いつでも元気

2008年6月1日

イージス艦より食料自給こそ安全保障だ “平和と人権”かかげて政治変えるチャンス 吉田万三 時局診断

 後期高齢者医療制度の中止を、という声がますます大きくなっています。制度が始まってしまったのに、運動が衰えない。この間、胸にたまってきた国民の怒りが噴き出している。そう感じますね。

後期高齢者医療制度の廃止、かならず

思い切って広く手をつないで

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吉田万三さん
全日本民医連副会長。歯科医師。中央社会保障推進協議会代表委員

 東京でも三月二三日に廃止を求める集会を東京独自でやって、一万二〇〇〇人が集まりました。久々の独自集会が確信になり、もうひと回り地域の医療・福祉に運動を広げようと勢いづいています。
  いまあちこちで、老人クラブや地区医師会などと、新たな結びつきが生まれていますね。これまでつき合いのなかった人たちと、思い切って大いに手をつないで いく、そういうことが非常に大事な時期に来ていると思います。
  国会でも四野党で廃止法案を出すところまで来ていますし、自民党の議員にも「反対だ」という人が出始めている。運動が政治を押し込んでいるんですね。この制度は、必ず、廃止させましょう。
昨年まではこんな事態は考えられませんでした。参議院選挙で自民・公明が大敗し、安倍首相が政権を放り投げたあたりから、ガラッと風向きが変わってきた。
  ところが一方で、「九条の会」に対抗して改憲派が草の根の運動をやるといっています。政界再編をにらんだ動きも出ている。これからの日本をどうするのか、ものすごく大事な局面にきています。
  福田政権の本質は、「構造改革」路線の推進。後期高齢者医療制度は、「構造改革」の医療版です。医療構造を変え、格差社会に見合ったような医療制度にしよ うという大きな動きの一環なのです。混合診療への道も開いている。この動きはぜんぜん止まっていません。

今後は「財源」が焦点に

 これからの焦点は財源問題です。
 財界などが医療費削減の論拠にしているのは「このまま高齢者が増えると財政が破綻する」。もう一つは「世代間の不公平」、若い人の負担が重くなると。それだけ聞くと、お年寄りは遠慮深いから、あんまり迷惑をかけちゃいけない、我慢しますみたいなことになっちゃう。
 ですから、お金の使い方の優先順位、そして税負担のあり方、これでいいですかという提起が必要だと思います。財源というと消費税しかないような宣伝が多いけど、法人税だってあるじゃないのと。
 道路特定財源の一般財源化の話はわかりいいですね。お年寄りが医療にかかれない。給食費が払えなくて給食を食べられない子がいる。それなのに何が何でも道路だけは作る、それはないだろうと。
 道路よりも、医療とか福祉の特定財源をつくって、ここだけは守る、というような発想の転換が必要だということですね。小池晃さん(参院議員)がいってた けど、高速道路で早く着けますといったって、行った先に医者もいなきゃ、病院もないということになりかねない。お金の使い方をきちっと切り替えることが本 当に必要になっています。

経済効率優先の危ない構造

 もう一つはね、軍事費ですよ。
 イージス艦やミサイルじゃ国を守れないんだと。いくら国境を守っていたって、国境の内側で年寄りがみんな死にそうになっていたら、何を守っているんだってことになる。万一攻められたらとかいう人もいますが、実際にはミサイルなんかでは、大して守れはしないのですよ。
 安全保障というと、すぐ軍事的な話になるけれど、日本はエネルギー安保、食料安保のバランスが悪い。空想の世界で議論しているうちはいいが、これでは本当の意味で国を守れないのです。
 食料自給率はもう四割を切り、穀物ではたった二七%です。野菜などはほとんど水を輸入してるようなものでしょ。水の自給率も、ここ五年くらいで世界的に問題になるといわれているのです。
 農産物というのは、どこの国でも戦略物資です。アメリカでもヨーロッパでも、自給率は一〇〇%を超している。ところが日本はカリフォルニア米を輸入し、自分の国の農業をつぶす、水田をつぶす。
 日本は、兵糧攻めにされたら一発です。流通はすごく発達していますね、経営効率が悪くなるから在庫を抱えるなと。トヨタのカンバン方式です。在庫をなる べく抱えず、輸入されたものはピピっと、国のすみずみまですぐ行くようになっている。だから逆に、元栓をキュッとしめると三日か四日で参っちゃう。経済効 率はいいけど、危なっかしい構造なのです。

いざとなったらミサイルは食べられないよ

憲法9条を国の基本にすえて

 中国が軍事力を増強しているから日本も、なんて発想は逆なんです。むしろ憲法九条で、アジアや中国と平和的な友好関係をどれだけつくっておけるかということが、はるかに国を守る力になる。
 だいたい、万一が心配だって思うのは自分だけじゃないでしょ。逆に東南アジアの国から日本を見た場合、近所に、やたらイージス艦とかミサイルをガッチリ 持っている国がある。世界二位とか三位の軍事力です。日本の人は案外、自覚していないけど、世界でもトップクラスの軍事力ですよ。その国が、食料はあまり 持っていないということなんです。
 向こうから見たら危なくてしょうがない。いざとなれば絶対こういう国は食料をとりに来ると、向こうは思うのですよ。
 いざとなったらミサイルは食べられません。これからの国の方向を考えれば、いまこそ憲法九条を国の基本にすえるときです。これは大きな力を発揮しますよ。
 憲法九条、二五条「ピース・アンド・ライフ」のうねりをグッと推し進めて、政治を変える力にする。そのチャンスじゃないでしょうか。

いつでも元気 2008.6 No.200

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