いつでも元気

2009年6月1日

認知症をわかりたい(5) ある日の「講座」をのぞいてみた 協力:京都市左京南地域包括支援センター

ほっと介護(86)

■認知症は全国に169万人存在し、20年後には倍増するとみられる病気です。認知症の人を見守れる人を増やそうという講座も各地でおこなわれていますね。このページでは、みなさんといっしょに、ある日ある場所でおこなわれた講座をのぞいていきます■

 私たちは認知症の方とどう接すればいいのか。その気持ちに一歩でも寄り添うには? 身近にありそうな場面を、お芝居でご覧いただく「その2」です。

「おサイフ、盗らないで」の巻

〈場面〉高齢者が集まる施設で。お風呂の順番を待っている間に、自分の席と荷物置き場を行ったり来たりして探し物をしている認知症のおばあちゃんがいます。施設職員は、そのたびに注意をしています。

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私のカバン、気になりますねン

職員:おばあちゃん、またカバンをいじっているの? これは違う人のカバンやで。もういじったらアカンていうてるのに、ややこしいなあ。ご自分の席に座っといてくださいっ(と、かなり強引におばあちゃんの手を引っ張って、席に連れていく)。

認知症のおばあちゃん:ちょっと、待ってぇナ。痛いがな。私はカバンを探してますのや。

職員:カバンはちゃんとお嫁さんが用意してくれてはる。ええから座っておいて! もう立たないでくださいよっ。
※同じ会話が繰り返される

認知症のおばあちゃん(繰り返し怒られるので、しょんぼりしている)

* *

司会者:おばあちゃんがいま、どんなお気持ちか、聞いてみましょう。

認知症のおばあちゃん:私は何も悪いことをしていないのに、なんで怒られますのやろ? そないにキツういわなくてエエのに。引っ張られた手が痛い痛い。

司会者:どうしてカバンがそんなに気になるのですか?

認知症のおばあちゃん:カバンの中にお財布を入れているでしょう。盗まれないかと心配なんですわ。

〈解説〉
 大事なものをしまい忘れるのは、認知症なら多くの人に起こる中核症状です。いつもとは違う場所にしまったことをすっかり忘れたために、「財布がなくなった」「通帳がない」と、なります。 
 とりわけ、人に頼らずしっかりしていたいという思いが強い人は、「自分が忘れることなどない」(忘れたことが受け入れられない)と思うあまり、身近でお 世話してくれる人が盗んだ、という「もの盗られ妄想」が時折みられます。これは、「もの忘れ」という中核症状に、性格や周囲や家族に迷惑をかけている、と いう状況が影響して起こる認知症の「周辺症状」なのです。

■疑われた人の気持ちを支えて

 では、どうすればこの妄想はおさまるか? なくしたと思っていたものが出てくればおさまりま す。ですから周囲はあまり深刻にならず、犯人だと疑われた人の気持ちを、支えることが大事です。この「もの盗られ妄想」が「財産をねらわれている」と、さ らに複雑になることも。疑われた人を守り、本人の症状を軽くするためにも、認知症の専門医に相談してください。

いつでも元気 2009.6 No.212

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