民医連新聞

2004年3月15日

肥田会長の理事会あいさつ

 代議員ならびに総会参加者の皆さん、日ごろの奮闘ご苦労さまです。また、お忙しい中、かけつけていただきました来賓の皆さまに、この 場をお借りして、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。総会準備、総会成功のためがんばっている埼玉民医連の職員の皆さんにお礼を申し、総会 成功のため最後まで、ご協力をお願いします。
 ここで、この二年間に不幸にして亡くなられた職員五二人のご冥福を祈り黙祷を捧げます。

平和と憲法を守る運動を

 まず情勢についてふれます。イラク戦争に関して、アメリカの調査団のケイ団長が、大量破壊兵器はな かったと証言し、オニール前財務長官は9・11テロ以前から、ブッシュがイラクへ戦争をしかけることを計画していたと暴露しています。はじめから戦争あり きであったこと、ブッシュを支持する軍需産業や企業へ儲けや石油を含めた利権を与えるのが目的であったことが明確になってきました。なんの大義もないアメ リカのイラク攻撃にいちはやく支持を表明したのが小泉自公政権で、その上、自衛隊のイラク派兵を強行しました。これはアメリカの要請であると同時に、日本 の財界や支配層の軍事大国化の思惑でもあることをしっかり把握しておくことが大切です。まさに憲法と平和が重大な局面に立っていることを踏まえ、総会直後 から方針の学習とともに、憲法の学習活動を旺盛に展開し、職員・共同組織の人びとから地域にも広げ、平和と憲法を守る運動を旺盛にすすめることを議案で提 起しています。
 イラクでは劣化ウラン弾の影響で子どもたちに白血病が広がっています。バスラの教育病院長アル・アリさんは、イラク国民の中でガンが増えていることを報 告しています。民医連も参加する「自衛隊のイラク派兵に反対する医療人の会」が結成され、新聞意見広告、森住さんを招いての集会などのとりくみをしてきま した。このたび、医団連、新婦人、全労連などとともに「いのちと医療を守るイラク人道支援募金」を呼びかけることにしました。積極的にとりくみますので協 力をお願いします。
 また、平和委員会からはイラク現地調査への医師派遣が要請されています。この件については理事会で慎重に検討したいと思います。

事態に耐えうる経営へ

 さて、医療・社会保障の情勢では、今年、年金の改悪が行われ、医療・介護・福祉の分野でさらなる改 悪が企まれています。特に、診療報酬は二年後に抜本改定が行われる危険が強まっています。定額制の拡大、特定療養費制度の拡大、公的保険の縮小、一般・療 養ベッドの削減などが予測されています。今の政治状況が続くなら、強行される可能性は高いと考えられます。今総会でも提起しているように、どんな事態にも 耐えられる経営体質をいかに築き上げるかが問われる二年間となります。医療・経営構造の転換、とりわけ保健・介護・福祉分野への事業拡大をはからなけれ ば、医療分野での収入増は望めず、むしろ収入減を覚悟しなければならない情勢です。このことを踏まえた経営計画を職員・共同組織の英知を集め、つくりあげ なければなりません。

35期をふりかえって

 さて、三五期はどんな二年間だったでしょうか。
 一つは川崎・京都をはじめとした医療事故、事件の問題です。問題発生以後理事会は、民医連の病院に多かれ少なかれ内在している問題として捉え、医療の 質、民主的集団医療の質、管理運営の見直し、改善を提起しました。病院長会議や医療安全交流集会を開催し、安全モニターからの安全情報の発信などを行い、 転倒・転落や注射事故に関するパンフレットの発行、院内感染ガイドラインの改定など、医療団体の中では、先進的な活動をしてきました。このことに大いに確 信を持つと同時に、安全・安心・納得の医療を求め、人権が守られる医療を期待している国民の視点からみれば、まだまだ不十分という認識に立ち、さらなる改 善を続けることが必要です。
 二つは、医療・経営構造の転換の課題です。昨年八月の病床区分の手上げはクリアしましたが、転換という視点でみると不十分で、県連、法人間で格差があり ます。先にものべたように、転換の実現に向け、経営計画の確立と着実な実践が求められています。
 三つは、医師問題ですが方針のところでふれます。
 四つは共同組織強化の課題です。三〇〇万、五万の目標をともに達成することができました。そして今後一〇年間で四〇〇万、一〇万を提案しました。攻撃が 集中した川崎、京都でも共同組織は増えています。耳原総合病院の後に、セラチア菌の院内感染で死者を出した東京の伊藤病院は閉院を余儀なくされました。共 同組織なしに民医連の事業所の存続も発展もありません。共同組織を量・質ともに発展させることが必要です。
 五つは、医療・福祉宣言の実践の課題です。宣言はつくったが、実践はまだというのが実情ではないでしょうか。三六期を、宣言全面実践の二年として、全日 本をはじめすべての事業所でとりくみましょう。
 懸案であった非営利・協同研究所「いのちとくらし」も立ち上がり、活動を開始しています。「医療・介護の報酬制度のあり方」の答申をいただきました。今 後も様ざまな課題で協力していきたいと思います。
 また、五〇年の記念事業もアジアへの視察を除き、成功させることができました。
 医療事故・事件を口実に政権与党から攻撃を受けましたが、いわれなき攻撃に対しては断固とした反撃を行いつつ、医療界が抱える事故、ミスの改善に総力を あげてとりくんできました。全体的に評価するなら、三五期の方針、目標からみて、かなりがんばった二年間だと思います。しかし、これで安心といえる状況で はなく、弱点を克服し次につなげなければなりません。

