声明・見解

2007年6月7日

【会長声明2007.06.07】 政府の責任で医師不足問題の解決を

2007年6月7日
 全日本民主医療機関連合会
会長   肥田  泰

 勤務医不足による「医療崩壊」が全国的にすすみ、病院 閉鎖や診療制限などに対する国民の不安が増大しています。最近では、全国各地で医師不足と「医療崩壊」を考えるシンポジウムが開催され、日本外科学会をは じめ多くの学会も声明や見解を表明しています。また自治体病院の統廃合が迫られている地域では、反対する住民運動が起こっています。
 こうした状況のなかで、政府は06年夏に出した「新医師確保対策」で、10県10大学と自治医大で10年間10人ずつの医学部定員増を前倒しでおこなう ことを決定しました。さらに、すべての国公立大で一定数の地域枠で医学部定員を増やすことを与党として提案することが報道されています。全日本民医連は、 かねてより医師養成数抑制と公的医療費抑制の政策を批判し、各地で医師不足解消のための運動をすすめてきましたが、事実上医学部定員削減の閣議決定を変更 した今回の政府の決定や与党の提案は世論の動向や私たちの運動を反映したものです。私たちは早急に削減前の1986年当時の医学部定員数に戻すことを政府 に要望します。
 報道によれば、医師不足に対する医学部定員増の効果は10年以上かかり「即効性がない」ため、都市部の臨床研修病院の受け入れ枠制限や3,4年目医師の 強制的な形での地方勤務などが与党から提案されるとのことです。これらは新医師臨床研修制度の趣旨を大きくゆがめるとともに、かつての「お礼奉公」的な労 働を若手医師に強いるものと危惧されます。医学生は、僻地や地方の医療に興味がないわけではありません。現役の医師についても、3割以上の医師は条件があ えば地方勤務を考えるという日本病院会の勤務医意識調査があります。いま政府がすべきことは、政治の力で姑息なつじつま合わせをすることではないと考えま す。まずやるべきことは、都市部でなくても十分な研修条件が整えられるよう新医師臨床研修制度に財政的援助を強めることです。そして、地方勤務がしやすい ような期間の設定や学会参加の保障などを具体化するとともに、これまで大学医局が一定担ってきた医師配置機能にかわるシステムの構築に力を尽くすべきで す。また、医学教育の中で地方の医療状況や住民の希望を率直に伝え、医学生の使命感に訴えることも必要です。
 世界的にみても異常な勤務医の労働状況をもたらしたのは、公的医療費を抑制し、医学部定員削減を閣議決定してきた政府の政策だったといわざるを得ませ ん。相次ぐ診療報酬改定や医療制度「改革」で、過疎地の病院自体の存続さえも厳しくさせています。このことの反省に立った政策転換を強く求めるものです。  

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