いつでも元気

2008年11月1日

特集1 選挙に行って悪政を治そう! 私もひとこと

「後期高齢者医療制度」廃止にするチャンス

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9月9日「全国一斉9条守れ」行動で、平和への願いこめて(長野中央病院屋上から。撮影=長野医療生協・新村紘士通信員)

 いよいよ解散総選挙です。
 福田氏が首相辞任を表明し、麻生新首相が誕生。秋の国会論戦を目前にした辞任劇は二代連続で、「無責任だ」と批判がわき起こりました。

聞こえぬ反省の声

 しかし福田氏も麻生氏も、首相辞任に追い込まれた本質を語らず、反省もしていません。
 福田氏が首相辞任に追い込まれたのは、自民党の政治路線が国民の願いと相容れず、矛盾が深まっているからです。ガソリン高騰にあえぐ家計を横目にガソリ ンの暫定税率継続を押し通したり、悪評高い後期高齢者医療制度を「よい制度だ」と言い張り、小手先の手直しを繰り返したり。
 国会運営が行き詰まったのも、昨年の参議院選挙で野党が多数になった背景にある「生活を何とかしてほしい」と願う国民の声に反することを続けてきたからです。国民の声と真逆のことに固執した政治路線こそ問われるべきです。

消費税10%!?

 ところが、麻生新首相は早くも「消費税一〇%」をいい出す始末。後期高齢者医療制度についても九月一九日、舛添厚労相が「大胆に見直す」、かわって「新 しい制度をつくる」といったものの、数日後にはあっさりと自公の間で、制度存続の合意をするなど、無責任にゆれ動いています。
 問題はどこから税金をとり、どこに使うか。空前の大もうけをしている大企業には税金をまけ、アメリカいいなりという政治を変えないかぎり、国民生活は守れなくなっています。
 解散・総選挙は、国民の願いを国政に届ける絶好のチャンス、悪政を治すチャンスです。
 日本の政治に何を求めるか、思いを五人に語ってもらいました。

高齢者の衣食住
「棄民」政治といいたい!!

埼玉・小松静子さん
(医療生協さいたま組合員)

 いまの日本は、富を生み出さない人間はいらない、「早く死ね」という政治をしています。後期高 齢者医療制度は「姥捨て山」制度だと批判されていますが、それでは生やさしいですよ。姥捨ては、絶えがたい思いで息子が親をおんぶして、山に置いてくるん ですから。私は「棄民」だと思います。戦前、国は満州やブラジルへ移民をすすめながら、あとは「野となれ、山となれ」だったでしょ!!
 近所でお話すると、長生きしていてはいけないと思っているお年寄りがたくさんいます。年金からいろいろ引かれるでしょう? 介護保険料も引かれて、後期 高齢者医療制度の保険料も引かれる。息子夫婦といっしょに暮らしていれば、生活費に使えるお金が減って、お嫁さんに申し訳ない気持ちになる。
 病院も以前は「三カ月経ったら追い出される」といわれていましたが、いまでは入院したとたんに退院の話をされます。在宅で療養しろといっても、療養する 部屋もない。家族は日中、働きに出ている。療養病床も減らされています。
 議会の役割はまず、私たちの税金を国民の命や暮らし、教育などを守るのに使うことなのに、まるで逆です。保険料を年金から天引きするなんて、うまいこと 考えましたね。国保料を払えずに滞納している家庭の扶養家族からも、確実にお金がとれる。誰が考えたのかしら。考えた人の親の顔を見てみたいです。
 私たちの世代は、戦前、戦後と激動の時代を生き抜いてきました。日本国の発展は自分たちの力だと誇りに思っています。気がつけば後期高齢者と命名され、棄民されたようでくやしいです。
 社会保障の財源がないとマスコミもいっています。国民に「消費税しかない」と思わせようとしている。おかしいですよ。お金はあるところにはある。軍事費にだって無駄なお金を使ってるじゃないですか。
 私は、ベンツがほしいわけでも、ごちそうがほしいわけでもありません。誰もが三食食べられる、雨漏りしない家に住める、病気になってもお金の心配をしないで医療が受けられる。この三つを保障する政治を望みます。

後期高齢者医療制度、消費税に対する各政党の態度
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“生きてきてよかった”と思える社会に

医療崩壊ストップ
小手先の改革やめよ
石川・斉藤典のりとし才さん
(城北病院外科医師)

