いつでも元気

2009年6月1日

後期高齢者医療制度 “前期高齢者”だって怒ってるゾ!

 後期高齢者医療制度の開始に乗じて、六五~七四歳の前期高齢者の国民健康保険料も年金から天引きになり、七〇~七四歳への高齢受給者証(二割負担)が発行されています。同制度への怒りや不安を感じているのは、七五歳以上の人だけではありません。

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2割負担の保険証

 「前期高齢者だって怒ってます!」というのは本誌編集委員・牛山長重さん。現在七四歳、まさに “前期高齢者”です。「この四月に三枚目の保険証が届きました。保険証の更新時期が来るたびに『次に来る保険証は“猶予”がなくされて、二割負担になって いるのでは?』と、心配してきました」
 後期高齢者医療制度の開始とともに、七〇~七四歳の人には「高齢受給者証」が届けられています。医療にかかった際に窓口で支払う一部負担割合は二割。ただし、「半年後までは『一割』」と記されています(写真)=注。
 激変緩和の措置として設けられた半年間の猶予期間が、国民の怒りを反映して一年にのび、さらに現在、二度目の延長に。〇九年度いっぱいが猶予期間です。
 二〇歳で肺結核になり、療養所生活を五年近く送った経験のある牛山さんは、常に体への不安を抱えてきました。現在は糖尿病と高血圧の治療中。定期受診・ 投薬のほか、尿や血液の検査が二カ月に一度、年一回の全身検査は欠かせません。

窓口負担2割、 「猶予」「猶予」で1年きたが…

入院したら、どうしよう…? と

 奥さんの年金とあわせて世帯の収入は月二十数万円ですが、公団の家賃と、水・光熱費などをあわせると一三~一四万円が住のために必要です。
 「手許に残るのは数万円。医療費は厳しいですよ。入院の必要が出た時にはどうお金を工面しようか? と思っています。ましてやそれが二割負担なら。六五 歳の妻は三割負担で、去年は二度入院し、月に一〇日通院しています。年金暮らしになって六〇代のころは、七〇歳から負担は一割だ、それまでがんばれば医療 費が軽くなる、と思ってきたのに」(牛山さん)
 また、六五歳以上の人からも国民健康保険料を年金から天引きするようになりました。事実上の強制徴収です。

「収入は年金だけ」65歳以上の6割

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廃止してほしい―4月1日、巣鴨で

 牛山さんの不安は、特別なものでしょうか。
 高齢者の暮らしを示した資料をみると、六五歳以上世帯では「年金収入だけ」が六割。年金の平均受給金額は、国民年金は五・八万円、厚生年金は一六・九万 円です(〇五年三月末)。総務省の家計簿調査でも、六〇歳無職の世帯の家計の収支は赤字で、貯蓄を取り崩しながら暮らしていることが明らかに(資料)。
 診察室では、七二歳の患者さんが、一割の猶予期間が延期されたことを知らず、「四月から二割負担になる、薬を多めに出してほしい」といったという話も。
 二割負担の凍結は、運動と世論がつくりだしてきた成果ですが、「凍結」はいつでも解凍可能です。じっさい、厚労省が六五~七四歳の前期高齢者の窓口負担 を一律二割に統一する検討を始めた、との報道もあります(「毎日」4月17日)。

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廃止しかない!

 「やはり廃止しかないです」と牛山さん。「僕もあと一年で後期高齢者。厚労大臣がどんなにきれ いごとをいっても、これは高齢者の命を差別する制度。働けない、なにもできない、物忘れはする…と、ただでさえ年齢的なハンディを持っている年寄りは、 『お払い箱にされた』という気持ちになります。『医療費の心配をせずに、ゆっくり生きて』、となぜいえないのか。この数カ月以内にかならず解散総選挙があ りますね。政治を変えないと、今度ばかりは」 
 四月一日の巣鴨。施行一年の後期高齢者医療制度廃止を求める宣伝がありました。「こんな法律を通した政治家を選んだのは誰?」「国会議員が変わらない と!」とりわけ、そんな声が目立ちました。 文と写真・木下直子記者
(注)七〇~七四歳でも「現役並」とされた三割負担の人や、障害などがあり後期高齢者医療制度の対象になっている人はのぞく

いつでも元気 2009.6 No.212

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