いつでも元気

2008年11月1日

地球温暖化を止めよう(8) 動き始める日本の市民 …太陽光発電

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筆者:和田武(わだ・たけし)
 1941年和歌山生まれ。立命館大学産業社会学部元教授。専門は環境保全論、再生可能エネルギー論。「自然エネルギー市民の会」代表、自治体の環境アド バイザーなど。著書に『新・地球環境論』『地球環境問題入門』『市民・地域が進める地球温暖化防止』『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』(世界思想 社)など多数。

 日本でも再生可能エネルギー発電は温暖化防止や原子力発電からの脱却、持続可能な社会をめざす ために欠かせません。でも、発電にかかる費用が割高になるので、電力会社が率先して導入することはあまりありません。「もうけ」ではなく「環境保全」や 「温暖化防止」のために動く市民のとりくみが、普及のカギを握っています。前回お話ししたとおり、日本にもそうした市民が多数います。
 太陽、風力、バイオ、小水力など多岐にわたる再生可能エネルギー利用の国内でのとりくみを、今後みていきます。今回は太陽光発電について。

■膨大な太陽光のエネルギー

 地球に降り注ぐ無尽蔵の太陽エネルギーを拝借するのが、太陽光発電です。将来の発電の中心的役割を担うものと期待されています。
 1時間で約125兆kWhの太陽エネルギーが地球上に届いていますが、その規模の大きさといったら! 2005年1年間の世界の1次エネルギー総量 (120兆kWh)より多く、同年の年間総発電量18.2兆kWhの約7倍にも。もっとわかりやすくいえば、ゴビ砂漠(世界の砂漠面積の約3%)の全部に 太陽光発電を設置すれば、その発電量で全世界の電力まかなえるといわれているほどのパワーなのです。
genki205_05_01  新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)は、日本国内の建物や空き地などで太陽電池が設置できる規模を割り出し、そこから約80億kWの可能性があ る(潜在量)といっています。2030年には最大2億kW程度、日本の年間発電量の約20%にあたる量です。技術向上などを見越せば将来的には日本でも、 太陽光だけで電力がまかなえる可能性があります。

■日本は世界2位

 06年度の日本の太陽光発電の導入量は142万kWで世界2位。92年から、電力会社に太陽光発電の余剰発電ぶんを買い取らせるしくみが整備されたこと と、政府が住宅用太陽光発電の設置に補助金を出したことで市場が生まれ、量産がすすんで2004年までは世界1の普及国でした。
 しかしこの政府の補助は05年で終了。市民による住宅設置が減少し、普及は停滞しています。1位のドイツでは太陽光発電電力を電力会社が20年間も高価 に買ってくれる制度があり、日本の2倍以上に普及が進んでいます。つい最近、政府が補助再開計画を打ち出しましたが、「設置は補助が出るまで待つ」という 人も続出しています。

■活用の実際。個人で共同で

genki205_05_02 では、どんな風に活用されているのか。我が家の周囲を高台からみただけで、太陽エネルギーを使った発電設備などが小さなものから少し大きいものまで確認できました(写真)。 このように発電機を設置している家庭は日本に約40万世帯もあります。自分たちで使う電気の一部を太陽光発電でまかない、足りない分は電力会社からの電気 を使います。日照条件がよい時期など使いきれずに余った電力は、系統を通して送電線に逆流し、電力会社が買い取ります。マンションのベランダなどで発電す る独立蓄電型を設置する家庭も出てきました。

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屋根に太陽光発電のパネルをつけたポッポ第2保育園(大阪)。筆者が代表をしている自然エネルギー市民の会が寄付と出資協力金で設置した

 市民共同発電所のスタイルでも太陽光発電が運用されています。設置場所は保育園や学校、お寺など、公共的な性格をもった施設が大半です。07年9月時点 までに3万人が寄付や出資をして、全国165基、設備容量で1040kWになっています。 
 設備の設置費用は寄付や出資で捻出します。多くの人が無理なく参加できるようなしくみを考案した組織もあります。NPO法人きょうとグリーンファンドで は、会費の一部と寄付を積み立て「おひさま基金」にし、設置プロジェクトごとで募った寄付金(1口3000円程度)とあわせて、太陽光発電所をつくってい ます。これまでに2000人が参加して11基つくりました。
 家庭で使われない不用品をリユースショップで販売し、その売り上げで学校などに太陽光発電を設置しているのが東京のNPOエコメッセ。学校区の市民の幅 広い協力で廃品回収から得た資金を元手に、中学校に太陽光発電を設置した静岡県掛川市のNPO(エコロジーアクション桜が丘)も。ここでは学校が災害時の 避難所に使われる場合、緊急用の電源として各教室で使えるように配線しています。停電時の緊急連絡にも使います。
 これらの発電所は、子どもたちや地域住民が環境問題への関心を高め、再生可能エネルギーを理解するよい機会にもなっています。

次回は風力発電についてです

ミニ解説

日本人の環境問題への関心… 08年頭に毎日新聞の世論調査で、温暖化問題に「関心がある」人は89%で「ない」は4%だった。「温暖化防止のために生活レベルを下げられる」とこたえ た人は49%、「できない」の41%を上回った。環境税にも47%が賛成、日本がなすべきこととして「風力発電や太陽光発電に補助金を出す」(41%)が 最多、「経済成長を犠牲にしても、排出を抑制」も14%。一方、原発増設に「賛成」は39%で「反対」の50%を下回った。

太陽光発電…シリコン半導体などからつくる太陽電池に太陽光をあてて発電する方法。1954年にアメリカで発明され、人工衛星や灯台、電卓などに使われてきた。技術の進歩で性能が向上し価格が下がり、住宅用などの発電システムとして利用されるようになった。

系統連係と独立蓄電型…家庭に設置されてい る太陽光発電の多くがとる形式が「系統連係」で、太陽光発電システムを電力会社の送電網につなげたものである。一方、独立蓄電型(独立型)は、系統連係を せずに発電した電力を、バッテリーなどに蓄電するなどして直接使用する。独立型はパネル1枚でも利用できるので、小規模ながらベランダなどで発電可能。費 用も比較的安い。

いつでも元気 2008.11 No.205

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