いつでも元気

2009年1月1日

特集1 新シリーズ 元気ネットワーク 健診ボランティア大活躍 受けやすさが好評! 自信をもっておすすめします

大阪・医療生協かわち野「健診大受診運動」

 二〇〇八年春から「特定健診・特定保健指導」がはじまり、健診制度が大きく変 わりました。全国の医療機関では、健診件数の激減、収益も落ち込むなど、大きな影響が出ています。しかし、医療生協かわち野生活協同組合(大阪)では、こ の健診を医療活動の柱に位置づけ、元気に「健診大受診運動」にとりくんでいます。

出張検診
年間106回も開催できたのは?

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健診開催の「お知らせポスター」を目立つところに

 大阪府東部、医療生協かわち野は、中小企業が多く集まる東大阪市、八尾市などを診療圏としている法人です。
 東大阪市内の公民館を会場におこなわれた出張健診。受付時間の三〇分前だというのに、もう長い列ができていました。
 出張健診は、東大阪生協病院が東大阪市から委託を受けて実施している事業です。この健診、二〇〇七年度は市内各地で、なんと年間一〇六回も開催しました。どうしてこれだけとりくむことができたのでしょうか?
 職員の力だけではとても実施できません。ここには「健診ボランティア」という力強い存在があったのです。
 まず健診会場です。それぞれの地域の支部・組合員さんが自ら確保。会場近辺に案内チラシと検尿容器を一〇〇〇~一五〇〇組配布します。なかには健診開催の「お知らせポスター」を商店街や街角の目立つところに張る支部や、訪問や電話で呼びかける支部もあります。

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書類確認や説明で受付は混雑

 そして当日。健診機材の搬入・設置はもちろん、受付や案内、尿検査、身長、体重、体脂肪測定などを分担しておこないます。会場で簡単な結果を説明しなが らドックをすすめたり、組合員加入のお誘いや署名のお願いまで、「健診ボランティア」がテキパキとこなしています。
 健診に来た人は、やはり「自宅に配られていたチラシを読んで」「街角のポスターを見て」という方が多いようです。
 「昨年受けてまた今年も…」というリピーターが多いのも特徴です。
 定期的に健診を受けているという楠田和子さんは「ここの出張健診を初めて受けたとき、初期の胃がんが見つかったんですわ。すぐ病院を紹介してもらったの で、大事には至らず治療できました。それまで自覚症状はなかったのでびっくりでした。あのときここに来ていなかったら、重症になっていたかも…」と、信頼 を寄せます。近所で受けやすいというのが好評で、次から次へと…口コミで広がっているようです。
 一方で、仁田浩史健診課長はこんな現状を指摘します。「制度が変わる前にと、昨年度私たちは出張健診を大きく広げましたが、今年度は厳しい現実もありま す。とくに心電図などこれまであった検査項目が外されたり、「受診券」などの書類も複雑になりました。スタッフも書類確認や説明に時間がかかり大変だし、 健診を受ける人もとまどうのでは…」

