いつでも元気

2009年2月1日

後期高齢者医療制度 廃止法案の徹底審議を さもなくば解散して国民に信を問え

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後期高齢者医療制度に“レッドカード”(後期高齢者医療制度の廃止を求める東京大集会で)

 後期高齢者医療制度に対する国民の怒りに自公政権は右往左往。参議院で可決した廃止法案は店ざ らしのまま、保険料を当面半減する手直しで選挙をやりすごそうとしています。しかし医療内容を制限する差別的な診療報酬や、「受益者負担」など制度の根幹 は見直そうとしません。高齢者が増えるとともに自動的に保険料が上がるしくみや、滞納者の保険証取り上げなどはそのままです。
 国民が求めているのは、手直しではなく廃止です。昨年一二月一四日、「後期高齢者医療制度の廃止を求める東京大集会」が都内で開かれ、冷たい雨のなか、五〇〇〇人(主催者発表)が駆けつけました。

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降りしきる雨にも負けず(東京大集会で)

 集会が始まってからもしばらく続いた雨。「来るのをやめようかと思ったけど、やっぱり来た」と話す、東京都北区(ほくと医療生協組合員)の山田幸子さん (79)。お母さんと二人ぐらしの山田さんは、国民健康保険に加入していた一昨年と比べ、保険料が一〇万円以上も跳ね上がったといいます。
 お母さんの年金からも保険料が天引きに。「少ない年金からもお金をとるなんて。九六歳の母も怒っていますよ」
一二月一六~一九日には、厚労省前に座り込む高齢者らの姿が。予算編成の時期に、老後保障地域団体連絡会(老地連)が毎年おこなっている座り込み。〇八年 のスローガンは「後期高齢者医療制度はキッパリ廃止せよ!」。東京都老後保障推進協会事務局長(三多摩健康友の会員)の坂本光治さん(79)は、保険料が 医療・介護あわせ、夫婦で七~八万円も増えたといいます。
 「二カ月で保険料が四万円も引かれる。おかげで食費も節約。カップラーメンさえ、高くて食べられない。首相は飲み食いで二~三万円は『安い』、カップ ラーメンが『四〇〇円くらいかな』という。私たちの気持ちはわからないでしょうね」

「生きざま」かけたたたかいが

 一二月、後期高齢者医療制度への不服審査請求が、全国で一万一九九人に達したことがわかりました。「『日本の復興のためにがんばってきたのに、この仕打 ちは何だ』という怒りが、不服審査請求の原動力になった」と中央社会保障推進協議会(社保協)の相野谷安孝事務局次長。
 不服審査請求では、なぜ制度に異議があるのか、口頭で意見を述べることができます。石川社保協では、これを「口頭意見陳述集」にまとめました。
 戦中は特攻機をつくる会社で「天皇陛下のために」と信じ、戦後も「お国のためだ」とがんばったと語る浅藤由松さん。工場で空襲にあい、「私は非常に卑怯だけれども、逃げ回って助かった」と思いを語り、こう述べています。
 「思い出したのは、戦争中によくいわれた『非国民』という言葉です。わしら、いよいよ国民から外された、非国民にされたんでないかな、と思う。七五歳以上は健康を守ってやろうというお上の気持ちはなくなったんだな、という非常に悲しい思いをしました」
 山下茂さんは、「明治・大正・昭和の、激動の時代の歴史の生き証人。この人たちに対する取り扱いがこれでいいのか」と。
 「戦前、戦中、戦後を通じて、国民は何回も国民切り捨ての棄民政治を受けました」と語るのは、森昭さん。後期高齢者医療制度は「お棺を横付けにして早く死ねといわんばかりの制度」と断じます。
 人生をかけた怒りがそこにはありました。老地連・後藤迪男事務局長は、「天引きされたとか、保険料が高いとか、それだけが問題ではない。生きざまがかかったたたかいなんです」と強調します。

「構造改革」に風穴を

 こうしたたたかいが医療・介護崩壊打開、自立支援法廃止の運動などとともに世論を動かしました。小泉「構造改革」の柱のひとつが「社会保障費の自然増二 二〇〇億円を毎年削減する」方針。二〇一一年まで削減する閣議決定は撤回しないものの、政府も問題にせざるをえないところまで追いつめられています。
 後期高齢者医療制度の創設者の一人・厚労省の土佐和男国保課課長補佐(当時)は制度創設の目的について、「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高 齢者が自ら自分の感覚で感じ取っていただく」ためといい放ちました(昨年一月)。自分の健康は自分で守れ、と健康も「自己責任」にする「構造改革」のねら いそのもの。
 その「構造改革」路線がいま、岐路に立たされています。「制度廃止の運動は、『構造改革』路線に風穴を開ける運動です」と相野谷さん。
 制度廃止法案は、秋の臨時国会では審議は一日のみで、年が明けたこの通常国会でも継続審議になっています。「廃止法案を審議・可決せよ、審議しないなら解散して国民に信を問えと追いつめましょう」と全日本民医連の湯浅健夫事務局次長。
 前述の坂本さんは、寒空の下で座り込みをしながら、こう話してくれました。
 「去年と比べると、反応がまったく違う。今日だけでも一〇人以上が『がんばって』と声をかけてくれました。カンパをしてくれる人も何人もいますよ」
 記者の取材中にも、仕事帰りらしい人が、三〇〇〇円も寄付していきました。
 経済効率一辺倒ではなく、人間の命と健康を第一に考える政治の実現を。いまが政治転換のチャンスです。
文・多田重正記者/写真・酒井猛

いつでも元気 2009.2 No.208

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