いつでも元気

2009年2月1日

元気ネットワーク 命のステッカー 待っていてはダメ、地域に発信しよう

 命を守る医療費が心配で病院・診療所にかかれない方はご相談を」の下に、近くの民医連の病院・診療所の電話番号が書かれた「命のステッカー」。北海道から始まって、全国各地で、このステッカーを張り出すとりくみがすすんでいます。京都民医連では…。 写真・豆塚猛

genki208_06_01東山診療所

「ワッペン見てきたんやけど」

 東山診療所は、このステッカーを三〇〇枚つくり、昨年、友の会と協力していっせいに張り出しました。
 友の会役員の佐藤由紀子さんも自宅前に張りました。すると数日後、診療所とは縁のなかった近所の奥さんがやってきて、おそるおそる「ワッペン見てきたん やけど、主人が血尿で…」と。佐藤さんがすぐに診療所に電話をすると、その間も拝むように手を合わせています。
 スタッフが駆けつけ、病院嫌いのご主人を説得し、診察すると末期の膀胱がん。覚悟を決めての入院となり、残念ながら二週間後に亡くなりました。

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友の会員さんが自宅に張り出して

 児島寛事務長は「最期のときを安らかに過ごせて、ご家族にはとても感謝されました。早く受診しておられたら、と残念でなりません。でもこの経験で、ステッカーには受診をためらっている方を勇気づける力があると確信できました」。
 東山診療所界隈は伝統ある清水焼の職人のまち。診療所も職人さんたちが資金を出し合って作りました。でも最近は、値の安い品物に押され、厳しい状態。そ のうえ東山区の高齢者率は、京都市内一位。後期高齢者医療になって、さらに診察を控えたり中断する人が出ています。
 診療所、友の会は「待っていてはだめ。こちらから積極的に働きかけていこう」としています。「このステッカーは、医療・介護の崩壊や貧困に立ち向かう仲間のきずなです」と児島さん。
文・清原巳治(『元気』編集委員)

京都民医連第二中央病院

カンファレンスを重ねるなかから

 第二中央病院では友の会と一緒に、「命を守る」ステッカーを一〇〇〇枚、地域に張り出しています。

ネットカフェや大家さん宅にも

 張り出しのお願いには、二四時間営業のファストフード店やネットカフェ、コインランドリー、高齢者が多いアパートの大家さんなども訪ねました。目につくところに張るのはむずかしくても、「これがあると安心や」と喜ばれています。
 ネットカフェでは店員さんに、「あの方は大丈夫か、と不安になるお客さんもおられ、ステッカーはとても心強いです」と感謝されました。
 実際、自宅で生活できなくなり、ネットカフェで一カ月間、ジュースだけで過ごしていたという患者さん(五〇代)がいました。通院していた大病院から地域包括支援センターに相談が持ち込まれ、第二中央病院に入院となりました。
 また、一人暮らしが不安で、誰かがいつも近くにいるという安心感を求めて、毎日ネットカフェに通っていたという八〇代の患者さんもいました。
 相談員の是澤雅代さんは「この一~二年、生活が大変になっている患者さんが増えていると実感します。お金がないというだけでなく、相談できる身寄りや友人もなく、うまく生活する技や知恵もなく、地域から孤立している方がたくさん相談にこられるのです」。

本当の訴えを聞き逃さないよう

  副院長の石橋修医師は「『風邪をひいたようで』などといって受診する患者さんのなかに、本当は孤独感や不安を抱え、話を聞いてほしいのでは?と感じること が多くなりました。話しはじめると芋づる式にいろいろな話が出てくるのです。いままでそういう訴えを聞き逃していたのかもしれませんね」と話します。
 外来では昨年から毎週、石橋医師を中心に、気になる患者さんのカンファレンス(事例検討会)をしています。看護師や事務、栄養士などさまざまな職種が事 例を持ち寄り、どうしていけばよいのかをみんなで考えます。回を重ねるなかで、職員の意識も変わってきました。
 看護師のコーマー裕美さんは「日常業務でも患者さんを、生活の視点から見られるようになり、やりがいを感じます」。高城良江さんも「さまざまな生活背景をもった患者さんの生活を、退院後もしっかりフォローできるよう、病棟と連携していきたい」と語ります。
 「ステッカーは、困難を抱えた人がいる場所に張るべきでは。ネットカフェなどに張らせてもらおう」という声が出たのも、このカンファレンスのなかでした。
 ステッカーは、「命に寄り添う病院が、この地域にありますよ」というメッセージの発信です。職員・友の会が力を合わせてネットワークを広げていきたい。
文・近藤美也子(健康友の会事務局)

いつでも元気 2009.2 No.208

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