地域まるごと健康づくりは私たちの手で

日曜半日ドック
ドックへの期待は大きい

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開始前から長い列が…

 もう一つ力を入れているのが「半日人間ドック」。「低料金で、短時間に全身チェックができる」健診を組合員に提供しようと、一九八六年から始めました。 自治体健診制度の活用と組合員拡大運動を一緒に進め、いまでは利用者が年間一万二〇〇〇人に。早期発見・早期治療の「病気を探す健診」にとどまらない、 「健康づくりにつながる健診」をすすめています。
 当初は平日のみでしたが、予約件数の増加にともない、「もっと受けやすい条件に」と、日曜日も実施しています。一回あたり約一〇〇人が予約する大盛況。病院では月二回、診療所とあわせて年間五〇回超実施しています。
 東大阪生協病院での「日曜半日ドック」をのぞいてみました。
 目を奪われたのが、朝の打ち合わせでズラッと並んだ「ボランティア」スタッフ。担当を確認し、それぞれの持ち場へつきます。血圧測定担当の日好春子さんは「家でテレビを見て過ごすよりいいよ。手伝いながら、ここで健康について一緒に考え、話ができるのが楽しい」と。
 医療行為を除く、受付や誘導はすべて組合員さんがします。回数をこなしているだけあって、対応もスムーズ。検査を受けに来た人の不安を包みこむかのように、常に笑顔をたやしません。まさに「自分たちでこの地域の健康を守る」という意気込みを感じます。
 医療生協かわち野は、二〇〇七年度、東大阪市自治体健診の占有率が、基本健診で二四・八%、大腸がん検診四八・八%、胃がん検診五一・三%、乳がん検診 四一・六%と驚異的です。「ドック紹介カード」を使って組合員が健診を紹介すると、一件五〇〇円の還元金が支部に入るというユニークな試みも(〇七年度は 一三二三件)。まさに「健診大受診運動」が地域の健康づくり、市民健診の受診率向上へと貢献してきたのです。
 ここでドックを受けるのが二回目という田中明美さんはこう話します。「最近は残業が続き、あまり休みもとれていません。同じようにがんばってきたまわり の人が、仕事中に脳梗塞で倒れたり、心の病にかかったり。私も二年ほど前に初めてここで受けたとき異常がみつかり、職場にすぐ連絡があって大きな病院での 再検査をすすめられました。素早い対応がホントによかったです。費用もまとめて五〇〇〇円。めちゃめちゃ安いですよ!」
 今回が初めてという繁岡真美さんは夫婦で来院。東大阪市の乳がん検診、三〇歳以上対象の子宮がん検診を受けるそうです。「市から乳がん検診のお知らせと 受診券が届いたのです。自宅から近いし、マンモグラフィーも受けられるからいいなぁと思って…。受けたいと思っている人はたくさんいますよ。でも費用がか かるし、きっかけがないとなかなか受けにくいでしょ。地域に知らせてくれる、こんなとりくみはいいですよね」
 また、母親の紹介で初めて生協病院でドックを受けるという岩谷真由美さんは娘さんをつれて親子三世代、家族での来院です。「乳がん(マンモグラフィー検 診)、子宮がん検診は市の制度だと隔年で、しかも有料です。ここは組合員であれば毎年無料でできるんですね。年齢とか制度にあまり左右されないここの検診 内容の充実に興味をもちました。日曜にやってくれるのもうれしい」。「私は毎年ここで受けています」と、母親の恵美子さんはうれしそうです。家族やご近所 で誘いあわせて…という人が多く、地域のつながりを感じました。
 「いまでは事業収益に占める健診の割合も一二%を超え、結果的に健診は経営改善にも貢献しています。でも私たちは、健診を増やすというのが最終目標では ありません。『この地域の住民が健康で元気に生活していくためには何をしたらいいのか』と考えてみた結果、この地域での保健予防、つまり健診活動に行き着 いたのです」と、吉田満組織部長はいいます。

元気のワケは?
健康づくりの主役は私たち

 職員と一緒になって、健診活動や共同組織の拡大に奮闘している八尾地域の組合員さんたちに「どうしてこんなに元気に活動できるのか?」と質問すると、こんな声が返ってきました。
 「まず費用が安い。健診項目もシンプルでわかりやすいでしょ。しかも内容が充実しているから、自信をもっておすすめできる」「健診ボランティアや健診の お誘いを通して、医療者と受診する人のあいだに私たちがいるんだと実感できる。健診拡大にやりがいを感じるから」「誰でもそうだけど、イイものは誰かに話 したくなるでしょ。『大阪のおばちゃん』の口コミはすごいのよ」…と、にぎやかな話は尽きません。
 吉田さんは、こう語りました。
 「特定健診受診券の混乱や利用者の負担金増を背景に、全国的に健診活動は苦戦しています。しかし、健診内容の充実や利用しやすい条件をつくれば、健診は 増やすことができます。かわち野では〇八年度、新たに協会けんぽ健診も始め、ドックとあわせて前年比一〇六七人(一〇月末現在)の受診者が増えています。 もちろん健診やドックを運営するには、組合員の主体的な参加が必要です。だからもっと地域に出て、この健診を受けてもらう人を増やし、そして賛同し、協力 してもらえる仲間を増やしていく運動がいま必要なんですね。私たち職員はあくまでも援助する立場です。やはり共同組織、組合員のみなさんがこの地域の主人 公です。そこに『健診大受診運動』の真髄があります。自分たちが健康をつくっていこうという視点をもち、実践していくことが大切なんですわ」
文・井ノ口創記者/写真・豆塚猛

いつでも元気 2009.1 No.207

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