声明・見解

2008年3月19日

【談話2008.03.19】原爆被爆者医療分科会の「新しい審査の方針」について

2008年3月19日
     全日本民医連被ばく問題委員会委員長 聞間 元

 3月17日の医療分科会において、原爆症認定審査に関わる「新しい審査の方針」(以下「新方針」)が、厚労省健康局の主導のもとで承認された。
  「新方針」で、これまでの「原因確率」に基づく審査を改め、残留放射線の影響を広く認めざるを得なかったことは、集団訴訟をはじめとする被爆者、弁護団、 支援者のたたかいの成果であり、大きな前進であることを確認しておきたい。
  しかしながら「新方針」は、以下のような重大な問題点を含んでおり、長く原爆被害に苦しんできた被爆者の身体と心の救済にはほど遠いものと言わざるを得ない。

  1. 「積極的に認定」する被爆者の条件において、地裁で勝訴した原告被爆者の 一部を除外していること。これは医学的にも十分な審理を尽くして得た裁判所 の判断に、行政の判断を対置させる、無責任極まりない対応である。
  2. 「積極的に認定」する条件に、被ばくした距離や時間の限定と、申請疾病の 限定という二重の枠をかけていることは、被爆者の援護に関する法律で保障さ れている認定申請する権利を事実上侵害するものである。
  3. これまで数多く認定してきた肝機能障害や甲状腺機能低 下症を「積極的に認 定」する疾患から外し、「放射線起因性が認められる心筋梗塞」といった証明 不可能な条件を設定したことは、非がん疾患の認定に新た な線量しきい値の導 入を意図した「切り捨ての論理」と見なさざるを得ない。
  4. 積極的認定に該当しない場合の「起因性」の判断を、被曝線量、既往歴、環 境因子、生活歴等の総合的な勘案に求めたことは、判決でも批判された従来の 認 定審査の在り方から一歩も踏みだしていない立場であり、与党プロジェクト が求めてきた「現実的救済措置」の実現、「積極的かつ迅速な認定」の精神に も 反している。

 以上見たように、今回の「新方針」によっても現在行われている集団訴訟が全面的な解決をみないことは明らかである。全日本民医連被ばく問題委員会、原爆認定訴訟支援医師団は、引き続き裁判の勝利と完全解決のために全力をあげるものである。

以上

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