いつでも元気

2009年3月1日

後期高齢者医療制度 75歳以上からも保険証とりあげ? 1年滞納者に「返還」を明記

“とりあげ”させない活動を全国に

 七五歳以上を対象にした「後期高齢者医療制度」が実施されて丸一年。
 国保料の滞納による国保証のとりあげが全国的に大問題になるなか、「後期高齢者医療制度」でも保険料の滞納が増えていることが明らかになりました。

滞納者数は増える一方

 一月一九日、全国保険医団体連合会(保団連)は、後期高齢者医療制度の保険料の「普通徴収」滞納者が、五八七自治体(二七都府県)で、一七万五〇〇〇人にのぼると発表しました。普通徴収とは、年金天引きではなく、保険料を本人が直接納付することです。
 各都道府県の保険医協会などを通じ、(1)普通徴収者数、(2)滞納者数、(3)滞納率を、自治体にアンケート形式でたずねたもので、保険料(昨年九月 分)の普通徴収者数は一六三万六五八〇人、うち滞納者数は一七万四三四八人でした。一割強の人が滞納していることになります。
 普通徴収の対象者は、月額一万五〇〇〇円未満の年金受給者、または介護保険料とあわせた保険料額が年金受給額の二分の一を超える人。七五歳以上のなかでも、とくに所得の低い人たちです。
 昨年一二月五日、衆院予算委員会で舛添厚労相は、「全国一八の広域連合からの報告を集計した結果、普通徴収の高齢者の八・四%が滞納している」と述べましたが、この数値はやはり低め。
 保団連の調査などから推計すると、こうした普通徴収対象の高齢者は全国で二〇〇万人程度いるとみられ、滞納者は二〇万人にのぼるとみられます。

滞納率40%という地域も

 滞納率の全国平均は一〇%超ですが、地域によっても大きな差があることがわかってきました。
 大阪では、大阪社会保障推進協議会(社保協)が、昨年七~一一月まで実施した「後期高齢者医療保険料緊急滞納調査」()で滞納率の悪化が浮き彫りに。

大阪府全体の普通徴収滞納状況
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(大阪社保協調査 2008年7~11月)

 「この間の経過を見ただけでも、だんだんと滞納率が悪化してきているのがわかります。年金支給 のない奇数月ごとに一気に悪化していきます。とくに一一月は府内の滞納率が四〇%近くにあがっています。このままいくと年度末にかけて滞納は、もっと増え るでしょう」と、大阪社保協事務局長の寺内順子さん。
 調査結果の特徴も、「おおむね予想していた通りです。後期高齢者も、国保の滞納率と傾向はほぼ同じ」といいます。
 「滞納率がずっと一〇%以下で滞納者が少ない市がいくつかある一方で、国保料の滞納が多い門真市など、低所得層が多く高齢化率が高い地域、とくに単身高 齢者が多い地域ではどこも厳しい数字が出ています。保険料を代わりに払ってくれる人もいないですからね…」

年金額1万5000円未満

 かつての老人保健制度では、七五歳以上の高齢者からの保険証とりあげは、保険料の滞納があっても法律で禁止されていました。
 しかし、この新しい制度では「(保険料を)特別な事情もなく一年以上滞納すると、保険証を返還していただき、代わりに資格証明書を交付します」と、とりあげがしっかりワクで囲んで保険証に明記されているのです(写真)。
 月一万五〇〇〇円以上の年金受給者は、保険料が年金から強制的に天引きされ、滞納はおきません。滞納が生まれるのは、年金がわずか一万五〇〇〇円未満と いう人たちです。つまりこの制度では、低所得者ほど医療を受ける権利が奪われることになるのです。

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後期高齢者医療保険証の裏には「1年滞納者からは返還させる」と明記されている

 

保険証とりあげは医療からの排除

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毎月定例の署名・宣伝行動(大阪)。「廃止してほしい…」が多くの声

 「資格証明書」が発行された高齢者は、医療機関の窓口でいったん医療費の全額を自費で支払わなければなりません。
 わずかな年金で生活するお年寄りにとって「医療費を全額支払え」というのは、「病院に来るな」といっているのも同然です。病気になりがちな高齢者を医療から排除することは、ただちに命にかかわる問題になります。
 「四天王寺(大阪市)で、大阪高齢運動連絡会や介護保険料に怒る一揆の会と一緒に毎月定例でおこなっている署名・宣伝行動での反応はスゴイ。ビラの受け 取りも毎回よくなっています。署名をして、『どうしても廃止してほしいんや』と、拝んでいくお婆さんもいた。『ゼッタイあきらめへんから、がんばろな…』 という高齢者の強い思いを感じます」と寺内さん。

すべての人に「保険証の交付」を

 「民医連は一月の定例理事会で緊急アピールを出し、『今こそ、すべての県連、法人・事業所で「困難を抱えている人」に寄り添い、親身な相談活動・援助活動を強めよう!』と呼びかけました」と、全日本民医連・湯浅健夫事務局次長。
 「このままいけば、この四月から後期高齢者医療制度からもはずされ、保険証をもたない多くの高齢者が全国各地に放り出される恐れがあります。大切なのは無保険者をなくし、『すべての国民に保険証の発行を』という活動を全国的に広げていくことです。
 高齢者に対する新たな『無保険』状態の発生を阻止するために、二月議会が予定されている各広域連合や、各自治体の三月議会に対して、受療権を守るたたか いを強めていきます。また、後期高齢者医療制度の廃止に向けた一点署名一〇〇万筆の目標を早期に達成し、あらためて廃止を求める世論を喚起しよう、と呼び かけています」
文・井ノ口創記者/写真・若橋一三

いつでも元気 2009.3 No.209

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