 福田首相が辞任し、麻生新首相が誕生した。自民党総裁選では五人の候補者がそれぞれの持論を展 開したが、違いは、「社会保障費自然増二二〇〇億円の削減方針を撤回」と、過去の政策の転換をはかろうとするか、「改革をとめるな」と相変わらず小泉人気 にあやかろうとするかくらいしかなかった。
 前者はいままでの自民党政治の「痛みをともなう改革」により国民の生活を脅かしてきた結果、これ以上国民の生活がもたないとの判断だろうが、それだけで は問題は解決しない。医療や社会保障、ガソリン・食品の高騰、教育費の高騰、生活保護費の削減、金持ちに優利な税制、など問題が複合的に作用していて、そ れらに大鉈を振るわなければ解決しないことに気付いているのだろうか。
 一方、後者は「改革」の方向性によっては、国民が更なる危険にさらされてしまうことが分かっているのかと問いただしたくなる。医療・社会福祉や教育、食料という問題は、国民の生活の根幹にかかわる問題である。
 そろそろ小手先だけの改革や、一握りの人に富を過剰に与えるような制度改革はやめたらどうか。もう医療現場は限界にきていて、医療を頼りにする国民にも不利益が生じている。
 医療が崩壊している一番の原因は、これまで進めてきた医療費抑制政策であり、医師・看護師の不足による医療者の疲弊である。もっと医師、看護師を増員し て現場を手厚くし、診療報酬も引き上げ、経営にゆとりを持たせられる医療制度に変えないと、小手先だけの改革をしても結果は見えている。
 財源問題で政府は、借金は国と地方あわせて八〇〇兆円以上あると強調するが、実際には年金の積立金などをふくめた金融資産も五〇〇兆円以上持っている。 「特別会計」という国民にとって不透明な財源の中にかなりの運用可能な財源が存在していたり、また日本の政策に対するアメリカからの新自由主義的な発想に 基づく「対日年次要望書」というからくりが存在することもふくめ、国民は少しずつ分かってきている。
 これ以上国民を欺くことなく、真摯な態度で政治をおこなうよう強く要望する。

介護現場では
必要なサービス削るな
東京・吉田 道さん
(ヘルパーステーション虹所長)

 利用者様には気がかりな方が多いです。知的に遅れのある息子さんと二人暮らしの認知症の方は「家族と同居だから」という理由で介護サービスが制限されました。いつ倒れてもおかしくありません。
 最近はこんなことがありました。超高齢の親御さんを介護している方がふいにやってきました。「母を役所に置いてきた」(!)というのです。ふだんは一生 懸命に介護をなさっている方です。希望していた介護サービスを役所から削るよういわれ、「そんな事をいうなら、介護してみろ!」と、お母様と水分補給のた めのお茶を残してきた、と。
 驚いたスタッフが役所にゆくと、フロアの片隅にお母様、その隣に担当職員が座って泣いていました。
「介護の社会化」という介護保険の最初のかけ声はどこかにいき、その方に必要な介護と現実の違いに悩んでしまいます。ヘルパーになる時「QOL(クオリ ティ オブ ライフ)」を大切にしよう、と学びました。気づけばいまは誰もQOLを語らないし、書類からもその文字が消えています。利用者様に「これから どう生きたいですか?」とはききません。「お掃除は週一回でがまんしましょう。ホコリじゃ死にませんからね」といわないといけない。「とにかく生きていけ ればいい」という介護しかありません。保険で受けられるサービスに制限があり、「これ以上の介護を望むなら、自費でどうぞ」という。なんてズレた制度で しょう。
 事業所や働く側も厳しいです。私たちの法人にはヘルパーステーションが五カ所ありましたが、〇六年の介護保険見直しの影響で収入が減り、三カ所に縮小せざるをえなくなりました。
 あるヘルパーさんが「自分が人の役にたっていると思うと元気になる」と、話していました。福祉で働く人の多くがそんな人柄でしょう。でも国はそこに甘えるべきではありません。
 現場は猫の手も借りたいほどの忙しさですが、働きにきてくれる人がいません。介護職のなり手が減っていると痛感します。食べていけないとわかっていて若い人は来られません。
 介護にもっと予算をまわしてほしい。
 次の春にはまた介護保険の見直しがあります。どんな風に変わるか、残念ながら「利用者負担二割」だとか、「介護予防は保険からはずす」といった噂ばかり。
 人間が大事にされない社会はイヤ。私が話したことは、日本中のヘルパーさんたちみんなの声だと思います。介護問題はぜひ、選挙で大きな話題にしてほしい。

介護職員の割が離職

 

