民医連新聞

2004年4月5日

あなたの職場におジャマしま~す(1) 山梨勤医協・在宅関係事業所グループ

事業所合同でケースカンファ
「在宅患者の支援基地」です

 新連載。各地のちょっとユニークな事業所の様子や、働く仲間の思いを伝えていきます。

 甲府共立病院と甲府駅前共立診療所から数十メートルのところにあるワンフロア。そこに甲府共立在宅介護支援セン ター、甲府訪問看護ステーションすずかけ、甲府ヘルパーステーションすずかけ、甲府共立病院・医療福祉相談室(事務所)が集合しています。スタッフ総勢二 五人、在宅患者の支援基地です。今日は病院も加わり、「在宅ケースカンファレンス」が行われました。お邪魔したのは小林裕子記者。

 中央のテーブルに、司会の中込英利香さん(支援センター・ケアマネ)と、事例の発表者、林幸恵さん(駅前診療所・往診担当看護師)が着席。職員は二人を囲んで座りました。約一時間半、二つの事例検討をしました。

 介護度5、一級の障害者手帳をもつMさんの事例。Mさんの妻が主な介護者です。

 林さんはMさんの病歴や家庭環境を説明、「往診に行ったら、妻がドア越しに断り、家に入れてくれなかった。気になるので情報がほしい」とまとめました。

 「妻は、訪問した看護師やヘルパーとのお茶飲み話を楽しみにしていた。切り詰めた生活なのにお茶を出してくれ、 恐縮だった」「病院の未収がある、経済的な問題だろうか?」「障害者の医療費減免の対象になる。払い戻し手続きはできているか?」「書類の整理は苦手らし い。息子さんは平日、休めないし」「転居したことで、経済的に苦しくなってないかしら?」「富士山の見える家に住まわせたいという家族の希望で転居したそ うよ」…。

 「実は、Mさん宅でリハ学生の実習をした」と、理学療法士の落合一樹さんが言いだしました。

 拘縮してカエルの足のようになったMさんを、「何とか車イスで外に連れていきたい」というのが、妻の願いでし た。落合さんは、Mさんの足が収まる旧式の車イスを見つけ、リフトで移乗して、学生実習で外出を実現させたのです。妻は「五年ぶりのデート」と、とても喜 びました。

 カンファレンスでは、「一番困っていることから具体的に支援しよう。書類の整理ができないなら代理でやろう」という結論になりました。

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 セクションを超えて相談・報告・連絡し合う姿があちこちに見られます。でも、利用者の全体像を把握するケアマネと、一部分に深く関わるヘルパー、看護師など全員が集まるケースカンファレンスの場は重要なのだそうです

 中込さんは「困っていることをテーブルに乗せ情報交換することで、解決の糸口が見つかることが多い」と。林さんも「短時間の往診ではわからないことが多いので、これを始めてもらって、アプローチの仕方が見えた」といいます。

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 このフロアに最後に加わった事業所がヘルパーステーションです。石井富士子所長は「この地域は都市型で、独居の 人、処遇の困難な人も多い。一〇〇人一〇〇様に生きてきた利用者の家を舞台に、そのやり方を尊重して自立を支援し、生活をささえるのがヘルパー。うちは チームワークが自慢」と常勤スタッフ四人を紹介してくれました。

 ベテランの羽中田明美さん、堀井育代さん。若手の雨宮光枝さん、奈良亜希子さんです。「陽が当たらない仕事だけ れど、利用者は介護ヘルパーなしに一日も生活できない。訪問では業務マニュアル以外に、自分で考えることが多い。たいへんだけどやりがいがある」という雨 宮さん。奈良亜希子さんは、相談員をめざし、「下積みからやる」と希望し、療養病棟からここに異動しました。

 彼女たちは、利用者との関係づくりで、悩んだこともあったそうです。若いことを理由に断られたり、自立を促す行為が理解されなかったり、「人格障害」で常に人を罵倒し続ける利用者を担当したときです。「私の何が悪かったのだろう?」と苦しくなりました。

 そのとき自分の中にためず言葉にして出すことで、抜け出せました。「困難事例」としてケースカンファレンスに提示し、精神保健福祉士から、専門的で長期的な視点からのアドバイスを受け、救われた経験もありました。

 四つの事業所の寄り合い所帯はとてもにぎやか。どのセクションでも異口同音に、「顔を見てすぐ話せること」を利点に挙げます。「だから文書に残すことがおろそかになる。それに、頼まれたら断れない」という辛口の指摘も。緊張感と熱気を感じられる職場でした。

(民医連新聞 第1329号 2004年4月5日)

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