民医連新聞

2004年3月15日

全国の実践から生まれた“方針”手に、前進しよう 運動方針案の提案(要旨)

長瀬文雄事務局長

 議案を発表して以来、全国各地で積極的な議論をいただきました。
 この二年間、川崎や京都の事件に関連して激しい民医連攻撃が行われました。また医療改悪や診療報酬引き下げにより、民医連として史上初めて事業収益が前 年対比で減少しました。創設五〇年の節目は本当に激変、激動の二年間でしたが、確かな前進も学び取るべき教訓も生まれました。
 戦後はじめて自衛隊が戦場に出兵し、憲法改悪が政治日程にのぼる情勢のもと、「平和と憲法を守り、国民の医療・福祉への要求、権利の実現のために、多く の医療関係者、国民と力をあわせて奮闘する」民医連の決意を、内外にしっかりと表明したいと思います。

*第1章*

 医療・社会保障の歴史的な改悪に対して、私たちは共同組織の人たち、多くの国民、医療関係者と共同してたたかいました。日本医師会などとの共同の積み重ねは今後への財産です。
 また「医療安全、医療の質」が大きな社会問題となりました。人権を第一に貫き、教訓を伝え、再発防止する民医連の原則的とりくみは評価を受けています が、まだ十分とはいえません。医療安全交流集会の到達点をすべての事業所のものにしていくことが重要です。第三者機関設置を呼びかけ、六月には関係者を招 いてシンポジウムを開催する予定です。
 川崎、京都の事件の教訓から、(1)組織と管理運営の問題、(2)理念と実際の乖離、形骸化、(3)医師研修、医療倫理、専門性の問題をまとめ、自己点 検と改善を呼びかけました。
 経営をめぐる状況が激変するなかで、全国的に医療・経営構造の転換をすすめ、ねばり強い奮闘で医療と経営を守ってきました。差額ベッド代を徴収せず、二 〇〇二年度八〇%の法人が黒字となったことは大奮闘といえます。しかし二〇〇三年度一二月までの全国二五モニター法人の集計では、六〇%が赤字で、経営を めぐる困難はあらたな段階に入ったことを示します。
 「だれのために、なんのために、だれから民医連の医療と経営を守りぬくのか」、深い意思統一と具体的とりくみが重要です。
 医師研修制度が三六年ぶりに変わり、研修の場が大学から地域へシフトしました。民医連の研修病院は一八カ所から四四カ所に、今年民医連で研修をスタート する医師が一八四人となりました。
 これらの医師を成長させ、民医連運動の後継者につなげるとりくみは正念場です。
 一九九二年以来、一〇年以上のとりくみで共同組織が三〇〇万に『いつでも元気』が五万部に到達しました。介護分野が前進し、史上最高の加盟事業所、職員 数で今総会を迎えました。五万六〇〇〇人を超える職員のうち三万人が青年です。平和や受療権を守る諸活動を通して、たくましく成長しています。これらを確 信にしましょう。

*第2章*

 時代認識と民医連の立場として、「社会でもっとも困難な人びとの要求や実態を踏まえ、その原因がどこにあるのかを分析し、現状を変革する立場にたつ(第三五期第二回評議員会方針)」ことを強調しています。この視点を、日常業務の中でより研ぎすますことが重要です。
 人びとの生活の場である「地域」は政治の矛盾の縮図です。「地域」から「連帯と共同」を育むこと、情勢負けしない「情勢論」が重要です。議論の中で大いに深めてください。

*第3章*

 五〇年を迎えた民医連運動を踏まえ、これから医療と社会に対してどのように働きかけるか、数年のスパンで民医連運動をすすめる原則的な見地と今後の課題を示しました。
 こんな時代だからこそ、県連、法人、事業所の歴史に確信を持ち、それを共有することが大事です。自分の言葉で民医連を語り合っていくことが重要です。