全体

正社員

非正社員

全産業

16.2%

13.1%

26.3%

介護職員

21.6%

20.4%

32.7%

ホームヘルパー

18.2%

16.6%

〈平均月収は〉
介護職員22万8900円
訪問介護員13万2500円
(介護労働安定センター、2007年度調査、左表も)


米軍再編許さない

新基地建設必ず中止に
沖縄・東江(あがりえ)英明さん
(沖縄医療生協名護支部)

 二代続けての政権投げ出しは、自公政治の政権担当能力の失墜。人も政策も行き詰まっています。
 あげくの果ては「総裁選劇場」でマスコミも利用して新首相を選び、正体不明のまま総裁選の「勢い」だけで解散総選挙をおこなって“白紙委任”を国民に押 しつけようとしています。政治の中身が問われる総選挙ではないでしょうか。
 私たち沖縄医療生協名護支部は、「健康をつくる。平和をつくる」を活動理念として、何よりも「平和あっての生協活動」と、小さな支部ですが辺野古への新基地建設反対に全力をあげています。
 全国の医療生協、全国の民医連の物心両面の大きな支えや全国の有志との連帯したたたかいによって、十数年間、海上に杭一本打たせていません。私たちのたたかいが政府のスケジュールを大きく狂わせています。
 今後の展開は、環境調査を経て準備書広告縦覧と意見書のたたかいが山場となります。前回は四〇〇の意見書をあげることで工事を一年間遅らせました。今度 (二〇〇九年二~三月)は前回を上回る一万人規模の運動が必要です。私たちは、一カ月、一年と、作業を遅らせることで国の計画を頓挫させることができると 確信し、とりくんでいます。
 一方で、名護をはじめ、沖縄県北部(やんばる)の医療過疎がすすんでいます。県立北部病院の産婦人科と二診療所が休止となり、僻地・離島などの救急医療 を担う「救急ヘリ」運行も最近休止となりました。まさに国の医療政策の破綻です。
 そのうえ憲法の生存権・法の下の平等を否定する「後期高齢者医療制度」など、もっての外です。
 先の沖縄県議会議員選挙では野党が多数を占め、県議会は大きく流れを変えました。県議選挙の流れを解散総選挙、那覇市長選挙につないで、二〇一〇年の名 護市長選挙(一月)、県知事選挙(一一月)の勝利を今度こそ勝ち取り、米軍再編と新基地建設を必ず止めさせたいと思います。

ヤッパリ、変えなくっちゃ!

リハビリ受難
医療を国民の手に
北海道・日向(ひなた)雅代さん
(北見病院理学療法士)

 リハビリはこの数年受難続きです。二〇〇六年四月にはリハビリの対象疾患を四つに分け、病名でリハビリ日数を制限するという医学的根拠のまるでない改定がおこなわれました。
 さらにこの一〇月からは、「回復期リハビリ」に成果主義を導入するというのです。成果主義といえば、企業戦士がバリバリ働いて大仕事を取って、給料アッ プで「カッコいい生活!」、はたまた野球選手の「ホームラン何本で年俸ン千万円!」というような感じでしょうか。
 仕事バリバリはケッコーですが、うまくいったら報酬アップというシステムを医療に持ち込むのは如何なものか。
 厚労省の考えは露骨かつ単純で「障害を持ったら、リハビリして、よくなってうちに帰るのが一番。リハビリを効果的におこなえる(成果が上がる)病院はい い病院なので診療報酬を上げます。成果を上げられない病院はよくない病院なので、やめたら?」というものです。
 実際は、そんなに単純ではありません。一つ目、本人も医療側も一生懸命リハビリしても元通りよくならないこともある。二つ目、よくなったとしても必ずしもうちに帰れるわけではない。
 こんな現実なのに、退院して介護施設などへ入所した場合、回復期リハビリの成果とは認めない。患者さんの六割以上が自宅へ帰らなければ報酬を下げるとい うのです。これでは低い自宅復帰率→低い報酬→職員配置が減る→「成果」上がらず→さらに報酬が低くなるという悪循環となり、回復期リハビリを継続できな くなります。
 では、どうする? 回復期リハビリ病棟にはリハビリの効果が上がりそうな(よくなりそうな)患者さんだけを入院させるという、患者さんの選別が起こって くるのは火を見るよりも明らかです。医療制度を医療人の手に! 医療を国民の手に! と声を大にして訴えたい。
 民医連は制度改悪に抵抗してがんばってはいるものの、日本の社会・政治の中で私たちが患者さんを守るためには、ヤッパリ、変えなくっちゃなりません。政治の中身を!

いつでも元気 2008.11 No.205

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