36期のとりくむべき課題

 では三六期の課題は何でしょうか。この二年間で理事会として特に力を集中してとりくむべき課題として、医師問題と管理運営問題を掲げ、この二つの課題で前進を勝ち取ることを目標としました。
 医師問題については三五期の理事会合宿で集中討議を行いました。この間、医師問題は医学対、医師研修、医師配置、医師退職として議論されてきました。も ちろんそれらは重要な課題ですが、医師問題の解決には、医師管理が重要なカギであり、医師管理の習熟に成功せずして、この課題での前進はつくり出せないと の共通認識にいたりました。全国の様ざまな経験を結集し、この課題で前進をつくり出します。
 今年一八四人が新臨床研修制度のもと、民医連の研修病院で研修を開始します。この研修に成功するかどうかが、今後の民医連運動が発展するかどうかの命運 を握っているといっても過言ではありません。指導医を充実させる課題もありますが、研修病院の管理部、医師管理のトップ集団が研修に責任を持つことが、何 よりも大切です。
 管理運営の課題では、とりわけ大規模病院での管理運営の改善をはかるため、大規模病院管理者会議(仮称)を開催し、経験の交流、問題点の指摘など管理運 営の改善をしていきます。三五期開催したトップ管理者研修会を今期も開きます。今議案のなかで綱領・規約の見直しを提起しました。人権、非営利・協同、共 同組織など、今の時代に沿った記述が求められると考えていますが、医療・福祉宣言との関係を含め、時間をかけて慎重に検討していきたいと思います。
 その他の方針については、議案ならびに事務局長報告にかえます。

経営困難組織支援規定にふれて

 最後に経営困難組織支援規定についてふれます。詳しくは理事会提案を聞いていただきたいと思います が、私から一言いわせていただきます。医療事故、事件などの危機管理に関しては、この間の経験をもとに危機管理マニュアルをつくってきました。経営危機に 関しては、山梨、福岡・健和会の経験から要対策一〇項目をつくってきましたが、実際に経営危機になったときの規定はありませんでした。そして同仁会の前倒 産に直面しました。時間的に余裕がなかったこともあり、県連を越えて直接可能な法人に資金提供をお願いしました。県連・法人間で若干の混乱が生まれた所、 法人としての資金拠出が困難で理事長が退職金を前借りして拠出したりなど、組織としての対応に問題を残しました。この経験から、何らかの支援規定を持つこ とが必要との認識に至りました。当初連帯基金という提起をしましたが、全国から寄せられた意見を取り入れ、金だけでなく、人・物・金すべてを含む支援規定 としました。「自分のところはボーナスカットなど様ざまな経営努力をして経営をささえているのに、そんな努力もせず困難になった所に、なんでお金を出さな ければいけないのか」という意見があるのも承知しています。心情的にその気持ちは理解できます。しかし、それでその地域から民医連の事業所がなくなっても 良いということにはなりません。その地域の患者、共同組織、住民の民医連への期待や思いを消し去ることはできません。あるべき民医連の組織としてその地で 再生させることが、全日本民医連の役割であり、存在意義だと思います。
 代議員の皆さん、全国の英知を結集し、議論を深め、議案をより一層充実したものにしていただくようお願いして、理事会を代表してのあいさつとします。

(民医連新聞 第1328号 2004年3月15日)

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