*第4章*

 運動方針実践の評価のために、具体的な目標、方針上の強調点や考え方を示しました。我流や従来通りのやり方では通用しない時代、大きく前進する可能性も、後退の可能性もある時代です。確かな方針をつくり、学び、決めたことをあいまいにせず、やり抜くことが重要です。
 全国の実践を通じて生まれてくる経験や教訓は貴重な財産です。総会の総括や方針に照らして、それぞれの事業所の到達、課題を、特に指導にあたる管理部や 職場長、職責者の皆さんが深め、それぞれの方針に反映させてください。
 日本国憲法の、戦争放棄をうたった九条と、生存権を定めた二五条は表裏一体のものです。「平和」が脅かされる時は人権も危ないときです。これからの二年 間、「平和と人権」を守り抜くために奮闘すること、職員や共同組織の人びとの中で創造的に「憲法大学習」運動を繰り広げ、憲法を日常の活動の中に生かそう と呼びかけています。
 無差別・平等の医療実践と医療・社会保障の改善・確立を求めるたたかいは民医連運動の両輪であり、民医連の〝たましい〟です。引き続き、「学習し、調査 し、連帯し、行動する」(第三回評議員会)を合い言葉に私たち自身が発火点となり、共同を広げましょう。
 医療・福祉の活動上、重視すべき点は、第一に、医療安全のとりくみでの前進です。医療安全は「人権」の問題であり、民医連に課せられた社会的使命です。 すべての臨床研修病院で病院機能評価の受審をすることをはじめ、ISOや地協・県連での相互診断など第三者評価の積極的位置づけを提起しています。第二 は、受療権と、医療者との関係で生じる権利の両面で「患者の権利」を守ることです。日本には「患者の権利」を定めた法律がありません。民医連は「カルテ開 示の法制化」を提起しました。この二年間で、人権感覚を研ぎすまし、共同組織や患者さんとともに「患者の権利」について現場で具体的に検討を深め、実質的 な内容をつくり出していきましょう。
 一年間に入院、外来患者合わせておよそ二七〇万人減り、診療報酬の引き下げもあって事業収入が前年を大きく割り込む状況です。混合診療の拡大や営利企業 の参入など公的医療の縮小を狙い、〇六年度に全面的な診療報酬改定が準備されています。
 どんな経営環境にあっても安定した経営体質をつくり上げることが重要です。五〇年来堅持してきた「無差別平等の医療」を守りながら、経営を守ることは、 それ自体がたたかいです。深いところで職員の腹に落ちるよう、管理者と職員集団、共同組織が認識を一致させましょう。キーワードは「誇りをもって働ける組 織」です。

 川崎・京都の問題から、管理水準・力量を高めることを重視し、(1)組織目標の決定過程の重視と目 標貫徹、(2)院長など管理者の権限と責任の明確化と組織整備、(3)管理機能の分化と管理機能発揮のための条件保障、評価基準、任用基準の明確化、④管 理力量の強化など四点を提起しました。
 管理の問題は、医師問題にも職員の働きがいにも関連します。
 民医連に入職した医師が、医療の専門家として、民医連運動のリーダーとして誇りをもって働けることを重視しましょう。
 そのためには医療・経営構造転換の論議、医療福祉の構想づくりに医師や医師集団が主体的に参画することが重要です。方針案に医師が「地域」の視点を獲得 できる条件の保障など、六つを提起しました。管理部と医師集団がよく話し合うことが必要で、医師や医師集団の「決意」だけでできることではありません。医 療・福祉・経営の構想とも深く関わります。長期を見据えた対応をすすめましょう。
 職員が様ざまな課題にどう参画するか、そのしくみをつくることも管理の大切な仕事です。「参画」は議案を貫くキーワードです。医療・福祉宣言を職場の方 針に生かすことが重要です。「民医連職員が健康で働き続けられるための指針案」を提案しました。また、初めて禁煙の促進を呼びかけました。
 三〇〇万に達した共同組織は、地域の人びとと私たちのかけがえのない財産です。本総会にも多くの全国連絡会の方がたが参加されています。これから一〇年 間で、四〇〇万共同組織と一〇万の『いつでも元気』を実現し、まちづくり、健康づくりの大きな展望をつくりたいと思います。
 今年七月には参議院選挙があります。「憲法を守れ、医療・社会保障を守れ」の運動を共同組織とともに繰り広げ、全日本民医連として正々堂々と要求をかかげ奮闘したいと思います。
 総会では、運動方針のほか、経営困難組織支援規定、規約一部改定、決算予算案と、次期役員の選出を行います。また綱領・規約の見直しを前進的にすすめる ことを呼びかけました。歴史をつくるのも、切り開くのも私たちです。積極的な討議で深めていただくことをお願いします。

 shinbun_1328_02shinbun_1328_03shinbun_1328_04shinbun_1328_05shinbun_1328_06

(民医連新聞 第1328号 2004年3月15日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