…日本では、第1次エネルギーから消費までに無駄になっているエネルギーが65%にもなる。この問題に着手したドイツでは、無駄を半分に減らしている。

欧州各国の中長期目標…欧州諸国は積極的に排出削減の目標をたてている。ドイツ は2020年までに温室効果ガスを40%削減(90年比)し、2050年までに60~80%削減する、と発表。イギリスは2050年までにCO2排出量を 60%削減(90年比)、フランスは2050年までに75%相当(00年比)削減する方針。ノルウェー首相は2050年までにゼロにする、と表明した。

いつでも元気 2008.5 No.199

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